音響研究の方向性を定めた名著の邦訳。
18世紀後半から20世紀前半を対象に、
「音響再生産技術」がいかにして生まれ発展してきたかを学際的に史料を集めながら跡づけた本。
よくある視覚と聴覚（あるいは文字と声）の本質主義的対比と技術決定論をこれでもかと批判し
技術が生まれる前提にはいかなる文化的・社会的変化があったかをこれでもかと示してくる様は
まさに圧巻であり、音や声を扱う研究をするうえで必読だと言える。
これを読んだ後、オングの『声の文化と文字の文化』を肯定的に参照することはもはやできない。
医学史にまで手を伸ばし非常に幅広い分野のマニアックな専門用語が大量に出てくることもあり
本書を原書で読むのはかなりキツイと思われるので、日本語で読めるようにしてくれたのはとてもありがたい。
ただ、訳文がものすごく読みづらい。
かなり逐語訳っぽい、原著の構文が透けて見えるような文章になっているので
内容は面白いのに文章を理解するのにかなり骨が折れる。
おそらく原著の非常に繊細な言葉の使い方を壊さないようにするためにこうなっているのだろうし、
それはそれでひとつの方針だとは思うが（原著のニュアンスを無視した下手に読みやすい翻訳よりまし）
もうちょっと訳文はなんとかなったのではないかと思わずにはいられない。
とはいえ、それでも頑張って読む価値は十分ある一冊。
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