これまで9条護憲論者って、9条の理念を現実化するような論というのをなかなか組まなかったんですね。
雑な言い方をしてしまえば9条を念仏のように唱えていれば平和は守れるという観念があったように思います。
だから見る人が見れば、平和とかそういうのを何も考えてないように見えるんですよね。
この本は9条の理念を生かすような社会にするためにはどうすればいいか、具体的に「平和基本法」という法律を作りそれに則った平和維持活動をするような論を挙げてます。
正直、この論を見ても、現実味はありません。
例えばシビリアンコントロールの徹底として自衛隊を分化させた組織（災害救助隊とかそういうの）に対して、国会議決がないと活動できないようにするとか書いてあります。
でも災害救助の際に国会議決のような迂遠な手続きは現実味がないでしょう。
あと、隣国との相互理解について、ドイツの例をことさらに挙げていたのですが、ドイツは反ナチス的なものを禁じることによって維持されたところがあるので、思想良心に踏み込みかねない危険性があります。そういうときに「平和主義のためなら踏み込んでもいい」というのが9条護憲論者の中で見られる主張であり、それが多いのが怖いところなんですが。
ただ、あくまでもこれをスタートにして、議論をしていく、というのは大事なのかな、と思います。実はこの辺は護憲論者も改憲論者もすごく苦手なところで、それを避けてたフシもあります。
でも今の国際情勢や国民感情を考えるに、議論を無視することはできないと思うんですよね。
そういう意味では、1つの議論のねたを出してくれた、という意味においては大きな価値があるのではないかな、と思います。
なかなか一般で売ってる本じゃないのが残念ですが。
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