タイトルから明らかなように、マリー・キュリーの伝記である。彼女が二回ノーベル賞を得ているのに以前から疑問を持っていたので、新しい伝記が出たのを機に読んでみた。
彼女は、1903年物理学賞ラジウムの研究、1911年ラジウムおよびポロニウムの発見とラジウムの性質およびその化合物の研究、でノーベル賞を授与されている。実は、ラジウムの精製だけでノーベル賞というのも、何となく過大だなあという印象を持っていた。本書を読んで、原子の構造を知る上で極めて重要な情報がラジウム研究から得られたことが分かって、かなり納得した。ただ、本書には2回目のノーベル賞の受賞理由についてほとんど情報がなく、初めの疑問の答えは得られなかった。
伝記としては、マリーへの思い入れが強すぎると感じられて、好感を持つことが出来なかった。マリーのラジウムへの愛や、むやみな医療への応用の期待は、科学者としてちょっと違和感を持ったし、ランジュヴァンとの不倫も現代でもやはりスキャンダルである。マリー自身への好感度を、少なくとも私に対しては、上げることに成功していない。
対象への愛がなければ伝記は書けないが、醒めたところがないと押し付けがましくなる。難しいところだ。

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マリー・キュリー―フラスコの中の闇と光 (グレート・ディスカバリーズ) 単行本 – 2007/5/15
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ラジウムの発見、女性初、そして二度のノーベル賞受賞。輝かしい実績と逸話によって作られた偶像の陰にひそむマリー・キュリーという女性の肖像が明らかになる!
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社WAVE出版
- 発売日2007/5/15
- ISBN-104872902890
- ISBN-13978-4872902891
商品の説明
著者について
バーバラ・ゴールドスミス(Barbara Goldsmith)
作家。著書に「The Straw Man」「 Little Gloria...Happy at Last」「Johnson v.Johnson」「Other Power: The Age of Suffrage, Spiritualism, and the Scandalous Victoria Woodhull」などがある。いくつもの文学賞を受賞し、アメリカ芸術科学アカデミーのメンバーや、アメリカ史の女性を評価するための大統領諮問委員にも選ばれている。ニューヨーク在住。
作家。著書に「The Straw Man」「 Little Gloria...Happy at Last」「Johnson v.Johnson」「Other Power: The Age of Suffrage, Spiritualism, and the Scandalous Victoria Woodhull」などがある。いくつもの文学賞を受賞し、アメリカ芸術科学アカデミーのメンバーや、アメリカ史の女性を評価するための大統領諮問委員にも選ばれている。ニューヨーク在住。
登録情報
- 出版社 : WAVE出版 (2007/5/15)
- 発売日 : 2007/5/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4872902890
- ISBN-13 : 978-4872902891
- Amazon 売れ筋ランキング: - 991,747位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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- 2007年6月10日に日本でレビュー済みAmazonで購入マリー・キュリーは幾多の困難を乗り越えながら全身全霊で科学に取り込み、ノーベル賞を二回も受賞した偉大な科学者である。
だが本書ではただ清廉潔白な姿ではなく、さまざまな葛藤も抱えつつ、ひとりの人間として、女性として描かれている。子供の頃に伝記で見知った「キュリー夫人」像とはずいぶん異なり、驚くことも多い。
しかしそんなマリーはとても魅力的であり、現代女性にも共感できるところは多い。読み進むうち、マリーのことを、そして科学のことをもっと知りたいと思うようになってくるのではないだろうか。
本書に描かれている科学的内容はとてもわかりやすく、ラジウム発見に至るまでのエピソードも非常に興味深い。科学好きな方はもちろんのこと、これまで科学に興味のなかった方にも、ぜひ、お薦めしたい一冊である。
- 2007年6月13日に日本でレビュー済みキュリー夫人の生涯がただ客観的に語られているのではなく、著者のマリーー・キュリー像がはっきりと表れた深い作品だった。
著者は徹底的な調査に基づいた詳細な事実を語りつつ、キュリー夫人をこれまでとは違った角度からとらえ、キュリー神話のベールを少しずつはがしていっている。特にポール・ランジュバンとのスキャンダルや、夫人自らが神話作りに荷担していたという事実は、一般的な伝記に描かれていた彼女のイメージとかけ離れていてまったく意外だったが、そこに私たちと同じ生身の人間の姿をかいま見たような気がして、モノクロだった彼女のイメージが一気に色彩を帯び、親近感や安堵を覚えた。そしてうつ状態に陥ったり病に伏したりしながらも苦難を乗り越え、前へ進んでいく彼女の姿は時代を超えて私たちに訴えかけ、大きな希望と励みを与えてくれる。
またマリー亡き後の子どもたちの活躍や、ラジウム、放射線、原子力のその後についても詳しく述べられており、ラジウムや放射線に対するマリーの愛情や科学の平和的利用を求める彼女の思いは、子どもたちに脈々と受け継がれているのだというメッセージが伝わってきた。
一人の人間としてのマリー・キュリー像が鮮やかに打ち出された、味わい深い作品だ。いい本に巡り逢えたと、心から思う。
- 2007年6月8日に日本でレビュー済み小学生の頃に読んだキュリー夫人の伝記には、貧しい中ひたすら勉学、研究に打ち込み、その結果ノーベル賞を受賞するというようなことが書かれていた。少なくとも私の記憶にはそれぐらいのことしかなかったし、たいていの人はそんな印象しかないのではないだろうか。
ところが、この本では神格化されたキュリー夫人ではなく、マリー・キュリーの人間性が深く掘り下げられいる。今まで知らなかったスキャンダルな真実もあり、単なる聖女のようなすばらしい女性ではなかった。だが、そのスキャンダルな事件にも、今以上に男尊女卑だった社会にも、傷つき苦悩しながらも負けることなく前を向いて生きていく姿には心打たれるものがある。もちろん、なぜここまで神格化されたのか、その理由も書かれている。またその後のキュリー一族のことにも触れているので、とても興味深かった。ぜひ一読を。