掲載内容における「最新」データは平成18年8月とやや古いが、平成合併は大方ケリがついた後のものなので問題なし。発売元の通販なら平成22年までの変更を網羅した追録が付くようだが、同様の理由で別に無くても困らない。A5版箱入りハードカバー12000円税別1540頁。思い当たる代替書籍が無いので、内容に興味を持ってしまった人には選択の余地は乏しい。
本文には都道府県順に市町村名の変遷過程が淡々と記載される。各都道府県ごとの記載内容は以下の通り。
冒頭には平成18年の市町村区分地図が出ているが、各県A5版1頁なので無いよりましな程度。北海道に至っては支庁境界しか出てない。
次に明治22年の市町村名を郡別に列記する。6段組で読み仮名つき、仮名遣いは現代語表記。ただし読み仮名は地名部分のみで、マチ(ムラ)と読むかチョウ(ソン)と読むかは不明。
その次には市町村制施行後の合併・名称変更などを3段組で年次順に平成18年まで表記。名称の変更では読み仮名が併記されるが、既出地名には読み仮名は付かない。
各都道府県の末尾に刊行時の市町村と旧名(明治22年)の対照表を掲載。
以上の内容が47都道府県順に繰り返される。旧市町村名の索引はないので、旧地名だけが分かっても本書では現在の位置はもとよりどこの市町村にあるかすら辿れない。
ここまでが本文で1390頁、途中で解説文は一切なし。文字は大きく見やすいが、逆に言えば同様の厚さ重さ価格帯の辞書事典類に比して、あり得ないほど情報量が少ない。
以下は巻末資料となり頁数は本文と通算せず114頁。
都道府県ごとの市町村数、明治23、昭和28、平成18掲載。内務省統計による役所数報告が昭和19年まで出ている。年度ごとの市町村数変遷は明治5以降平成18年まで出ているが、出典は時期により異なるので正確性には要注意。都道府県ごとに、国名及び都道府県名の変遷を、平安時代より郡単位で掲載。廃藩置県後の302県からの統合も示す。
出版元は行政・法律関係の書物に強い。本書は官報情報をひたすら転記というつまらない本と言えば全くその通り、書物というよりも純然たる資料だ。それだけに記載情報へのアクセスは重要で、索引を付けていない点が致命的すぎて悔やまれる。新発売ならいざ知らず、昭和50年代に同名書籍が刊行され、数次の改訂を経てこのザマなので編集方針にはもはや期待できない。ただ改良するなら市制町村制施行時の区画を示す地図も欲しい。贅沢を言えばきりがないのだが、なにぶん1万を超える高額書籍である。統計少・地図極少・解説文皆無という編集はどうなのだろう。売り手の想定価格は発刊時の消費税5％を上乗せしたものであろうが、それにしても価格分の価値には疑問符が付く。本の作り手がこれだから、情報のおいしい部分はネットが総取りして出版元が枯れていくのは当然の流れだということを再認識する。本書の刊行がスマホ普及前夜である点はせめてもの救いだが、出版社の暗い前途を暗示する前世代の書籍として、一度図書館で眺めてみてはいかがだろうか。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
この商品には新版があります:
