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統計力学の形成 単行本 – 2021/9/24

4.5 5つ星のうち4.5 8個の評価

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アナロジーから基礎づけへ ——。時間的に可逆であるミクロな多数の要素と、不可逆なマクロとを関係づける、統計力学。マクスウェルやボルツマンによる気体運動論との差異を踏まえつつ、その歴史と意義を丹念に追跡。アンサンブル概念はいかに誕生・発展し、フォン・ノイマンによる量子統計に到ったか?

【受 賞】
・第18回(2024年)「日本物理学会若手奨励賞」

【書評等】
・『科学哲学』(第56巻第1号、2023年11月、評者:原田雅樹氏)

・『みすず』(2023年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:白石直人氏)
“…… 等重率の原理やボルツマンの原理、各種アンサンブルの使用は、統計力学の講義では天下りに習うものだが、統計力学の黎明期にはどのように正当化され、受け入れられたのだろうか。本書はギブスを中心に、統計力学の基礎付けをめぐる紆余曲折の歴史をたどる。”(p.46)

・『日本物理学会誌』(2022年10月号、第77巻第10号、評者:白石直人氏)

・『科学史研究』(第61巻第302号、2022年7月号、評者:安孫子誠也氏)

・『みすず』(2022年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:早川尚男氏)
“…… 統計力学の歴史と言えば、これまでマクスウェルとボルツマンに焦点が当たって、当時の科学の中心から離れて独力で平衡統計力学を完成させたギブスが過小評価されてきたきらいがある。また現在の講義や教科書で標準的に教えられる(平衡)統計力学の完成形までは、フォン・ノイマンによる量子統計力学の定式化を含めたそれ以降の進展史を辿る必要がある。本書は統計力学の研究史の始まりから現在までの通史を枢軸となる数式を省略せず、比較的コンパクトにまとめたものであり、評者の様に非平衡統計力学の研究者にとっても必携の書となっている。……"(p.71)

・『現代化学』(2021年12月号、通巻609号、BOOK & INFORMATION欄)

・『化学』(2021年12月号、通巻847号、新刊紹介欄)

【目 次】
序 章
 0-1 統計力学の歴史とギブス
 0-2 統計力学の歴史の問題系
    0-2-1 科学史および物理学史一般に関して
    0-2-2 統計力学の学説史に関して
    0-2-3 ギブスの『諸原理』に関して
 0-3 本書の概要

第1章 気体運動論の困難からアンサンブルへ
 1-1 マクスウェルの気体運動論
    1-1-1 「気体の動力学的理論の例示」前史
    1-1-2 「例示」の速度分布則と粘性係数
    1-1-3 粘性係数と逆5乗則
         ——「気体の動力学的理論について」
 1-2 アンサンブル概念の萌芽
    1-2-1 ボルツマンの気体運動論概説
    1-2-2 多原子分子気体の運動論的考察
    1-2-3 多原子分子気体のアンサンブル的考察
 1-3 マクスウェルの「統計的方法」とアンサンブル
    1-3-1 マクスウェルの「統計的方法」
    1-3-2 マクスウェルのアンサンブル理論
    1-3-3 ボルツマンによる検討

第2章 「力学的アナロジー」とアンサンブル
 2-1 循環座標
    2-1-1 循環座標の導入
    2-1-2 J・J・トムソンの循環座標
         ——「速度座標」
    2-1-3 J・J・トムソンによる熱力学の力学への還元
 2-2 ヘルムホルツの「単循環系」
    2-2-1 力学還元主義の仮説化
    2-2-2 「単循環系」の理論
    2-2-3 「力学的アナロジー」とは何か
 2-3 ボルツマンの「総体」の理論
    2-3-1 若きボルツマンの周期系の力学
    2-3-2 「総体」
         —— ボルツマンのアンサンブル概念
    2-3-3 「総体」の洗練とその後
    2-3-4 ボルツマンの「像」の理論

第3章 ギブス『統計力学の基礎的諸原理』
 3-1 ギブスの経歴と初期の熱力学研究
    3-1-1 ギブスの経歴
    3-1-2 ギブスの熱力学研究
         ——「不均質な物質の平衡について」
 3-2 『諸原理』への道
    3-2-1 気体運動論および統計力学に関するギブスの発言
    3-2-2 イェール大学での講義
 3-3 『諸原理』のアンサンブル理論と「熱力学的アナロジー」
    3-3-1 『諸原理』における統計力学の特徴づけ
    3-3-2 ギブスのアンサンブル概念
    3-3-3 基礎づけに関する見解
    3-3-4 「熱力学的アナロジー」:関係式のあいだの対応関係
    3-3-5 「熱力学的アナロジー」:操作のあいだの対応関係

第4章 『諸原理』への応答
 4-1 英国からの反応
    4-1-1 バーバリーからの書簡
    4-1-2 バムステッドの擁護
 4-2 ドイツ語圏からの反応
    4-2-1 ボルツマンの評価
    4-2-2 プランクの批判
    4-2-3 ツェルメロの批判
    4-2-4 エーレンフェスト夫妻の批判
 4-3 オランダ人たちによる擁護と拡充
    4-3-1 ローレンツによる一般性の強調と統計的基礎
    4-3-2 オルンシュタインによる具体的な問題への適用
    4-3-3 デバイの金属電子論

第5章 古典統計力学の諸相
 5-1 『諸原理』以外のアンサンブル理論
    5-1-1 ボルツマンの『気体論講義』
    5-1-2 アインシュタインの統計的三部作
 5-2 統計力学の基礎的概念の洗練
     —— パウル・ヘルツとオルンシュタイン
    5-2-1 ヘルツの「時間アンサンブル」
    5-2-2 オルンシュタインの「時間アンサンブル」と「等価な系」
    5-2-3 ミクロとマクロ
 5-3 エーレンフェスト夫妻の「概念的基礎」
    5-3-1 エルゴード性と H 定理の理解
    5-3-2 ギブスの統計力学の位置づけ

第6章 状態和と分配関数
 6-1 状態和前史
    6-1-1 プランクによる黒体輻射の法則の導出
         ——『熱輻射論講義』初版
    6-1-2 ポワンカレの Φ 関数とプランクの状態積分
    6-1-3 熱力学的特性関数の重要性
 6-2 デバイとプランクの状態和
    6-2-1 デバイの状態和
    6-2-2 プランクの量子理想気体研究
    6-2-3 プランク『熱輻射論講義』第2版と第4版
 6-3 ダーウィンとファウラーの分配関数
    6-3-1 分配関数の導入過程
    6-3-2 統計力学と熱力学の関係
    6-3-3 分配関数と状態和

第7章 量子統計の時代におけるアンサンブル
 7-1 フォン・ノイマンの量子統計力学
     —— 測定とアンサンブル
    7-1-1 『数学的基礎』に到るまで
    7-1-2 『数学的基礎』におけるアンサンブル
 7-2 フォン・ノイマンのエルゴード定理
    7-2-1 量子エルゴード定理におけるミクロとマクロ
    7-2-2 平均エルゴード定理
 7-3 トルマンの統計力学
    7-3-1 物理化学から統計力学へ
    7-3-2 ギブスの統計力学の継承
    7-3-3 統計力学の任務とアプリオリ等確率の仮説
    7-3-4 エルゴード仮説批判

終 章

参考文献 / あとがき / 索 引
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商品の説明

著者について

稲葉 肇(いなば はじめ)

愛知県に生まれる(1985年)。京都大学文学部卒業(2007年)、京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学(2012年)、京都大学博士(文学)取得(2015年)、明治大学政治経済学部専任講師(2018年、現在に至る)。
訳 書:
ヘリガ・カーオ『20世紀物理学史――理論・実験・社会』(共訳、名古屋大学出版会、2015年)

(所属等は初版第1刷発行時のものです)

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 名古屋大学出版会 (2021/9/24)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2021/9/24
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 378ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4815810362
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4815810368
  • 寸法 ‏ : ‎ 15.7 x 2.5 x 21.7 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.5 5つ星のうち4.5 8個の評価

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上位レビュー、対象国: 日本

2022年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書はタイトル通りで、統計力学の形成過程の歴史を辿るものである。
マクスウェルやボルツマンからフォン・ノイマンのあたりまでが議論対象である。
多くの人が統計力学でイメージするであろうボルツマンではなく、ギブスをその議論の中心に据えているところに本書の特徴はある。

統計力学は、一方では「微視的な力学や量子力学に従う存在の集まり」として力学的な法則によって性質は全て定まるという立場をとる一方で、アンサンブル平均やボルツマン原理など力学の運動方程式を解くのとは異なる手法で結果を得るという点に特殊性がある。
この二つの折り合いがどのようにつけられていくのか、というのが本書の中心的な問題である。
もともとは気体分子運動論に端を発している統計力学は、当初は力学的な立場を中心に作られていた(マクスウェルなど)一方で、その基礎付けを全て力学的なものに求めてよいのかは古くから議論の的であった。力学的な基礎付けはエルゴード仮説に訴えるものであるが、その仮説の妥当性、あるいは仮説が成り立ったからといってそれが統計力学の基礎付けになるのか、という点は多くの物理学者によって批判もされていた。
ボルツマンの時点から、力学的「ではない」基礎付け、経験則に訴えるものや典型性・ゆらぎの小ささに訴えるものなど、多くの基礎付けの方法が模索されていた。併せて、ミクロとマクロという対比が認識され始めるのもこの頃である。

統計力学と熱力学の関係は、当初は「アナロジー」のように解釈されていたのが、徐々にアナロジーではなく実際に結びついているのだという方向に議論が転換されていく。統計力学の対象も、当初は希薄気体が念頭に置かれていたのが、徐々に一般のマクロな物体に拡張されていく。それと同時に、状態和や分配関数さえ計算すれば、多様な物体の平衡状態の性質が求められるという実用的な強力な計算手法・道具として認識されていき、「力学的な運動とどう折り合いをつけるか」という概念的・基礎的な問いは後景へと退いていく。
本書中では、「統計力学の特徴は力学的な運動を解かずにマクロ性に訴えることで平衡状態の性質を議論できることであり、力学的運動に基礎を置こうとするのは妥当ではない」というトルマンの指摘がこの方向をもっとも推し進めたものと言えよう。トルマンは、ゆらぎの小ささ・典型性と経験的な妥当性(実験との一致)によって統計力学の妥当性は保証されるという。

統計力学の歴史を書いた和書はほとんどなく、本書はその点だけ見ても非常に価値のあるものである。
併せて、統計力学の基礎に対する理解の変遷を丁寧に追ってくれているので、その視差の射程は現代的な物理の研究にまで及んでいるともいえる。
各物理学者の見解の記述の仕方はやや列挙的で、全体としての大きな流れや逆に「現代とは大きく異なる意外な理解」が出てくるタイプの本ではない(そもそも大きなゴールがあるタイプの歴史ではない)ので、やや難渋な面は否めず、統計力学を使う人(要するに物理学者や物理化学者)でないと読むのはやや大変かもしれないが、逆に統計力学を使う人にとっては、得るところのなかなか大きい一冊だと思う。
18人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2024年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子力学の形成過程は、いろいろな解説がありますが、統計力についてはほとんどありませんでしたが、本書により、形成に関わった物理学者群の全体像と、議論の過程が良くわかりました。
2021年11月26日に日本でレビュー済み
本書、統計力学に画期的な貢献をしたギブスを中心として、彼の前後の先行研究および後世への影響を調べ上げた力作である。念のために注記しておくが、著者は京大文学部、科学哲学科学史の専攻で学位を取った研究者であり、理学部を出ているわけではない。それにもかかわらず、統計力学に手をつけた多くの諸家の研究を調べ上げ、これだけの大著を仕上げた努力は素晴らしい。おそらく、彼の指導教官の薫陶が実を結んだのだろう(361ページからの「あとがき」参照)。

で、本書の内容に戻る。「序章」で本書全体の目論見が述べられ、第1、2章がギブスに至る前史、マクスウェル、ボルツマン、ヘルムホルツらの貢献のレビュー。第3章がギブスの『統計て力学の基礎的諸原理』の解説(以下、『諸原理』と略)。この部分、第2章までは必ずしもいい出来ではない。著者の目論見、構想をもう少し明晰に、角を立てて述べることはできなかったものか、幾つのかの学説の「キーコンセプト」をもっと的確に解説できなかったものか、という不満が残る。しかし、第3章に入ると、そういった不満を払拭するように解説や論述が冴えてくる。そこで、評者がおすすめする読み方は(マクスウェルやボルツマンの気体分子運動論をある程度知っている方々向けだが)、序章の次に、すぐ第3章から読み始めてはいかが?というもの。ここをしっかり頭に叩き込んでおけば、本書は大変有益で面白い。前述の不満は全て帳消しになること請け合い!

一例を挙げれば、すぐに続く第4章、欧州での『諸原理』に対する諸家の批判や反応の部分、著者がベルリン滞在中に(おそらく)調べたことがよく整理されて紹介されており、素晴らしい出来栄えである。また、第3章をしっかり読んでおけば、前に返って1、2章の記述の意味もよりよくわかってくる。本書の主役はギブスなのだから、まず「主役のことをよく知る」という読み方が良いのではないか、と評者は感じた。第5章以下では、アインシュタインをはじめ、後世の諸家が出てくる。ギブスのことをろくに知らずに統計力学の仕事(三部作がある)をしたアインシュタインが、「当時、ギブスの本を知っていれば、私はあのような研究を決して公刊せず。ただ二、三の点の考察に留めておいただろう」(207ページ)と言ったのは面白い。印象に残る言葉だ。

あと、長々と紹介はしない。ただ、統計力学と量子論との「交流」、フォン・ノイマンの量子統計力学の話も重要なところ。よく考えてみれば、「ミクロの対象を追跡できず、厳密な知識を得られないという制限」は、統計のみならず量子力学でも共通なのだ。そこで、「統計」も「確率」も二つの領域を「橋渡しして繋ぐ」という点では強い親近性がある。「橋渡し」とは、この文脈では「コードを介した対応」とでも言い換えられよう。そうすると、これは「科学的知識」の本性にも関わってくる、哲学がらみの問題も提起しているのである。
12人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2023年5月24日に日本でレビュー済み
かなりの分量と、それなりに専門的な知識を要求される内容であるという
ことから、まだ読み始めてすらいない。長い休みがとれたら読んでみたい
本のリストの一冊に入れておこう。

364ページから始まる「あとがき」に書いてあることだが、本書は科学
史家である著者がギブスの統計力学についてまとめた博士論文をもとに書
いたものである。現時点で言えることは、かなりガッツリと気合を入れて
読まないといけない一冊だということだけである。
2021年10月7日に日本でレビュー済み
気体の分子運動論の始まりとともに観測できないミクロの状態とマクロの観測可能量の区別の問題が現れた。それは熱力学第二法則=エントロピー増大の不可逆性(というマクロの帰結)を力学的に(つまりミクロの分子運動から)導出できるかどうかという問題として先鋭化した。その解決法としてマクスウェルとボルツマンが萌芽的に提起し、ギッブスが確立したアンサンブル概念がミクロの状態とマクロの観測可能量を橋渡しできる根拠は何なのかをめぐる議論は、フォンノイマンによる量子力学における観測行為の理論的基礎づけの議論にまでつながっていった。結局、アンサンブル概念の力学的基礎づけが断念されたことにより、19世紀に支配的だった力学的世界像の解体が(ローレンツらオランダの物理学者を通じて)促進されたと示唆されています。以上が本書が描くストーリーの骨格なのかなと思います。

新進気鋭の著者がこれまであまり関心を向けられてこなかったギッブスのアンサンブル概念に着目したのは、ひょっとするとこの概念とそれをめぐる議論こそが19世紀物理学から20世紀物理学への隠れた橋渡しの役割を果たしていたと言えるかもしれないと感じたからなのかな?アンサンブル概念に対する科学史家の関心が希薄だった理由はこの概念が便利な計算ツール以上のものだと思われていなかったからだということなのだと思いますが、著者は計算技術の洗練があまり目立たない形で物理学の方向性を変えていくような作用をもたらした例としてアンサンブル概念を理解しようとしているように感じました。著者自身はそんなことは一言も言ってませんが。統計力学の形成史というモノグラフを通じて著者がどのような世紀転換期の物理学史像の絵を描きたかったのかがよく分からなかった(星ひとつ減)けれども、いろいろ想像が膨らむ刺激のある力作です。

気体にとどまらない一般的な適用可能性をもった非常に強力な計算ツールがほとんど無根拠なまま天下り式に、中心ヨーロッパのコミュニティ内での議論を経ずに辺境アメリカから完成された形でいきなり現れたわけですものね。それはもうビックリしますよね。それがしかも一般性が高すぎて熱力学や分子運動論ではできることができなくなったりした部分もあるから本当に信用していいツールなのか疑念が膨らむ。発案者のギッブス本人は死去していて話も聞けない。そんな怪しげなアンサンブル概念を躊躇なくフル活用していったのが熱力学と分子運動論の中心だったドイツとイギリスではなく中心から外れたオランダの物理学者だったというのは実に分かりやすい展開だったように思われます。
11人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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