SF作家として知られるルディ・ラッカーが、無限と云うテーマについて色々な話題を盛り込んで書き下ろしたノンフィクションです。白状すると、多分文体が肌に合わないのが一番の理由だと思うのですが、私は彼のSF作品にはどうにも馴染めません。そんな私も、彼のノンフィクション作品には比較的抵抗が少なく、中でもこの作品が一番です。 『思考の道具箱』や『四次元の冒険』等もいいのですが、話題が豊富で、広い領域を扱っているところが高得点です。
数学的、物理的、神学的、哲学的、SF的、コンピュータ的、様々な形態の無限を俎上に上げて、基本的な視点は恐らく数学者の儘で、それらの間の関連を解き明かしてくれているのですが、その発想の懐の広さには驚くばかりです。只その分、話題がしょっちゅうあっちこっちへ飛んで行くので、個々の部分は解り易いのですが、論展開の流れを追って行くのが並大抵のことではありません。途中で挫折してしまう方も多いでしょう。無限と云う概念の持つ多様性を垣間見せてくれる本ですが、その多様さに溺れてしまっている感もなきにしもあらずです。パラパラと読み流してもいいそうなので、余り堅苦しく考えないで読む方がいいのかも知れません。
訳文の方は、著者の名前を「ラディー」としているところから始まって、人名や語句に関する間違い、或いは今の時代には合わない表記が非常に多いです。文体もこなれず直訳風で、しかも「、」「。」ではなく「,」「.」を使う横書き印刷なので、意味が合っている場合でもかなり紛らわしい箇所が沢山あります。気を付けておいた方がいいでしょう。
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