「より高くより速くより強く」を身体的に求めるスポーツと、それを反射神経のレベルでのみ求めるゲームが、どのように一致点を見つけるだろうか。ゲーマーが「選手」や「アスリート」として認められ、ファンが生まれるための条件とは何だろうか。そういった疑問に応えてくれるものと思っていた。本書は、ディジタルテクノロジーの利用が選手とファンの双方にメリットがあること、オリンピックがメディア戦略の舞台であることを説くことで、身体面での勝利や観客心理にディジタルデクノロジーを援用することの利点を主張するが、それをファンタジーゲームの世界に没入することへ接続する文脈を作れていない。つまるところ、ARやSNSを通じて選手と観客とつながればつながるほど、そこに横たわる大きな違いがより明確になるだけであり、その差がゲーマーと観客との間に見出せるかどうかは、ゲーム実況などを見れば簡単にわかるのではないか。
著者や訳者には申し訳ないが、「スポーツ2.0をめぐる日本のこれから」と題する巻末の解説のほうがはるかに機知に富んでいる。「スポーツが苦手な子だって学校で輝きたい」というeスポーツの金科玉条は、学校でTVゲームをやらせる安易な言い訳にすぎない、と思えてくる。ゲームさせとけば楽でしょうよ。先生は。
以上、★二つは全部、解説に対してのもの。
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