なんとも重苦しい「学史」。
日経新聞(2014年2月9日付)に掲載された赤坂憲雄の書評のうち、
「著者の背負い込んだ危機感が深刻」……という一節がどうにも気になって、読んでみた。
副題のとおり、巨人柳田の偉大な功績、(良い面、悪い面両方の)甚大な影響、そして
(過剰な)批判などをふくめ、日本の民俗学の半世紀が、編年式に詳細に綴られている。
索引に採られた人名で、たとえば上野千鶴子、小熊英二、加藤周一、西岸良平、佐野真一、
水木しげる、良知力……など、一見意外な、しかし“現代日本の民俗学”という射程では、
ある意味で当然かもしれない、民俗学・歴史学の内部関係者以外の人名が、目にはいる。
該当ページを読めば、ごく短い記述であっても、なるほどとうなずく。
このことでわかるように、本書は民俗学の専門家以外であっても、民俗学に関心があるか、
近接する他の人文科学に興味をもつ読書人には、なかなか役に立つ本。
しかし、本書の核心は、やはり赤坂の書評が示した「危機感」だろう。
具体的には、本書6章にしるされた、1995年に山折哲雄が主唱したところの
「落日の中の日本民俗学」という峻烈な民俗学批判と、それに対する
民俗学内部から「何の反応もなかった」(p.243)という著者の苦衷。
外野席からの無作法なヤジを、斯界の第一人者が代表して黙殺した、のではないらしい。
少なくとも著者自身は、この「落日」批判を骨身に感じ、重く受け止めた。
その証拠に(山折の批判から20年も経つのに)、「あとがき」に、
「民俗学は現在正念場を迎えている」「多くの事柄について私も無関係ではない」
「反省の累積過程であった」「私自身の反省のための学史」(すべてp.294)
……と、尋常ならざる“反省”の言葉が連ねられている。
その真摯な姿勢には敬意をおぼえるが、著者のような学界の中核にいた研究者に、
これほど壮烈な覚悟で“反省”を揚言されると、よほど鈍感な若者以外は、
この“落日の民俗学”を追究する後進は現れないのでないかと、他人事ながら心配になる。
著者は、“反省”に続けて、「若い人びとへの期待をこめた学史である」と綴るが、
本書が果たして、終わりゆく学問への“過去帳”にならない保証はあるのだろうか。
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現代日本の民俗学: ポスト柳田の五〇年 単行本 – 2013/12/19
福田 アジオ
(著)
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新しい研究体制のもと民俗学はどのように変貌し、いまに至るのか。都市・観光・環境などより身近な課題と切り結ぶ学問状況を検証。
- 本の長さ366ページ
- 言語日本語
- 出版社吉川弘文館
- 発売日2013/12/19
- ISBN-104642080988
- ISBN-13978-4642080989
商品の説明
著者について
1941年,三重県に生まれる.1971年,東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了.現在,国立歴史民俗博物館名誉教授 ※2013年12月現在 【主な編著書】『日本の民俗学』(吉川弘文館,2009年),『日本民俗学の開拓者たち』(山川出版社,2009年),『名所図会を手にして東海道』(御茶の水書房,2011年)
登録情報
- 出版社 : 吉川弘文館 (2013/12/19)
- 発売日 : 2013/12/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 366ページ
- ISBN-10 : 4642080988
- ISBN-13 : 978-4642080989
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,081,372位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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