この本は、経済学者である著者が、「文学作品そのものを用いて、時代の「良質な観察者」としての文人が描く人々の内面的な部分を、ストーリーの流れの中から読み取るという手法」により、著したものです。普通の文学研究者や文学評論家とは異なるアプローチで、新鮮に感じました。
取り上げられている作品は次の通り。
1 武田泰淳『鶴のドン・キホーテ』
2 太宰治『斜陽』
3 三島由紀夫『絹と明察』
4 永井荷風『あめりか物語』
5 谷崎潤一郎『痴人の愛』
6 横光利一『上海』
7 小林多喜二『蟹工船』
8 大岡昇平『野火』
9 山田風太郎『戦中派不戦日記』
10 夏目漱石『文芸の哲学的考察』
その他、4では実際に永井荷風の留学したカレッジを訪れ、保存されている成績表を見たこと、9では戦時中、京都にも空襲があったこと、等等、豆知識も得られます。
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文芸にあらわれた日本の近代: 社会科学と文学のあいだ 単行本 – 2004/11/1
猪木 武徳
(著)
- ISBN-104641162190
- ISBN-13978-4641162198
- 出版社有斐閣
- 発売日2004/11/1
- 言語日本語
- 本の長さ221ページ
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登録情報
- 出版社 : 有斐閣 (2004/11/1)
- 発売日 : 2004/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 221ページ
- ISBN-10 : 4641162190
- ISBN-13 : 978-4641162198
- Amazon 売れ筋ランキング: - 752,108位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,009位文学理論
- - 10,590位日本史一般の本
- - 69,624位ビジネス・経済 (本)
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2019年9月9日に日本でレビュー済み
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中学高校の2年先輩が書かれた本。
社会経済学分野の膨大な知識に裏打ちされたエッセイ集です。最初に立場や方法論が開陳されます。ここで残念なのは解釈学に触れられていないことです。解釈学は古典や聖書のテキスト解釈から発生した哲学です。
中身は成功しているのもあれば、いまいちのもありました。
社会経済学分野の膨大な知識に裏打ちされたエッセイ集です。最初に立場や方法論が開陳されます。ここで残念なのは解釈学に触れられていないことです。解釈学は古典や聖書のテキスト解釈から発生した哲学です。
中身は成功しているのもあれば、いまいちのもありました。
2009年1月1日に日本でレビュー済み
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副題の「社会科学と文学のあいだ」という文言がなければ,本書を手に取ることはなかっただろう。太宰治,谷崎潤一郎,小林多喜二,そして夏目漱石ら計10編の文芸作品に描き出された「日本の近代(の萌芽)」を静かに読み解く知的営為が遂行される。自然科学的手法を援用した社会科学の方法論(=モデル化)と文学作品の作風(=ストーリー)との隙間を埋めようとする姿勢には,「文学と経済(史)研究双方が互いに相補うことによって,歴史的存在としての経済社会をより強く実感できるのではなかろうか」(5頁)という実に興味深い問題意識が反映されている。経済学者としての該博な知識を抑制し,「良質な観察者」としての文人が炙り出した人間の内面について,自由に語っているのが印象的である。ゆったりとした気分で「味わう」一冊だ。
どの章も読ませるものばかりだが,特に後半の4作品(第7章から第10章)が私の心の琴線に響くものがあった。蟹工船での苛酷な労働条件やそれに縛られた労働者の悲惨な実態(第7章),対立・葛藤や「暗い淵」を宿した一人の人間に宿る本性と新古典派理論が想定する「独立した合理的な個人」のモデルとの乖離を綴った第8章を読むと,扱われた文芸作品そのものを紐解きたい衝動に大いに駆られる。「歴史と偶然性」と題された第9章では,なぜ原子爆弾が長崎に投下されたのか,その驚くべき偶発性の所在が語られる。思わず息を呑む瞬間だ。一元論や相対主義に内在する深刻な危険性の克服と「多元論」の受容を尊重する漱石の慧眼ぶりは見事だが(第10章),それは経済学を含むこれからの社会科学のあり方を示唆するうえでも有益な発想に違いない。
本書が広い読者層に浸透することを心から願いつつ,次なる続編刊行にも大いに期待を寄せたい。そして私自身の意識のなかでも,「モデルとストーリーの架橋」を求める心的姿勢を少しでも持ち得るよう今後の研究に励んでみたい。
どの章も読ませるものばかりだが,特に後半の4作品(第7章から第10章)が私の心の琴線に響くものがあった。蟹工船での苛酷な労働条件やそれに縛られた労働者の悲惨な実態(第7章),対立・葛藤や「暗い淵」を宿した一人の人間に宿る本性と新古典派理論が想定する「独立した合理的な個人」のモデルとの乖離を綴った第8章を読むと,扱われた文芸作品そのものを紐解きたい衝動に大いに駆られる。「歴史と偶然性」と題された第9章では,なぜ原子爆弾が長崎に投下されたのか,その驚くべき偶発性の所在が語られる。思わず息を呑む瞬間だ。一元論や相対主義に内在する深刻な危険性の克服と「多元論」の受容を尊重する漱石の慧眼ぶりは見事だが(第10章),それは経済学を含むこれからの社会科学のあり方を示唆するうえでも有益な発想に違いない。
本書が広い読者層に浸透することを心から願いつつ,次なる続編刊行にも大いに期待を寄せたい。そして私自身の意識のなかでも,「モデルとストーリーの架橋」を求める心的姿勢を少しでも持ち得るよう今後の研究に励んでみたい。
2005年5月27日に日本でレビュー済み
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■経済学は、さまざまな「仮定」の上に成り立っている(人は合理的に行動する、などなど)。そしてそれを乗り越えようという動きも続々出てきている。本書は、特定の作家の小説(漱石、横光、谷崎、太宰、三島ほか)の経済的な描写から、時代の雰囲気climateを特定しようとする。その際に一次資料と書かれた小説を比較。
■すると、たしかにある種の時代像が浮かびあがってくる。それと同時に「人間の行動」の偶然性や、人が理不尽なものをあえて選択することもあることが判明してくる。「厳密さ」に欠けるとはいえ、とてもおもしろい。
■エッセーのように「読める」ところがやや残念。脱構築や国際政治学などを踏まえているようにはあまり見えない。本来なら、500ページになりうる本。そのこれから書かれるであろう本のエッセンスとして読むといいかもしれない。
■すると、たしかにある種の時代像が浮かびあがってくる。それと同時に「人間の行動」の偶然性や、人が理不尽なものをあえて選択することもあることが判明してくる。「厳密さ」に欠けるとはいえ、とてもおもしろい。
■エッセーのように「読める」ところがやや残念。脱構築や国際政治学などを踏まえているようにはあまり見えない。本来なら、500ページになりうる本。そのこれから書かれるであろう本のエッセンスとして読むといいかもしれない。