現代の経済地理学の潮流を手際よく概観できる書物だと思って手にしたが、経済地理学の学説史的展開が時系列的に詳述されているわけではなく、欧米の１３人の論者を別々の執筆者が紹介した断片的な章が羅列されているだけ。しかもその執筆は、必ずしも紹介されている欧米の論者についてわが国の学界で最も通暁している専門家ではなく、著者らが率いる「地域構造論」グループに属する人々の適当な分担でなされているようだ。最終章では、ここで紹介された論者の説を総括して経済地理学の理論的展望を最も先進的に切り開く「世界の主要経済地理学理論」のが T. Yada 1941の「地域構造論」だ、という自画自賛。
研究書として出版されたものであろうから、学派を超えて各々の論者に最も適切な専門家を執筆陣に起用し、もっと客観的な叙述は出来ないものであろうか。そもそも実際には、「地域構造論」など、主要どころか世界ではまったく知られていない。
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