詩と絵画を中心にロマン主義と表現主義の関係性および、ロマン主義はどのようにして表現主義につながる美的および知的基礎を築いたのかに関して、膨大な文献や作品を根拠にして詳細に解説している。
表現主義に絞って概要をまとめると、表現主義はロマン主義の正統な発展形であり、表現の方法としてはそれが求める本質にしたがって抽象が描かれ、有機論的世界観と汎神論的宗教観、忘我的な生気論や好戦的な非合理主義に基づき、プリミティブな魔術的実在論と黙示録的観念論を哲学的背景として持ち、したがってナチズムとはその根において同じだったのだとする。ただし表現主義はその表面に有するニュアンスにおいてナチスによって退廃芸術として弾劾され、いずれも最終的には悪夢に飲込まれていったのだとする。つまり、表現主義はその同族であるナチズムに、ナチズムは自分自身の悪夢に飲込まれたのである。
最後の「第九章 原初的なものの魅力」が自分にとっては山場であり、そこで表現主義をナチズムとも絡めて纏めている。
アートのジャンルとしてはほぼ詩と絵画とに限定して議論を展開しているが、一般的には注意を払われない作家たちの言葉をも多数引用して解釈を加え、人間の暗く奥深い根幹に嵌り込んだロマン主義と表現主義の解説書として、魅力的で説得力のある重要な一冊だと思います。
“ほんとうに、もう取り返しはつかないのだろうか”という最後の一言が印象的。
原著は1979年発行。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。
OK
ロマン主義と表現主義: 現代芸術の原点を求めて/比較美学の試み (叢書・ウニベルシタス 469) 単行本 – 1994/12/1
ロマン主義と表現主義の共通性を明解に提示するとともに,厖大な資料を駆使して,現代の芸術と文化に刻印されるロマン主義的精神の本質と問題性を検証する。
- 本の長さ378ページ
- 言語日本語
- 出版社法政大学出版局
- 発売日1994/12/1
- ISBN-104588004697
- ISBN-13978-4588004698
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ロマン主義はヨーロッパ精神史の転回点に現れた生と世界に対する態度表明であり、表現主義は現代初頭におけるその紛うかたなき復活であった。厖大な史料を駆使しながら、ロマン主義精神の本質と問題性を検証する。
登録情報
- 出版社 : 法政大学出版局 (1994/12/1)
- 発売日 : 1994/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 378ページ
- ISBN-10 : 4588004697
- ISBN-13 : 978-4588004698
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,319,737位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 56位ロシアアヴァンギャルド・ドイツ表現主義の美術史
- - 171位新古典主義の美術史
- - 218位ロマン主義の美術史
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
1グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。