現在本書は誤った定義があるので、現版のみでは星2つ以下と思うが、
下記のようなことに注意して読めば、平明に書かれた良書と思う。
更には、HPに最新正誤表があるので、今後のHPでの改訂に期待!できる。
「初版を購入し、改訂版が出て買ったことを後悔することは多い」が、
本書の場合HPに「公開」しているので、今購入しても「後悔」しない。
(書籍離れになるのは当たり前でしょう。本書の著者を見習って欲しい。)
下記に留意し、今後著者HPを見る条件下では、星4つの価値があります。
(1) 定義2.22 にある
「f:X→Xがx=aで連続であるとは、f(a)を含む任意の開集合Uに対して、
(逆像) f^-1[U]が開集合になることをいう。」は完全に誤りです。
反例:実関数f:R→Rを閉区間[-1,1]上で0,それ以外2とする。
fはx=0の近傍で定数関数だから、通常の定義(微積分)ではx=0で連続です。
一方、f(0)=0を含む開区間(-1,1)の逆像は[-1,1]で開集合ではないから、
この本の定義では、fはx=0で連続ではない。
(2) 定理1.18の証明では、同型hが定まっていません。
(なお、「数の体系と超準モデル(田中著)」にある往復論法(p169)は正しいが)
(3) p8「変数xについての条件を考えるときは、
空でない集合を1つ定め・・・と約束するのがふつうです。」
とあるが、「空でない」という条件は個別の理論において普通ではありません。
実際、本書でも次のような注意が書かれている。
(4) p127(I)「φを定義域とする関数(2変数条件)はただ1つあって、それはφである」
(関数の定義から導かれる定理で正しいのだが、空関数の存在を認識して
いない数学者が多いので、この注意書きは大変親切であると思う。)
(*)「定義や公理に不要な条件」を付けても、誤りではない場合は多いのですが、
「不要な条件を必須と思い込んでいる教師が、不要な条件を書かない学生
(この教師より優秀!)の答案を不完全な解答と思い減点してしまう。」
(「愚教師定義減点の危則」)という危険があります。
例えば、
(5) p162(1)選択公理:集合族Aが「空でなく」、φがAに属さないとき、
Aの選択関数が存在する」はAがφでもOK。空関数は選択関数です。
(6) 補題2.30(1)(2)(3)の後で、
「ブルバキは、うえの3つの条件をみたす・・・」とありますが、
「(1)は、(2)で∪φ=φ、(3)で∩φ=Xという特別な場合(cf.p36)」
で、ブルバキの定義にそのような無駄は無く「位相の定義は(2)(3)のみ」です。
(ブルバキ 数学原論 位相1)
(実は、多くの教科書の位相の定義にもブルバキには無い不要な条件が入っている。)
(7) 本書で「ゲーデルの不完全性定理」と紹介されているのは仮定が
「ω無矛盾」ではないので、「ゲーデル・ロッサーの不完全性定理」です。
(8) p96 注に、「上の定理は、選択公理なしには成立しないことが知られている
(シールピンスキの定理、文献・・・)」、となっていますが、これでは
「選択公理の独立性(Cohen)をシールピンスキが証明した」という誤解を生じます。
私は「basic Cohen model」を使った証明しか知りません。
(9) 例題1.3 [解]は「同型が連続でない」ことまでしか示していないので不完全。
(「写像は連続で無ければならない」という錯覚は「0の0乗は定義できない」
(本当は(6)より、0^0=1)と主張する数学者?の根拠となっています。)
本書の順序対や自然数(積対象や自然数対象は同型までしか定まらない!)
の導入の仕方には混乱させられるが、他書の記述より修正しやすいようです。
また、学部講義では背理法を一切使用しないという私の価値観では、
本書で背理法(すべて不必要)が多用されているのが残念です。
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数学のロジックと集合論 単行本 – 2003/12/1
- ISBN-104563003379
- ISBN-13978-4563003371
- 出版社培風館
- 発売日2003/12/1
- 言語日本語
- 本の長さ230ページ
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
集合と論理の基礎を多くの具体例をあげながら丁寧に解説した初学者向けの入門書。一つの話題に対してさまざまな切り口を提供し、楽しみながら数理論理学や現代集合論への入口にたどり着けるよう配慮したテキスト。
登録情報
- 出版社 : 培風館 (2003/12/1)
- 発売日 : 2003/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 230ページ
- ISBN-10 : 4563003379
- ISBN-13 : 978-4563003371
- Amazon 売れ筋ランキング: - 482,986位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- カスタマーレビュー:
著者について
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東京都生まれ。京都大学理学部卒業。筑波大学大学院で研究中、修了年次より前に大阪府立大学助手にしていただいたため、同大学院数学研究科を中退。博士(理学)(筑波大学)。現在、東京都立大学 理学研究科准教授、慶應義塾大学非常勤講師。数理論理学・計算理論とそれらの応用を研究・教育している。著書に『数学のロジックと集合論』(共著、培風館)、『論理リテラシー』(培風館)、『例題で学ぶ集合と論理』(森北出版)、『ろんりの相談室』。分担執筆の共著に『ゲーデルと20世紀の論理学1』(東京大学出版会)。雑誌『数学』(岩波書店)元・編集委員(2011年4月から2013年6月)。日本数学会 元・評議員(2015年3月から2017年2月)。
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