聖書の15倍はあるというインドの大叙事詩『マハーバーラタ』を2段組和訳に換算して300ページ弱分の戯曲にまとめるという破天荒な試みだが、意外にも成功している。脚本家ジャン＝クロード・カリエールと演出家ピーター・ブルックが原典のエッセンスを理解するために7年間をかけ、さらに台本ができあがってからも、稽古を続けながら手直しを加えた努力が報われている。成功の理由を察するに、ヒンドゥー教の物語の舞台化としてではなく、（インド発ではあるけれども）人類全体の物語として語ろうとする方針にしたことだろう。
この作品を通しで舞台にかけると9時間かかるという。私は、舞台上演をピーター・ブルック自身が映画化した3時間のダイジェスト版をDVDで鑑賞しただけだが、この脚本を見ることで、作品の意図がよくわかるようになった。この脚本はDVDでもよいのでぜひ舞台上演の鑑賞とセットで読むことを勧めたい。肌の色を超えたキャスティングの妙も味わえることであるし。
訳文は大変にこなれていて、読んでいて楽しい。インド固有の事象の説明は最低限に抑えられているので、他の本で予備知識を得ておくことが前提。あえて難を言えば、登場人物の一覧が最初に出されていないことで、これは不親切だと思う。
舞台上演ならではの独自の脚色（とくにヴィヤーサの役）は多々あるし、原典を大幅に圧縮しているから、この作品を読んだだけでは『マハーバーラタ』が分かったことにはならないが、人類の叙事詩としての本作品の原典解釈には得るところが多い。演劇に関心のある人だけではなく、『マハーバーラタ』をある程度知っている人にもお薦めの本である。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
