かつて「新エネルギー大辞典」も執筆され、RITEの研究所長でもある大家による書。
広い範囲の議論をカバーしており、参考になるデータも多い。
しかし、その考え方は「温暖化対策のコスト＝負担にしかならない」という考え方にとらわれており、古いと言わざるを得ない。
実際には温暖化対策によって化石燃料にかけるコストが節約できるのみならず、新たな経済効果を生む。本書にはこうした「温暖化対策による新たな価値の創出」という観点が決定的に抜け落ちており、ドイツを始めとする欧州各国での経済効果の実績や、それに基づいて各国で提唱されているグリーン・ニューディールの考え方と矛盾している。いきおい、温暖化対策についても「きびしい」「多面的な検討が必要」などと述べるのみで、明確な方向性を示せていない。
これでは温暖化対策を進めるどころか、逆に足を引っ張ることになりかねない。かつてご自身が推進された技術の芽を思い込みだけで潰されないよう、切に願うものである。
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