アイルランド、ウェールズのいわゆるケルト神話に留まらず、ギリシャ、ローマの文献や考古学によって明らかにされてきた事実など、総合的な見地から、ケルトという概念をまとめた事典です。「大陸のケルト」から「島のケルト」まで広範に扱い、474の項目を集めています。見出しの数としてはやや少なめな印象がありますが、解説文の中には見出しになっていないさまざまな知識に溢れているので、事典としてあまり強く意識せずに、読み物として楽しんだほうがよいと思います。
同じような範囲をターゲットにした類書に
「ケルト事典」
がありますが、本書の見出しは (現代の) アイルランド語、ゲール語の発音に基づいているので、こちらのほうが親しみやすいかもしれません。一方で、
「ケルト事典」
は古アイルランド語の発音に基づいている点がとても興味深いです。どちらにしても、双方ともケルトを理解する上で重宝する良書なので、両方ともおすすめです。
神話群、物語群の各エピソードについては、あらすじも紹介されているので、読み物としても楽しめます。ぶ厚い作品集を読むのはちょっと、という方には、むしろ本書のほうが敷居が低く、よいかもしれません。監修は、長くケルト神話や妖精の研究を手がけてきた井村君江氏なので、信頼できる内容です。
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