伊豫谷登士翁(1947~2022年)氏は、滋賀大学経済学部卒、京大大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学、東京外語大専任講師・助教授・教授、一橋大学大学院社会学研究科教授を経て、同名誉教授。専門は、経済政策、国際関係論、社会学。
本書は、著者の20年ほど前の著作である『グローバリゼーションと移民』(2001年)と『グローバリゼーションとは何か』(2002年)以降に、様々なところで書いたものから選択し、大幅に書き改めたものである。
私は、21世紀に入ってから世界中に広がっている、自国第一主義、移民・難民排斥、及び、その背景ともなっているネオ・リベラリズムと、それに起因する格差の拡大、更には、宗教・文化間における対立、いずれに対しても強い問題意識を持っており、本書を手に取った。
一般に、globalizationとは、様々な事物・側面において、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大する現象を指し、その事物はモノや金や人や情報であり、また、経済や政治や文化や社会などの側面を持つが、本書において著者が取り上げるのは「人」に関わるglobalizationである。
目次は以下の通り。
序章:移動という経験
第Ⅰ部:グルーバリゼーションの時代 第1章:グローバリゼーションを学ぶ/第2章:移動と場所を問いなおす/第3章:グロ-バル資本と世界経済/第4章:世界都市からグローバル・シティへ
第Ⅱ部:移動とは何か 第5章:移動のなかに住まう/第6章:難民が問題になるとき/第7章:「アジア」を問いなおす/第8章:移民国家としての日本
第Ⅲ部:場所の未来 第9章:境界からみる多文化共生/第10章:人の移動とコミュニティという場
終章:人の移動をどう考えるか
読後感は、(書き下ろしではなく、既存の論文を集めたものだからだと思われるが)新書としては、全体の理路が雑然としており、著者の言いたいことも分かりにくい印象が強く、途中からは飛ばし読みで最後までページをめくった。
上記理由により、本書のサマリーとは言えないのだが、断片的に読んで考えたことの備忘は以下である。
◆現代のグローバリゼーションによる人の移動は、発展途上国から先進国への労働力の供給という(ある意味、プラスの)側面を超えて、昨今は、移民の過剰流入と、それに伴う政治的不安の問題を生んでいる。
◆その原因は、世界的な格差を必然的に生み出す、行き過ぎた資本主義(=ネオ・リベラリズム)、及び、国民と移民を否応なく区別する「国民国家」の枠組みである。
◆よって、ネオ・リベラリズムの是正(これについては、著者は語っていないと思われる)と、国民国家の枠組みを超えた、新たなコミュニティを創るための発想が必要となる。
著者は最後に次のように記しているので、私の理解もあながち外れてはいないかも知れない。
「もし本書が国民国家の物語から人々を解き放つ方向を少しでも示唆することができたならば、当初に企図した役割を果たすことができたのではないかと思います。」
(2024年2月了)
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グローバリゼーション ――移動から現代を読みとく (ちくま新書) 新書 – 2021/12/9
伊豫谷 登士翁
(著)
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ヒト、モノ、カネが国境を越えて行き交う現代世界で、なぜ自国第一主義や排外主義が台頭するのか。グローバル化の根本原理を明らかにし、その逆説を解きほぐす。急増する移民・難民、各地で台頭する自国中心主義や排外主義、そしてますます拡大する経済格差……。ヒトやモノ、カネ、情報の国境を越えた移動を基礎に飛躍的な発展を遂げたはずの現代世界で、いったい何が起きているのか。本書では、現代をグローバリゼーションの時代と捉え、国民国家や国民経済といった近代社会の前提とされてきた枠組みを、移動という視点から再検討していく。グローバリゼーションと国家との逆説的な関係を解きほぐし、現代世界の深層に鋭く迫る。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2021/12/9
- 寸法10.7 x 1.4 x 17.3 cm
- ISBN-104480074481
- ISBN-13978-4480074485
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商品の説明
著者について
1947年、京都府生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。東京外国語大学外国語学部教授、一橋大学大学院社会学研究科教授、順天堂大学国際教養学部特任教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専門は、グローバリゼーション研究、移民研究。著書に『変貌する世界都市』(有斐閣)、『グローバリゼーションと移民』(有信堂)、『グローバリゼーションとは何か』(平凡社新書)などが、訳書にサスキア・サッセン『グローバル・シティ』(監訳、ちくま学芸文庫)などがある。
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2021/12/9)
- 発売日 : 2021/12/9
- 言語 : 日本語
- 新書 : 304ページ
- ISBN-10 : 4480074481
- ISBN-13 : 978-4480074485
- 寸法 : 10.7 x 1.4 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 272,270位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 115位世界の経済事情
- - 148位国際経済学 (本)
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2024年2月2日に日本でレビュー済み
2021年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
グローバリゼーションと、国境を越える移動・移民についての研究を一般向けに語る新刊新書である。全302頁。
目次等
序章 移動という経験
第一部 グローバリゼーションの時代
○「いま」という時代を理解するための分析方法として、グローバリゼーションという視点を用いる。
第1章 グローバリゼーションを学ぶ、第2章 移動と場所を問いなおす、第3章 グローバル資本と世界経済、第4章 世界都市からグローバル・シティへ。
第二部 移動とは何か
○グローバリゼーションと呼ばれる時代の人の移動をどのように捉えるか。「移民」を再考する。これまでの研究は移民政策研究であり、移民それ自体を研究対象としてこなかった。
第5章 移動の中に住まう、第6章 難民が問題になるとき、第7章 「アジア」を問いなおす、第8章 移民国家としての日本。
第三部 場所の未来
○グローバリゼーションの時代における移動と場所の問題を、人々のコミュニティ願望とのかかわりから考える。
第9章 境界からみる多文化共生。第10章 人の移動とコミュニティという場。
終章 人の移動をどう考えるか。
私的感想
○グローバリゼーションにおける人の移動の問題、国境を越える人の移動としての移民の問題。移民政策研究ではなく移民それ自体の研究、人の移動の作り出す場における「多文化主義」「多文化共生」の問題、グローバリゼーションとナショナリズムとコミュニティ願望の関連等の諸問題について、知らなかったこと、考えていなかったことをいろいろ教えていただき、勉強になった。
○著者の言いたいのは次の二点かと思う。
一、コミュニティ願望とグローバリゼーションというのは対立的なものではなく、グローバリゼーションがコミュニティ願望を昂進させ、そうしたコミュニティ願望をナショナルな形で回収することによって、ふたたびグローバリゼーションの推進力にしていく関係性にある。(279頁)
二、(日本を含めた)先進諸国では、発展途上国の移民労働者を欠いては、経済だけでなく社会も成り立たなりつつある。あらゆる国が国民と他者の分断が引き起こす矛盾を抱え込まざるをえなくなっている。しかし、それをパラドックスや矛盾としてきたのは、政策側の意図、政治の問題、さらには受け入れ社会そのものだ」(240頁、241頁)
○ちょっと気になるのは、次の内容が頻繁に繰り返されることである。
☆戦前の日本は「移民国家」であったのだが、戦後に「非移民国」という政治的宣伝がなされ、研究者もその言説に追随して、「戦前移民国家日本」は否定され、戦前の研究は忘却され、「非移民国」という神話が蔓延した。
○重要なことだから繰り返されるのだとは思うが、ちょっとくどい。また、ほかのことでも繰り返しが多い感じ。よい意味では、繰り返し書いて、読者の理解を高めるという趣旨かと思うが、悪い意味では、ちょっとまとまりが悪く、本が厚くなり過ぎている。
○事例が少ないのは研究本としてやむを得ないと思うが、諸問題の解決法も、ちょっと理念的、抽象的で、イメージが湧きにくい。むろん、簡単なことではないでしょうが
私的結論
○上記の気になる点を除くと、丁寧に書かれた良い本と思う。繰り返し読んで、理解を深めたい。
目次等
序章 移動という経験
第一部 グローバリゼーションの時代
○「いま」という時代を理解するための分析方法として、グローバリゼーションという視点を用いる。
第1章 グローバリゼーションを学ぶ、第2章 移動と場所を問いなおす、第3章 グローバル資本と世界経済、第4章 世界都市からグローバル・シティへ。
第二部 移動とは何か
○グローバリゼーションと呼ばれる時代の人の移動をどのように捉えるか。「移民」を再考する。これまでの研究は移民政策研究であり、移民それ自体を研究対象としてこなかった。
第5章 移動の中に住まう、第6章 難民が問題になるとき、第7章 「アジア」を問いなおす、第8章 移民国家としての日本。
第三部 場所の未来
○グローバリゼーションの時代における移動と場所の問題を、人々のコミュニティ願望とのかかわりから考える。
第9章 境界からみる多文化共生。第10章 人の移動とコミュニティという場。
終章 人の移動をどう考えるか。
私的感想
○グローバリゼーションにおける人の移動の問題、国境を越える人の移動としての移民の問題。移民政策研究ではなく移民それ自体の研究、人の移動の作り出す場における「多文化主義」「多文化共生」の問題、グローバリゼーションとナショナリズムとコミュニティ願望の関連等の諸問題について、知らなかったこと、考えていなかったことをいろいろ教えていただき、勉強になった。
○著者の言いたいのは次の二点かと思う。
一、コミュニティ願望とグローバリゼーションというのは対立的なものではなく、グローバリゼーションがコミュニティ願望を昂進させ、そうしたコミュニティ願望をナショナルな形で回収することによって、ふたたびグローバリゼーションの推進力にしていく関係性にある。(279頁)
二、(日本を含めた)先進諸国では、発展途上国の移民労働者を欠いては、経済だけでなく社会も成り立たなりつつある。あらゆる国が国民と他者の分断が引き起こす矛盾を抱え込まざるをえなくなっている。しかし、それをパラドックスや矛盾としてきたのは、政策側の意図、政治の問題、さらには受け入れ社会そのものだ」(240頁、241頁)
○ちょっと気になるのは、次の内容が頻繁に繰り返されることである。
☆戦前の日本は「移民国家」であったのだが、戦後に「非移民国」という政治的宣伝がなされ、研究者もその言説に追随して、「戦前移民国家日本」は否定され、戦前の研究は忘却され、「非移民国」という神話が蔓延した。
○重要なことだから繰り返されるのだとは思うが、ちょっとくどい。また、ほかのことでも繰り返しが多い感じ。よい意味では、繰り返し書いて、読者の理解を高めるという趣旨かと思うが、悪い意味では、ちょっとまとまりが悪く、本が厚くなり過ぎている。
○事例が少ないのは研究本としてやむを得ないと思うが、諸問題の解決法も、ちょっと理念的、抽象的で、イメージが湧きにくい。むろん、簡単なことではないでしょうが
私的結論
○上記の気になる点を除くと、丁寧に書かれた良い本と思う。繰り返し読んで、理解を深めたい。
2023年9月9日に日本でレビュー済み
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本書には新型コロナウィルスをめぐる移動について論じらているが、根拠が全く書かれてなく良い評価しようにもつけられない。もっと簡潔に根拠立てて、説明してほしいと感じました。単なる筆者の今の現時点での、考えを述べているにすぎない。要は、筆者は世の中に反対の意見なのだと感じました。あまり良くないです。
2021年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
コロナ禍で移動が制限される時代にあえて移動を考える本である。
近年の世界的動向としては、トランプ政権下での移民の制限、EUへのシリア難民の制限を代表例として人の移動(移民)を政策的に減らす傾向にある。
日本では定住が普通であり移動はしないとの考え方が一般的である。
しかし歴史的に人は常に移動をしてきた。戦争、宗教、食糧危機など、少しでも豊かな生活を求めて移動を当然に行ってきたのだ。それは日本人も含めてだ。
この本にも出てくるが、石川達三の小説「蒼氓」はブラジル移民の話。島崎藤村の小説「破戒」の主人公は最後にテキサスへの移住を思い立つ。
山田洋次の映画「家族」は長崎の離島から北海道への酪農移住の旅路の話である。
高度経済成長期の「金の卵」は田舎から都市への労働力の移動。
なんてことは無い。日本人、日本国内でも人の移動は普通に行われいたのだ。
健全な経済、社会に人の移動は当然の事象なのである。ドメスティックでジリ貧な日本を考え直す本でもある。
付記 参考図書としては『移民の世界史 ロビン・コーエン著(東京書籍)』も勉強になりオススメ。
世界史の知識も深まります。
近年の世界的動向としては、トランプ政権下での移民の制限、EUへのシリア難民の制限を代表例として人の移動(移民)を政策的に減らす傾向にある。
日本では定住が普通であり移動はしないとの考え方が一般的である。
しかし歴史的に人は常に移動をしてきた。戦争、宗教、食糧危機など、少しでも豊かな生活を求めて移動を当然に行ってきたのだ。それは日本人も含めてだ。
この本にも出てくるが、石川達三の小説「蒼氓」はブラジル移民の話。島崎藤村の小説「破戒」の主人公は最後にテキサスへの移住を思い立つ。
山田洋次の映画「家族」は長崎の離島から北海道への酪農移住の旅路の話である。
高度経済成長期の「金の卵」は田舎から都市への労働力の移動。
なんてことは無い。日本人、日本国内でも人の移動は普通に行われいたのだ。
健全な経済、社会に人の移動は当然の事象なのである。ドメスティックでジリ貧な日本を考え直す本でもある。
付記 参考図書としては『移民の世界史 ロビン・コーエン著(東京書籍)』も勉強になりオススメ。
世界史の知識も深まります。
2022年1月21日に日本でレビュー済み
本書は「移動」という視点からグローバリゼーションを読み解こうという著作で、移動が制限される特異な状況となった新型コロナ下ではなかなかタイムリーな話題設定でもある。
しかし、テーマ設定はよいのだが、本書の中身は非常に薄っぺらいというか上滑りしたものとなっている。
ワイドショーでもよく言われているような「グローバル企業が国境による規制を超える」とか「移民・難民は先進国に来た時にやっと問題となった」とかといったことを、高級な学術用語で置き換えていろいろと書いている部分が大半であり、要するに「そうも見ることも出来る」といったお話の紡ぎ出し以上にはなっていない。
他の方も指摘していたが、本書にはデータがほとんど出てこない。また、一方で個別具体的な事例や地域について詳細な記述を行う(例えば、非先進国における難民受け入れ状況の実態と課題を詳細に解説する)ことでその実態を伝えるようなものにもなっていない。
結局、それっぽいトピックスを上滑りしながらつないで、なんとなくいいことを言って終わり、という残念な仕上がりであり、あまり深い中身を得ることは出来なかった。残念。
しかし、テーマ設定はよいのだが、本書の中身は非常に薄っぺらいというか上滑りしたものとなっている。
ワイドショーでもよく言われているような「グローバル企業が国境による規制を超える」とか「移民・難民は先進国に来た時にやっと問題となった」とかといったことを、高級な学術用語で置き換えていろいろと書いている部分が大半であり、要するに「そうも見ることも出来る」といったお話の紡ぎ出し以上にはなっていない。
他の方も指摘していたが、本書にはデータがほとんど出てこない。また、一方で個別具体的な事例や地域について詳細な記述を行う(例えば、非先進国における難民受け入れ状況の実態と課題を詳細に解説する)ことでその実態を伝えるようなものにもなっていない。
結局、それっぽいトピックスを上滑りしながらつないで、なんとなくいいことを言って終わり、という残念な仕上がりであり、あまり深い中身を得ることは出来なかった。残念。
2021年12月31日に日本でレビュー済み
社会科学と称する分野の致命的な欠陥があらわな本だと思う。例えば女性による家事労働の商品化された移民労働への置き換えに伴う女性移民労働者の増加について論じても、一切データの開示がない。これではイデオロギーの紹介にすぎない。著者は国民国家に反対なのだと思う、それはそれで良いが、論拠の提示がなければそれは単なるイデオロギーだろう。また日本における移民問題を論じるならば避けて通れないのが在日朝鮮人問題だと思うがそれには触れない。済州島での弾圧から逃れた人たちが日本での在日の主流をなすのは、金石範らの言説を通して明らかだろう。いわゆる良心的戦後知識人の限界があらわな書だった。