欧米の事実偏重の体系を無理に取り入れてできた現行の文法では、日本人特有の語感の面倒を見切ることできない。そこで、独創な体系で補いを試みたのが本書で、作者はそれを体験文法となずけ、体験をワクワク型とヒリヒリ型に分類することより、出来事と状態との分別が体験によりどのようにズレるかを簡潔にまとめた。といいながら、そのまとめ方に私は薄さを感じられた。
これは断じて作者の語ることが信頼に不足するものと指しているのではない。立証が確かで、説得力ある。しかし、レポートとか原稿を起草する前の粗筋とかのように、なんでか二行またはそれ未満の段落か続く。同じく自前の論旨をものする香西秀信先生の「論より詭弁」に比べると、ページ数はほぼおなじなのに、文章の濃さに開きがある。展開と応用の差ではないかな。
この本を手にするのは文章をもっと知りたいからで、文法の詳しい論点はもちろん、眼目はやっぱりその応用性に尽きる。この辺をもう少し気配るようにしてもらいたかった。作品でも記事でも取り上げて、体験文法でこのように改善できるとか深読みできるとか、体験部分をどのように排除してより現実に近い描写に書き換えるとかの話しを交えていればと思えてならない。
いろいろと文句と注文をつけさせてもらったが、それでも示唆に富む本であるのは間違いない。是非購入とまでいかないが、出合ったら一度手にして読んでみるに値する。
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煩悩の文法: 体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 (ちくま新書 730) 新書 – 2008/7/1
定延 利之
(著)
- ISBN-104480064389
- ISBN-13978-4480064387
- 出版社筑摩書房
- 発売日2008/7/1
- 言語日本語
- 本の長さ200ページ
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2008/7/1)
- 発売日 : 2008/7/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 200ページ
- ISBN-10 : 4480064389
- ISBN-13 : 978-4480064387
- Amazon 売れ筋ランキング: - 822,841位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2015年1月11日に日本でレビュー済み
—四色ボールペンなら、北京でありましたよ。
—定延なんて名字の人、めったにいないですよね。
—なにしろ田舎だから無人駅がしょっちゅうあるわけよ。
日本語話者にとって何てことはない言い方ですが、言語学的に非常に興味深い問題が含まれています。
先行研究を含めて同じ内容を扱った論文を読むとよりいっそう論が明確になり面白いのですが、本書は一般向けの新書ということで、特段の専門知識のない人でも「何が問題で」「どう考えるとうまくいきそうなのか」がつかめるように書かれています。
テレビの「教養」番組なんかで日本語をテーマにすると、やれ語源がどうの、「正しい」使い方はどうの、といった内容のものばかりですが、こういった「一見規則に反するようで、実は筋が通っている」現象に目を向けさせるような取り組みが学校教育の場を含めて広がれば、世の文法嫌いを減らすことにつながるんじゃないかと思うのです。
—定延なんて名字の人、めったにいないですよね。
—なにしろ田舎だから無人駅がしょっちゅうあるわけよ。
日本語話者にとって何てことはない言い方ですが、言語学的に非常に興味深い問題が含まれています。
先行研究を含めて同じ内容を扱った論文を読むとよりいっそう論が明確になり面白いのですが、本書は一般向けの新書ということで、特段の専門知識のない人でも「何が問題で」「どう考えるとうまくいきそうなのか」がつかめるように書かれています。
テレビの「教養」番組なんかで日本語をテーマにすると、やれ語源がどうの、「正しい」使い方はどうの、といった内容のものばかりですが、こういった「一見規則に反するようで、実は筋が通っている」現象に目を向けさせるような取り組みが学校教育の場を含めて広がれば、世の文法嫌いを減らすことにつながるんじゃないかと思うのです。