〈その人〉は生きている限り〈その人〉なのだろうかと考えたのは、
カミーユ・クローデルの晩年の写真を見てのことだ。赫奕たる天才
であった彼女の光輝はどこに行ってしまったんだろうという印象を受けた。
人は死ぬ以前に、〈その人〉の本質が脱落してしまうこともあるのでは
ないかと思わされた。
ランボーの場合も同様で、青春の、〈ここではないどこか〉へ突き抜け
られるのではないかという目眩めく陶酔の末、彼は青春から見放された。
人は、青春に対して主権など握っていない。主権を握っているのは、
青春のほうだからだ。
だが、彼がトランスの極北に到達した時に見たすべてが祝福された世界が
刻み込まれた詩群は、この欺瞞に満ちた世界の数少ない真実の知的探求の
足跡として、人間社会に永遠に残る価値のあるものだと思われる。
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