以前、「時間と自己」(中公新書)を読んでとても惹かれたので、こちらを読んでみた。
精神疾患の症状について知りたい方も、存在論的なアプローチに関心がある方も面白く読めると思う。
専門的な論文も含まれてるので難しい記述も多々あるけど、文脈が掴めればそこまで歯が立たないことはないと思う。
今までの精神病理学における学説や理論(クレッチュマー、テレンバッハ、シュナイダー、ビンスヴァンガー、ミンコフスキー等)を比較検討しながら、鬱病や分裂病が発現する多様な要因を紐解いている。
性格と状況の関係、鬱病と分裂病の違いや特徴、離人症の様々なケース、時間論・・。
私は、鬱病や分裂病の症状にまったく当てはまらない人や、症状が起こる可能性が無いという人はほとんどいない気がしてる。
競争社会では誰でも人に良い顔ばかりして精神をすり減らざるをえないこともあるし、自分はおかしくないと思っていても、ふとしたときに絶望に襲われて無力になるとか、そういうことはありうる。
時間がばらばらになって繋がっていないとか、空間の広がりに異常があるとか、離人症の方の時間感覚や空間感覚は特殊なものではある。
けど、感覚は人それぞれ違うし(他人がどういう時間感覚や空間感覚で生きているかは外からは分からない)、日常に支障をきたさないから無自覚なだけで、強い感情体験を味わった時などに一時的に近い感覚になることは十分にある。
現代はあまりにも、正常な人間はこういう人間だという像が人々の意識を強く支配してると思う。それは、いわずもがな、西洋的な理性が確立された自我を持った人間が、人間らしいとして認識されてるということである。
心身二元論や二極的な図式では分からない人間の本質を探るには、木村敏さんの言う「あいだ」という捉え方も大事だし、精神疾患の心理的な側面を考えてみることから見えてくることがあるのではないかと思う。
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自己・あいだ・時間 単行本 – 1989/9/1
木村 敏
(著)
- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社弘文堂
- 発売日1989/9/1
- ISBN-104335650388
- ISBN-13978-4335650383
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登録情報
- 出版社 : 弘文堂 (1989/9/1)
- 発売日 : 1989/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 326ページ
- ISBN-10 : 4335650388
- ISBN-13 : 978-4335650383
- Amazon 売れ筋ランキング: - 564,975位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 26,634位医学・薬学・看護学・歯科学
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2020年11月8日に日本でレビュー済み
時間について縷々考えている頃に本書と出会いました。
当方はかつて「常に現在の法理」ということをどこかで読み、
なるほどなあ、と思った記憶がありますが、
半ば諦め気分で「時間など実は存在していないのでは」と思ったこともあります。
そんな折に読んだ本書は実に新鮮に感じられ、何かが分かった気がしました。
即ち、精神病者が病んでいるのは関係性の病理においてであり、
それは自己(本来はひとつ)が時間によって侵食され、切り裂かれているからでは。
そして、時間とは要すれば概念、表象が化体した文字であり、
その積もったものこそが歴史の奔流であるといえましょうか。
だとすれば歴史じたいが狂気の沙汰であり、病んでいることになりはすまいか。
当方はそのように考えていま歴史的自己というものに注目しているわけですが、
歴史的自己がある種の法理を実証せんとして理性的にみずからを描き出そうとする一方、
これもある種の闇がその過程に闖入し、事実関係を隠蔽してしまうことが多々ありますが、
それを当方は「歴史的自己の時間による分断」と呼んでおきたく思います。
いずれにせよ本書は『時間と自己』(中公新書)においても縷々展開されている、
精神病者における時間の哲学的意義ということを繰り返し展開している感じです。
木村氏の基本テーゼからすると時間は精神病者における関係性の病理という断面に最も鋭敏に現象し、
その自己意識のあり方を複雑に規定しています。そうなのです。精神病者は自己自身について、
とても複雑な情報処理をするのです。それは木村流にいえば時間や歴史のなせる業であろうかと。
そうした観点から本書をお読みになってみることをこの際おすすめしておきます。
当方はかつて「常に現在の法理」ということをどこかで読み、
なるほどなあ、と思った記憶がありますが、
半ば諦め気分で「時間など実は存在していないのでは」と思ったこともあります。
そんな折に読んだ本書は実に新鮮に感じられ、何かが分かった気がしました。
即ち、精神病者が病んでいるのは関係性の病理においてであり、
それは自己(本来はひとつ)が時間によって侵食され、切り裂かれているからでは。
そして、時間とは要すれば概念、表象が化体した文字であり、
その積もったものこそが歴史の奔流であるといえましょうか。
だとすれば歴史じたいが狂気の沙汰であり、病んでいることになりはすまいか。
当方はそのように考えていま歴史的自己というものに注目しているわけですが、
歴史的自己がある種の法理を実証せんとして理性的にみずからを描き出そうとする一方、
これもある種の闇がその過程に闖入し、事実関係を隠蔽してしまうことが多々ありますが、
それを当方は「歴史的自己の時間による分断」と呼んでおきたく思います。
いずれにせよ本書は『時間と自己』(中公新書)においても縷々展開されている、
精神病者における時間の哲学的意義ということを繰り返し展開している感じです。
木村氏の基本テーゼからすると時間は精神病者における関係性の病理という断面に最も鋭敏に現象し、
その自己意識のあり方を複雑に規定しています。そうなのです。精神病者は自己自身について、
とても複雑な情報処理をするのです。それは木村流にいえば時間や歴史のなせる業であろうかと。
そうした観点から本書をお読みになってみることをこの際おすすめしておきます。
2009年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
時間と自己を観察し続けた功績はもう少し日本でも評価されても良いのではないか? 最先端物理学でも時間は自己が作り出した創造物で存在しないという学説もあり、難解であるが時間と自己を解明する重要な書籍である。唯物論がそろそろ崩壊し始めている現代においてここまで論理的に説明した書籍は世界にないだろう。この本を読むといかに自己が物質還元主義に汚染されいるかがわかる。東洋思想が量子力学を解明するように「時間とは」「自己とは」も解明されていくことを予感させる。日本人は西洋人に理解できない非常に本質的な問題を解明できる力がある。徹頭徹尾、オカルト的な表現は排除しているが、それが反って、心と時間の密接な関係を示唆しており、超最先端の科学に通じるところがある。
2021年11月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
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