個人的には情報の非対象が存在するところに利益が生まれると思います。しかし、こうした情報の非対称性(スティグリッツ教授の専門)が1)先進国と後進国2)機関投資家と個人投資家3)富裕層とワーキングプアなど大規模に拡大され、しかもフィックスされてしまうと暴力的に解決されるしかなくなり、社会は不安定さを増して、成長も阻害されるというのが、最近のスティグリッツ教授の主張。
グローバリズムに対して、エスタブリッシュメントの側から厳しい批判を行ってきたスティグリッツ教授のこの本は、Roaring Twentiesになぞらえられた原題"Roaring Nineties"の題名通り、90年代に起こったエンロンやワールドコムの破綻について情報を持っている者が、持たざる者を騙したことにつきる、という単純明快なことを解き明かしています。そして、こうした事態がおきるから過度の規制緩和は問題なのであって、政府の果たすべき役割というのはちゃんとある、として《金融部門にたいする適切な規制や競争の促進や環境保護の手を打たず、基本的なセーフティネットを提供しないと、経済は悪化するのである》(p.384)という処方箋を書いています。
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人間が幸福になる経済とは何か 単行本 – 2003/11/25
ジョセフ・E・スティグリッツ
(著),
鈴木 主税
(翻訳)
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- 本の長さ411ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2003/11/25
- ISBN-104198617619
- ISBN-13978-4198617615
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
クリントン政権の経済諮問委員長として経済を立て直した著者。しかし、それは危険極まりないバブルであった。一体どこに間違いがあったのか。ノーベル賞経済学者が、さまざまな利害の衝突に翻弄された90年代を検証する。
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2003/11/25)
- 発売日 : 2003/11/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 411ページ
- ISBN-10 : 4198617619
- ISBN-13 : 978-4198617615
- Amazon 売れ筋ランキング: - 601,774位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 59位アメリカ・カナダ・オーストラリアの経済事情
- - 1,484位金融・ファイナンス (本)
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トップレビュー
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2008年9月9日に日本でレビュー済み
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2004年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本を読んで、自分が日々直観的に感じている事が概ね正しそうだという事が分かりました。
キーメッセージは「政府も市場もいずれも完全ではない。それぞれの限界と役割があり、それらを理解した上でバランスの取れた政治を行う事が肝要である。失業率は 単なる数字ではなく本当に不幸に見舞われている人々が存在する事を忘れてはいけない。完全雇用を実現し、かつインフレを回避する政策は複数存在する。最貧困層を見捨てれば、そのような社会は大きなコストを負担する事になる。集団行動は必要で利己的な野心は個人・国家いずれのレベルでも規制されなければならない」、等 少々難解な感は否めませんが良く分かりました。
また、米国政府が非常に利己的で自国の富裕層の利益しか考えておらず、それを欺瞞で押し隠し、他国の利益になると信じ込ませて破壊的な米国主導のグローバリゼーションを実行してきた事も良く分かりました。
一読の価値 有りと思います。
キーメッセージは「政府も市場もいずれも完全ではない。それぞれの限界と役割があり、それらを理解した上でバランスの取れた政治を行う事が肝要である。失業率は 単なる数字ではなく本当に不幸に見舞われている人々が存在する事を忘れてはいけない。完全雇用を実現し、かつインフレを回避する政策は複数存在する。最貧困層を見捨てれば、そのような社会は大きなコストを負担する事になる。集団行動は必要で利己的な野心は個人・国家いずれのレベルでも規制されなければならない」、等 少々難解な感は否めませんが良く分かりました。
また、米国政府が非常に利己的で自国の富裕層の利益しか考えておらず、それを欺瞞で押し隠し、他国の利益になると信じ込ませて破壊的な米国主導のグローバリゼーションを実行してきた事も良く分かりました。
一読の価値 有りと思います。
2006年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
市場経済が前提としない「個人によって情報や知識に差がある」という当たり前のことを経済学的に証明したことで知られる本格派の経済学者による経済社会批判。
複雑化した企業会計が普通の経営者に不正を働かせる「インセンティブ」となっていることを告発する。衝撃的な前著で明らかにされたアメリカ自身の問題をさらに追究し、不況時にリストラと財政再建を迫るような押し付けられたグローバリズムが悲惨なら、「企業に融資をして事業を拡大させ、雇用を創出させる」本来の役割を担わなくなった銀行、「企業重役は不用心な株主からお金を盗んでいる」(160頁)、「弁護士はつねに金持ちを探す」(177頁)、「誰もが自分の金を奪いにくる者から・・・自分を守ろうと努力して」(226頁)いる社会が如何に悲惨であったかを説く。問題は回復されるべきモラルが、経済の内部の市場そのものにより実現されるのか、市場の外、あるいは経済の外まで含まねば回復されないのか、見極め切れていないことにあるようだ。
複雑化した企業会計が普通の経営者に不正を働かせる「インセンティブ」となっていることを告発する。衝撃的な前著で明らかにされたアメリカ自身の問題をさらに追究し、不況時にリストラと財政再建を迫るような押し付けられたグローバリズムが悲惨なら、「企業に融資をして事業を拡大させ、雇用を創出させる」本来の役割を担わなくなった銀行、「企業重役は不用心な株主からお金を盗んでいる」(160頁)、「弁護士はつねに金持ちを探す」(177頁)、「誰もが自分の金を奪いにくる者から・・・自分を守ろうと努力して」(226頁)いる社会が如何に悲惨であったかを説く。問題は回復されるべきモラルが、経済の内部の市場そのものにより実現されるのか、市場の外、あるいは経済の外まで含まねば回復されないのか、見極め切れていないことにあるようだ。
2006年1月11日に日本でレビュー済み
実は経済のことはよく判らないので、グローバルな視点を持ちたいと思って
手にしたのですが、より混乱してしまいました。
アメリカの経済施策を司る省、機関と企業、裕福層とのパワーポリティクスと
採った政策とその結果が著者の意向とともに並べられています。
私のような経済の不案内人にとっては親切ではないので、読みにくさが
残るかも知れません。
ただし、アメリカのわがままぶりの発揮を知るには良い書だと思います。
更にはこの書から読み取れる部分から導き出される現在の日本が進もうと
している方向の不安点なども素人ながら炙り出すことができると思います。
手にしたのですが、より混乱してしまいました。
アメリカの経済施策を司る省、機関と企業、裕福層とのパワーポリティクスと
採った政策とその結果が著者の意向とともに並べられています。
私のような経済の不案内人にとっては親切ではないので、読みにくさが
残るかも知れません。
ただし、アメリカのわがままぶりの発揮を知るには良い書だと思います。
更にはこの書から読み取れる部分から導き出される現在の日本が進もうと
している方向の不安点なども素人ながら炙り出すことができると思います。
2003年12月4日に日本でレビュー済み
90年代のアメリカは史上稀に見る経済成長を達成し、その要因を巡って様々な神話が存在する。赤字財政の削減の成功による成長率の高まり、グリーンスパンの神業的な金融政策の手腕、ストック・オプションの導入によるインセンティブの刺激。だがこれらは誤れる「神話」に基づいていると喝破。
「赤字財政」の神話とは、クリントンが「財政赤字」の削減に腐心し、成功した。莫大な財政赤字を抱えた国が経済停滞から脱出するには赤字財政の政策が欠かせない、という訳である。だが実際には「削減の成功は1990年代固有の理由によるものだった」。
次に金融政策である。アラン・グリーンスパンの「根拠なき熱狂」は当時の株バブルに冷水を与える効果を持ったーはずだったが、結局彼は何も手立てを打たなかった。彼ーそして周囲もーは自分の「影響力」を過大評価していた。言葉を発するだけで金融政策を司れるーという神話である。
本文のなかで一番辛辣な調子で論じられているのは「カリフォルニアのエネルギーの規制緩和」「銀行規制の緩和によるバブル沸騰」「粉飾決算による会計操作」を扱ったくだりである。(第4章から第7章)
本書は前著と比較するとときおり熱い調子が垣間見れるし、著者も認めるとおり「経済学の範囲を超えて」論じられているテーマもある。しかし一貫しているのは「経済学への誤った理解が生み出す弊害」である過度の規制緩和が進んだのは市場メカニズムへの過度の信頼である。会計の不正操作が起きたのはエンロンや銀行などの情報を持てる者が、情報を持たざる者を騙そうとすることから起きる。
こうした不均衡を是正するために、「イデオロギーに基づく政策ではなく、市場と政府の役割をバランスを重視する政策が経済成長と効率を促進する」ので、「政府と市場とのバランスの取れた役割を基盤とする新たなビジョン」を実現するために戦わねばならないと強調する。
「赤字財政」の神話とは、クリントンが「財政赤字」の削減に腐心し、成功した。莫大な財政赤字を抱えた国が経済停滞から脱出するには赤字財政の政策が欠かせない、という訳である。だが実際には「削減の成功は1990年代固有の理由によるものだった」。
次に金融政策である。アラン・グリーンスパンの「根拠なき熱狂」は当時の株バブルに冷水を与える効果を持ったーはずだったが、結局彼は何も手立てを打たなかった。彼ーそして周囲もーは自分の「影響力」を過大評価していた。言葉を発するだけで金融政策を司れるーという神話である。
本文のなかで一番辛辣な調子で論じられているのは「カリフォルニアのエネルギーの規制緩和」「銀行規制の緩和によるバブル沸騰」「粉飾決算による会計操作」を扱ったくだりである。(第4章から第7章)
本書は前著と比較するとときおり熱い調子が垣間見れるし、著者も認めるとおり「経済学の範囲を超えて」論じられているテーマもある。しかし一貫しているのは「経済学への誤った理解が生み出す弊害」である過度の規制緩和が進んだのは市場メカニズムへの過度の信頼である。会計の不正操作が起きたのはエンロンや銀行などの情報を持てる者が、情報を持たざる者を騙そうとすることから起きる。
こうした不均衡を是正するために、「イデオロギーに基づく政策ではなく、市場と政府の役割をバランスを重視する政策が経済成長と効率を促進する」ので、「政府と市場とのバランスの取れた役割を基盤とする新たなビジョン」を実現するために戦わねばならないと強調する。
2003年12月1日に日本でレビュー済み
今年2003年9月11日(同時多発テロのちょうど2年後)、WTOの閣僚会議が開かれているメキシコで、ひとりの韓国人農民が抗議の自殺をした。現在、世界で進行中のグローバリゼーションはアメリカ型のシステムを世界標準として導入しようとする試みであり、WTOは、IMF、世界銀行と並んでその強力な推進者である。その歪みがさまざまな場所で噴出している。
前著「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」において、世界経済の安定と発展途上国の援助を使命とするWTO、IMF、世界銀行がいかに歪んだ信念に基づいて行動しているか、その援助プログラムを受け入れた各国がいかに悲惨な状況に追い込まれたのかを描いたスティグリッツは、本書ではアメリカ経済政策の欺瞞を徹底的に暴くことによって、経済政策のあるべき姿を提案している。
外に対しては徹底的な市場の自由化・資本の自由化を押し付けながら、内に対してはウォール街の意向に従った金融至上主義的政策をとってきたアメリカ。その傾向は現ブッシュ政権においてより顕著になり、対外政策、対内政策が密接に絡み合いながら、アメリカ一国主義が推し進められている。
「経済とは何か」、「真のグローバリズムとは何か」。本書には現代を生きるすべての人が耳を傾けるべき真摯な言葉がぎっしり詰まっている。
前著「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」において、世界経済の安定と発展途上国の援助を使命とするWTO、IMF、世界銀行がいかに歪んだ信念に基づいて行動しているか、その援助プログラムを受け入れた各国がいかに悲惨な状況に追い込まれたのかを描いたスティグリッツは、本書ではアメリカ経済政策の欺瞞を徹底的に暴くことによって、経済政策のあるべき姿を提案している。
外に対しては徹底的な市場の自由化・資本の自由化を押し付けながら、内に対してはウォール街の意向に従った金融至上主義的政策をとってきたアメリカ。その傾向は現ブッシュ政権においてより顕著になり、対外政策、対内政策が密接に絡み合いながら、アメリカ一国主義が推し進められている。
「経済とは何か」、「真のグローバリズムとは何か」。本書には現代を生きるすべての人が耳を傾けるべき真摯な言葉がぎっしり詰まっている。