「五感を意識して、この本を味わってみよう」
そう、心を決めるまでは、なかなか読めない本だった。料理人でも、ソムリエでもない、一介の主婦である私が、この美食の世界に入り込んでもいいものか。場違いな感じがして、一読目は、砂を噛んでいるような読み心地だった。
二読目、緊張がほぐれ、井上シェフの料理人生のシーンを、ページごとに読み込み、想像できるようになった。三読目、文字から、料理の香りや色、登場人物の心が浮き立ってきた。
そうして、やっと「自分ごと」として、この本と向き合えるようになった。もっと、自分の感覚をフルに生かして読み、自身の心身の栄養にしたいと食指が動きはじめた。東京京橋にある「グラン・メゾンに入館」するには、それなりの気構えと勉強が必要である。実際に体験する前に、こうやって、井上シェフのご経験と精神を、前もって読み味わうことができる「本」って、やっぱりいいなぁと思う。
ではどのように、各感覚にエッジを利かせ、読み進めていったのかお伝えしたい。
ーーーーー
1.視覚
>>P23.なぜルセットの「記録」よりも、映像の「記憶」を優先したのか
私は「ライフログ」という、日常で琴線に触れた物事を記録する習慣に、取り組んでいる。デジタル機器が発達した現代であれば、スマホ一つで、写真も音声もメモも、あらゆることをワンタッチで記録できる。しかし、井上シェフの「記憶を優先」という言葉に、ハッとした。新たな創造をする際には、記憶を元に、タクトを自ら振りデータを三次元化する必要がある。動作に満足せずに、本質を掴まねば…と目が覚めた。
2.味覚
>>P61.味覚の方程式
身体に味覚の方程式を染み込ませる。その絶対軸を元に、相手方(素材、お客様、気候etc.)を把握しながら、一つの答えを導く。これは、コミュニケーション全般に汎用できる万能調味料のような、おいしい式だと感じた。
3.聴覚
>>P41.とっさに私は、日本で鍛えてきた日本拳法仕込みの足技で、相手の手を蹴り上げたのです
「びゅん!」と空を切る井上シェフの気合が、聴こえてきそうなシーン。理不尽な扱いに対して、自分で自分の環境を変える。そんな「凛とした志」を際立たせる音に、勇気を貰った。
4.触覚
>>P53.自らの知識を豊かにし、その芸術を高めるという共通の目的に向かって共に進む料理人にとって、料理に国境はない
山脈や海によって隔てられた各国が、米や魚や肉、果実といった様々な食材の育成・活用によって、そのラインを無くす。そんなイメージが、各食材の、トゲトゲ、つるつる、ふんわりetc.といった触覚と共に、思い浮かんだ。先日、デンマークの天才料理人レネのドキュメンタリー映画「noma」を鑑賞したからかもしれない(実に美しい自然と食材が克明に描かれていた)。井上シェフとレネシェフ。時と国を超えて、共通するスピリッツをお持ちだと、お見受けした。
5.嗅覚
>>P196. 舞踊と料理_、彼女は間違いなく私の料理の味覚、コク、そして余韻を楽しんでくださって
「武原はん」という人物を、この本を読むまで全く知らなかった。料理の求道者である井上シェフが、心惹かれる人物とは、どんな方だろうと、YouTubeで拝見。たしかに無駄を削ぎ落とした美が、そこにはあった。その芳しき色香に観入り、私も、これから人生の女性美を、深く追い求め楽しみたいと思った。
ーーーーー
以上、私の五感を、鋭く深く進化させてくれたこの本に、感謝申し上げたい。その中でも、一番好きだったフレーズは
>>P196.「考えてみれば、人生は無駄だらけです」
この読書体験が、また、待ちに待った2016.7.23のシェ・イノでの初めての実食体験が、今後の私の人生に、どう影響を与えるか今はまだわからない。ただ一つ、おぼろげに期待していることがある。井上シェフとの出会いで、私の未来は、五感を研ぎ澄ませながら、おいしく変化していくのだろう。
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フレンチの王道 シェ・イノの流儀 (文春新書) 新書 – 2016/6/20
栄枯盛衰の激しい飲食業界。その中で、50年間、半世紀にわたり頑固に味を守り続け、各界の大物に愛されてきた一人のシェフがいる。井上旭。京橋のフレンチの名店、「シェ・イノ」のオーナーシェフである。
まだ日本人がフランス料理を知らなかったころ、井上は単身フランスに渡り、72年に現金5000円を握りしめて帰国。そこから物語は始まった。
この移り気な時代に、なぜ、「シェ・イノ」だけが特別なのか? 舌の肥えた客を惹きつけ続ける「超一流」の秘密を、巨匠が初めて明かす──。
時代の流れが加速し、一年前の流行ですら時代遅れだと見向きもされず、効率化ばかりが優先される社会。本場フランスでもそれは例外ではなく、時に業者からの取り寄せのフォンで間に合わせるということも多々ある。
そんな中、ソースの神様、ジャン・トロワグロから伝授された味を井上は今日も守り続ける。ルセット(レシピ)は文字では覚えられない。映像で記憶するのだ。
そして、絶対音感があるように「絶対味覚」があると井上は語る。
パリではチャップリンやオナシス、サンローランが愛した「マキシム」で腕をふるった。一流の客との出会いが「味」につながっていると語る井上の秘密に、佐村河内報道で知られる神山典士が挑んだ意欲作。
経営者や飲食業者だけでなく、すべての働く者や、一つの道を志すものへのヒントが詰まった珠玉の一冊。
まだ日本人がフランス料理を知らなかったころ、井上は単身フランスに渡り、72年に現金5000円を握りしめて帰国。そこから物語は始まった。
この移り気な時代に、なぜ、「シェ・イノ」だけが特別なのか? 舌の肥えた客を惹きつけ続ける「超一流」の秘密を、巨匠が初めて明かす──。
時代の流れが加速し、一年前の流行ですら時代遅れだと見向きもされず、効率化ばかりが優先される社会。本場フランスでもそれは例外ではなく、時に業者からの取り寄せのフォンで間に合わせるということも多々ある。
そんな中、ソースの神様、ジャン・トロワグロから伝授された味を井上は今日も守り続ける。ルセット(レシピ)は文字では覚えられない。映像で記憶するのだ。
そして、絶対音感があるように「絶対味覚」があると井上は語る。
パリではチャップリンやオナシス、サンローランが愛した「マキシム」で腕をふるった。一流の客との出会いが「味」につながっていると語る井上の秘密に、佐村河内報道で知られる神山典士が挑んだ意欲作。
経営者や飲食業者だけでなく、すべての働く者や、一つの道を志すものへのヒントが詰まった珠玉の一冊。
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2016/6/20
- ISBN-104166610821
- ISBN-13978-4166610822
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商品の説明
著者について
井上旭(いのうえ のぼる)
1945年 鳥取県に生まれる。21歳で渡欧。スイス、ドイツ、ベルーを経て、フランスの三ツ星レストラン トロワグロ、パリのマキシムで修業する。1972年に帰国。31歳で銀座レカンの料理長として腕をふるう。1979年に京橋ドゥ・ロアンヌを開店。1984年に京橋にオーナーシェフとしてシェ・イノを開店。
神山典士(聞き手)
ノンフィクション作家。「全聾の作曲家はペテン師だった! 」で第45回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
1945年 鳥取県に生まれる。21歳で渡欧。スイス、ドイツ、ベルーを経て、フランスの三ツ星レストラン トロワグロ、パリのマキシムで修業する。1972年に帰国。31歳で銀座レカンの料理長として腕をふるう。1979年に京橋ドゥ・ロアンヌを開店。1984年に京橋にオーナーシェフとしてシェ・イノを開店。
神山典士(聞き手)
ノンフィクション作家。「全聾の作曲家はペテン師だった! 」で第45回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2016/6/20)
- 発売日 : 2016/6/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 232ページ
- ISBN-10 : 4166610821
- ISBN-13 : 978-4166610822
- Amazon 売れ筋ランキング: - 515,759位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 953位フランス料理
- - 1,066位文春新書
- - 88,167位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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イメージ付きのレビュー
5 星
五感鋭く未来を味わう一冊
「五感を意識して、この本を味わってみよう」そう、心を決めるまでは、なかなか読めない本だった。料理人でも、ソムリエでもない、一介の主婦である私が、この美食の世界に入り込んでもいいものか。場違いな感じがして、一読目は、砂を噛んでいるような読み心地だった。二読目、緊張がほぐれ、井上シェフの料理人生のシーンを、ページごとに読み込み、想像できるようになった。三読目、文字から、料理の香りや色、登場人物の心が浮き立ってきた。そうして、やっと「自分ごと」として、この本と向き合えるようになった。もっと、自分の感覚をフルに生かして読み、自身の心身の栄養にしたいと食指が動きはじめた。東京京橋にある「グラン・メゾンに入館」するには、それなりの気構えと勉強が必要である。実際に体験する前に、こうやって、井上シェフのご経験と精神を、前もって読み味わうことができる「本」って、やっぱりいいなぁと思う。ではどのように、各感覚にエッジを利かせ、読み進めていったのかお伝えしたい。ーーーーー1.視覚>>P23.なぜルセットの「記録」よりも、映像の「記憶」を優先したのか私は「ライフログ」という、日常で琴線に触れた物事を記録する習慣に、取り組んでいる。デジタル機器が発達した現代であれば、スマホ一つで、写真も音声もメモも、あらゆることをワンタッチで記録できる。しかし、井上シェフの「記憶を優先」という言葉に、ハッとした。新たな創造をする際には、記憶を元に、タクトを自ら振りデータを三次元化する必要がある。動作に満足せずに、本質を掴まねば…と目が覚めた。2.味覚>>P61.味覚の方程式身体に味覚の方程式を染み込ませる。その絶対軸を元に、相手方(素材、お客様、気候etc.)を把握しながら、一つの答えを導く。これは、コミュニケーション全般に汎用できる万能調味料のような、おいしい式だと感じた。3.聴覚>>P41.とっさに私は、日本で鍛えてきた日本拳法仕込みの足技で、相手の手を蹴り上げたのです「びゅん!」と空を切る井上シェフの気合が、聴こえてきそうなシーン。理不尽な扱いに対して、自分で自分の環境を変える。そんな「凛とした志」を際立たせる音に、勇気を貰った。4.触覚>>P53.自らの知識を豊かにし、その芸術を高めるという共通の目的に向かって共に進む料理人にとって、料理に国境はない山脈や海によって隔てられた各国が、米や魚や肉、果実といった様々な食材の育成・活用によって、そのラインを無くす。そんなイメージが、各食材の、トゲトゲ、つるつる、ふんわりetc.といった触覚と共に、思い浮かんだ。先日、デンマークの天才料理人レネのドキュメンタリー映画「noma」を鑑賞したからかもしれない(実に美しい自然と食材が克明に描かれていた)。井上シェフとレネシェフ。時と国を超えて、共通するスピリッツをお持ちだと、お見受けした。5.嗅覚>>P196. 舞踊と料理_、彼女は間違いなく私の料理の味覚、コク、そして余韻を楽しんでくださって「武原はん」という人物を、この本を読むまで全く知らなかった。料理の求道者である井上シェフが、心惹かれる人物とは、どんな方だろうと、YouTubeで拝見。たしかに無駄を削ぎ落とした美が、そこにはあった。その芳しき色香に観入り、私も、これから人生の女性美を、深く追い求め楽しみたいと思った。ーーーーー以上、私の五感を、鋭く深く進化させてくれたこの本に、感謝申し上げたい。その中でも、一番好きだったフレーズは>>P196.「考えてみれば、人生は無駄だらけです」この読書体験が、また、待ちに待った2016.7.23のシェ・イノでの初めての実食体験が、今後の私の人生に、どう影響を与えるか今はまだわからない。ただ一つ、おぼろげに期待していることがある。井上シェフとの出会いで、私の未来は、五感を研ぎ澄ませながら、おいしく変化していくのだろう。
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2016年7月20日に日本でレビュー済み
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「五感を意識して、この本を味わってみよう」
そう、心を決めるまでは、なかなか読めない本だった。料理人でも、ソムリエでもない、一介の主婦である私が、この美食の世界に入り込んでもいいものか。場違いな感じがして、一読目は、砂を噛んでいるような読み心地だった。
二読目、緊張がほぐれ、井上シェフの料理人生のシーンを、ページごとに読み込み、想像できるようになった。三読目、文字から、料理の香りや色、登場人物の心が浮き立ってきた。
そうして、やっと「自分ごと」として、この本と向き合えるようになった。もっと、自分の感覚をフルに生かして読み、自身の心身の栄養にしたいと食指が動きはじめた。東京京橋にある「グラン・メゾンに入館」するには、それなりの気構えと勉強が必要である。実際に体験する前に、こうやって、井上シェフのご経験と精神を、前もって読み味わうことができる「本」って、やっぱりいいなぁと思う。
ではどのように、各感覚にエッジを利かせ、読み進めていったのかお伝えしたい。
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1.視覚
>>P23.なぜルセットの「記録」よりも、映像の「記憶」を優先したのか
私は「ライフログ」という、日常で琴線に触れた物事を記録する習慣に、取り組んでいる。デジタル機器が発達した現代であれば、スマホ一つで、写真も音声もメモも、あらゆることをワンタッチで記録できる。しかし、井上シェフの「記憶を優先」という言葉に、ハッとした。新たな創造をする際には、記憶を元に、タクトを自ら振りデータを三次元化する必要がある。動作に満足せずに、本質を掴まねば…と目が覚めた。
2.味覚
>>P61.味覚の方程式
身体に味覚の方程式を染み込ませる。その絶対軸を元に、相手方(素材、お客様、気候etc.)を把握しながら、一つの答えを導く。これは、コミュニケーション全般に汎用できる万能調味料のような、おいしい式だと感じた。
3.聴覚
>>P41.とっさに私は、日本で鍛えてきた日本拳法仕込みの足技で、相手の手を蹴り上げたのです
「びゅん!」と空を切る井上シェフの気合が、聴こえてきそうなシーン。理不尽な扱いに対して、自分で自分の環境を変える。そんな「凛とした志」を際立たせる音に、勇気を貰った。
4.触覚
>>P53.自らの知識を豊かにし、その芸術を高めるという共通の目的に向かって共に進む料理人にとって、料理に国境はない
山脈や海によって隔てられた各国が、米や魚や肉、果実といった様々な食材の育成・活用によって、そのラインを無くす。そんなイメージが、各食材の、トゲトゲ、つるつる、ふんわりetc.といった触覚と共に、思い浮かんだ。先日、デンマークの天才料理人レネのドキュメンタリー映画「noma」を鑑賞したからかもしれない(実に美しい自然と食材が克明に描かれていた)。井上シェフとレネシェフ。時と国を超えて、共通するスピリッツをお持ちだと、お見受けした。
5.嗅覚
>>P196. 舞踊と料理_、彼女は間違いなく私の料理の味覚、コク、そして余韻を楽しんでくださって
「武原はん」という人物を、この本を読むまで全く知らなかった。料理の求道者である井上シェフが、心惹かれる人物とは、どんな方だろうと、YouTubeで拝見。たしかに無駄を削ぎ落とした美が、そこにはあった。その芳しき色香に観入り、私も、これから人生の女性美を、深く追い求め楽しみたいと思った。
ーーーーー
以上、私の五感を、鋭く深く進化させてくれたこの本に、感謝申し上げたい。その中でも、一番好きだったフレーズは
>>P196.「考えてみれば、人生は無駄だらけです」
この読書体験が、また、待ちに待った2016.7.23のシェ・イノでの初めての実食体験が、今後の私の人生に、どう影響を与えるか今はまだわからない。ただ一つ、おぼろげに期待していることがある。井上シェフとの出会いで、私の未来は、五感を研ぎ澄ませながら、おいしく変化していくのだろう。
そう、心を決めるまでは、なかなか読めない本だった。料理人でも、ソムリエでもない、一介の主婦である私が、この美食の世界に入り込んでもいいものか。場違いな感じがして、一読目は、砂を噛んでいるような読み心地だった。
二読目、緊張がほぐれ、井上シェフの料理人生のシーンを、ページごとに読み込み、想像できるようになった。三読目、文字から、料理の香りや色、登場人物の心が浮き立ってきた。
そうして、やっと「自分ごと」として、この本と向き合えるようになった。もっと、自分の感覚をフルに生かして読み、自身の心身の栄養にしたいと食指が動きはじめた。東京京橋にある「グラン・メゾンに入館」するには、それなりの気構えと勉強が必要である。実際に体験する前に、こうやって、井上シェフのご経験と精神を、前もって読み味わうことができる「本」って、やっぱりいいなぁと思う。
ではどのように、各感覚にエッジを利かせ、読み進めていったのかお伝えしたい。
ーーーーー
1.視覚
>>P23.なぜルセットの「記録」よりも、映像の「記憶」を優先したのか
私は「ライフログ」という、日常で琴線に触れた物事を記録する習慣に、取り組んでいる。デジタル機器が発達した現代であれば、スマホ一つで、写真も音声もメモも、あらゆることをワンタッチで記録できる。しかし、井上シェフの「記憶を優先」という言葉に、ハッとした。新たな創造をする際には、記憶を元に、タクトを自ら振りデータを三次元化する必要がある。動作に満足せずに、本質を掴まねば…と目が覚めた。
2.味覚
>>P61.味覚の方程式
身体に味覚の方程式を染み込ませる。その絶対軸を元に、相手方(素材、お客様、気候etc.)を把握しながら、一つの答えを導く。これは、コミュニケーション全般に汎用できる万能調味料のような、おいしい式だと感じた。
3.聴覚
>>P41.とっさに私は、日本で鍛えてきた日本拳法仕込みの足技で、相手の手を蹴り上げたのです
「びゅん!」と空を切る井上シェフの気合が、聴こえてきそうなシーン。理不尽な扱いに対して、自分で自分の環境を変える。そんな「凛とした志」を際立たせる音に、勇気を貰った。
4.触覚
>>P53.自らの知識を豊かにし、その芸術を高めるという共通の目的に向かって共に進む料理人にとって、料理に国境はない
山脈や海によって隔てられた各国が、米や魚や肉、果実といった様々な食材の育成・活用によって、そのラインを無くす。そんなイメージが、各食材の、トゲトゲ、つるつる、ふんわりetc.といった触覚と共に、思い浮かんだ。先日、デンマークの天才料理人レネのドキュメンタリー映画「noma」を鑑賞したからかもしれない(実に美しい自然と食材が克明に描かれていた)。井上シェフとレネシェフ。時と国を超えて、共通するスピリッツをお持ちだと、お見受けした。
5.嗅覚
>>P196. 舞踊と料理_、彼女は間違いなく私の料理の味覚、コク、そして余韻を楽しんでくださって
「武原はん」という人物を、この本を読むまで全く知らなかった。料理の求道者である井上シェフが、心惹かれる人物とは、どんな方だろうと、YouTubeで拝見。たしかに無駄を削ぎ落とした美が、そこにはあった。その芳しき色香に観入り、私も、これから人生の女性美を、深く追い求め楽しみたいと思った。
ーーーーー
以上、私の五感を、鋭く深く進化させてくれたこの本に、感謝申し上げたい。その中でも、一番好きだったフレーズは
>>P196.「考えてみれば、人生は無駄だらけです」
この読書体験が、また、待ちに待った2016.7.23のシェ・イノでの初めての実食体験が、今後の私の人生に、どう影響を与えるか今はまだわからない。ただ一つ、おぼろげに期待していることがある。井上シェフとの出会いで、私の未来は、五感を研ぎ澄ませながら、おいしく変化していくのだろう。
このレビューの画像
2016年6月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
見本が刷り上がってきて、シェフに読ませていただきました。
憧れのレストラン「シェイノ」。ある友人がこんなことを教えてくれました。
「以前著名な作家のW先生を接待したとき、局長編集長以下緊張して席に着くと、W先生と井上シェフが親しげに話しを始めて、
全てのメニューをW先生が決めてくださった。ワインも含めて。局長編集長私たちはただ運ばれてきた料理を食べ、ワインを控えめに飲んだだけ。
ものすごく美味しかったけれど、あとで局長がいくら払ったのかは定かではない。先生は至極満足されていたけれど、、、、」
いや~痺れるレストランです。その裏側の物語もこんなに豊穣だとは。
思わずお腹がなります。舌平目のアルベールソース、食べたい~。
憧れのレストラン「シェイノ」。ある友人がこんなことを教えてくれました。
「以前著名な作家のW先生を接待したとき、局長編集長以下緊張して席に着くと、W先生と井上シェフが親しげに話しを始めて、
全てのメニューをW先生が決めてくださった。ワインも含めて。局長編集長私たちはただ運ばれてきた料理を食べ、ワインを控えめに飲んだだけ。
ものすごく美味しかったけれど、あとで局長がいくら払ったのかは定かではない。先生は至極満足されていたけれど、、、、」
いや~痺れるレストランです。その裏側の物語もこんなに豊穣だとは。
思わずお腹がなります。舌平目のアルベールソース、食べたい~。
2016年7月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
井上シェフのフレンチに対する考え方がよくわかる。登場する料理も、香りが感じられるような書き方で、よだれがでそう。フレンチのあり方はもちろん、おもてなしの心、職人(プロ)としてのこだわりなどは、どこの世界でも通じるものがあると思う。フレンチに、シェ・イノに行ってみたくなる一冊。
2016年8月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本を代表するフランス料理のグラン・メゾンの一つ、シェ・イノのオーナーシェフ井上旭さんの自伝。日本にどうやってフランス料理が根付いたか、シェフたちの修行物語など、とても興味深いものだった。フランス料理の歴史も学べて一石二鳥。聞き手の神山さんの解説もわかりやすい。読んでためになり、シェ・イノに行きたくなる本。