2014年、理学博士・生物学者、山根明弘氏の著書です。
山根氏は、90年代に福岡県・相の島にて、7年近くノラネコ調査を行った学者です。
本書は、調査でのエピソードを交えながら、
ネコについて、そして「ネコの生き方」について解説していきます。
白眉は、著者の研究成果である
”産まれてきた仔ねこをDNA鑑定したら・・・”という部分になりますが、
私の場合、時間が経つにつれ、以下のベーシックな内容について振り返ることが多いです。
【ネコについて】
・ 飼い猫もノラネコも、同じ種”イエネコ”（学名：Felis catus）である。
・ ネコの発情は、通常1月初め ~ 3月末（2月がピーク）の年1回。
その時に失敗した一部のメスは、５月頃にもう１度発情。
・ 一回の出産で産まれる仔ねこの数は3~6匹。（多いケースで20匹以上）
【飼い猫について】
・ 平均寿命は15年。
・ 高タンパク・高カロリーのキャットフードを毎日食べているので年中発情。
不妊・去勢をせずにいると、年に何度も出産し、ネズミ算式に増加。
【ノラネコについて】
・ 平均寿命は、一般に3~5年。 飼い猫の1/3程度。
（赤ちゃん猫・仔猫のうちに死んだノラネコは、計算に入っていないと推測）
・ 発情は、一般的には上記【ネコについて】の通り。
ただし、飼い猫同様に毎日餌やりをする場合は、上記【飼い猫について】の通り。
・ 赤ちゃん猫が１歳まで生き残る可能性は、20%前後。
これらから分かると思いますが、いわゆる「ネズミ算式に～」という話は、
”飼い猫・ノラネコ問わず、不妊・去勢されていないネコに、
毎日、栄養満点のキャットフードを与えた場合”になります。
なお、地域猫活動というのは、
同じ地域の中で、人間とねこが平和に「共存」できるのを目的とするものであって、
ノラネコ・ゼロといった「排除」を目的とするものではありません。
ちなみに、ネコは状況に応じて柔軟に対応する力があり、
ノラネコは地域住民の写し鏡と言えます。
ノラネコが人から怯えて逃げ回る地域と、ノラネコが塀の上でのほほんとしている地域。
みなさんは、どちらの地域に住みたいですか？
全国各地でノラネコが激減しているそうですが、
一度落ち着いて、しばらくネコを観察してみてはどうでしょう？
ノラネコの糞尿にしても、まともに働いたことのある人なら、
「ええがな、ええがな。お前も大変やな」ってなると思いますけどね。
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イメージ付きのレビュー
ネコになりたい。
ネコっていいねえ。家畜ではあるけどイヌみたく鎖につながれたり、ブタみたく狭い囲いに閉じ込められたりすることもない。自由気まま、人と対等の関係。そんな家畜ってネコだけでしょう。いつもは昼寝をしていて気の向いた時だけ活動する。まさに理想的な生活である。ネコはいい。私もネコになりたい。その魅力的で知られざるネコの生態をはじめて解き明かしたのが本書である。発行は2015年の９月。本書によれば、ヒトとネコとの付き合いは農耕の歴史と等しいらしい。ヒトが農耕を始め穀物を貯えるようになると、それを狙ってネズミが増える。そこにどこからか現れたのが倉庫のネズミを狙うリビア・ネコだった。こうしてリビア・ヤマネコとヒトとの利害は完全に一致。対等な関係でリビア・ヤマネコはイエネコとしてヒトと共生することになった。このヒトとの対等な関係は基本的に今も変わっていない。私は残念ながら父が大のネコ嫌いであったためか、イヌとは長く付き合ったがまだ一度もネコを飼ったことがない。それだけにネコの生活にあこがれてしまうのである。
