イラン・イスラム共和国に関する本には色々な種類があるが、概して学者が書く本は理論に傾きすぎて、「シーア派」の教義やら「ペルシア人」の歴史やらといった方向に行ってしまい、実際の所、現在のイランという国がどういう国で、どんな人々がどんな考え方で暮らしているのかという、当たり前のことが実は全然伝わらない、ということが多い。
そんな中で、本書は特段「イラン」にも「シーア派」にも「ペルシア人」にも興味が無かった新聞記者が、イラン支局に滞在することになって、何の前知識もなしに「イラン」と「イラン人」に触れてみたルポという面白い構成を取っている。
イランというと、とにかく「過激なイスラム教国」のように思われがちだが、実際にはイラン人がイランの外に出ると、派手に羽を伸ばすというのは、昔から知っている人は知っている話だったりする。
そんなことも含めてイランの「政治」「経済」「国民性」といったことに、前知識が無いが故に単純に実際に触れて見たことを記録した本書は、良書と言って良いと思う。
もちろん、ある意味で一人の人が見た「イラン」という国、という主観が拭えないことは否めないが、無理に客観化しようとして現実味のなくなる話になるよりは、主観も含めて、「イラン」という国を、ある意味、面白がりながら見つめた人だから、書けた本だろう。
興味のある人にはお勧めの良本である。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
イランはこれからどうなるのか: 「イスラム大国」の真実 (新潮新書 384) 新書 – 2010/9/1
春日 孝之
(著)
今、イランから目が離せない。核開発、大統領選開票不正疑惑、欧米やイスラエルに対する過激発言など、中東発のニュースを独占している。その非妥協的精神と高いプライドゆえ、国際社会から孤立しつつも、再建途上のイラクやアフガンを尻目にその存在感は高まるばかり。しかし、いまだこの国の実像は不透明なヴェールに包まれている。核開発の本当の理由、ペルシャ民族主義とその野望、アラブへの嫉妬と憎悪、アメリカへの秘めた想いなど、特派員としての取材経験をもとに「中東の大国」の本音に迫る。
- 本の長さ239ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2010/9/1
- ISBN-104106103842
- ISBN-13978-4106103841
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
一九六一年生まれ。毎日新聞外信部編集委員。ニューデリー、イスラマバード支局などを経て〇九年十月までの四年間、テヘラン特派員。イラン報道がボーン・上田記念国際記者賞最終候補。著書に『アフガニスタンから世界を見る』(日本エッセイスト・クラブ賞最終候補)。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2010/9/1)
- 発売日 : 2010/9/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 239ページ
- ISBN-10 : 4106103842
- ISBN-13 : 978-4106103841
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,059,084位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年1月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イランについて、興味があり、購入したが、他にも読まなければならない本がいっぱいあり、まだ読んでいません。
2010年10月30日に日本でレビュー済み
私にとって、イランは、(a) 核兵器開発疑惑がある、(b) 大統領がしばしば過激な発言をする、(c) ブッシュ前米大統領が「悪の枢軸」と言っていた、(d) イスラム政権のミステリアスな国、という感じで、何かと問題のある不思議な国のイメージがありました。
本書は、そのイランに2005年11月から2009年12月まで毎日新聞テヘラン支局長として赴任していた著者によって書かれた本です。おおむねイランという国やイランの人々を好意的な視点から記述しています。
本書には、次のようなやや意外なイランの姿が書かれています。
(a) 厳格なイスラムの国というイメージとはうらはらに、夜には頻繁にアルコールもあるパーティが開かれて皆楽しんでいる。
(b) イスラム革命当時は尊敬を集めたイスラム聖職者であるが、本来の厳格さを失う者もでている。そのため、民衆は聖職者を尊敬しなくなり、聖職者の政治面で果たす役割も小さくなりつつなる。
(c) イラン人は自らをヨーロッパ人と同じ「白人」と認識しており、イラン人のほうがアラブ人より優れていると考えている。アラブ人が多い中東にあって、イランは孤立した立場にあり、孤立しているという面ではイスラエルと似た境遇にある。
(d) イラン人はアメリカにシンパシーを持っている。最近は革命当時のような激しいアメリカ批判は少なくなり、むしろアメリカとの関係修復を望んでいる、
このほかにもイランのさまざまな側面が記述されています。いずれも、現地で暮らしてみなければわからないイランの素顔であり、とても興味深い本と思います。
さまざまな面をもつイランのこと。本書に書かれていることが100%当たっているかどうかわかりませんが、報道等ではイランに関してマイナス面ばかり伝えられる中で、新たな視点を提供してくれる貴重な本と思います。
本書は、そのイランに2005年11月から2009年12月まで毎日新聞テヘラン支局長として赴任していた著者によって書かれた本です。おおむねイランという国やイランの人々を好意的な視点から記述しています。
本書には、次のようなやや意外なイランの姿が書かれています。
(a) 厳格なイスラムの国というイメージとはうらはらに、夜には頻繁にアルコールもあるパーティが開かれて皆楽しんでいる。
(b) イスラム革命当時は尊敬を集めたイスラム聖職者であるが、本来の厳格さを失う者もでている。そのため、民衆は聖職者を尊敬しなくなり、聖職者の政治面で果たす役割も小さくなりつつなる。
(c) イラン人は自らをヨーロッパ人と同じ「白人」と認識しており、イラン人のほうがアラブ人より優れていると考えている。アラブ人が多い中東にあって、イランは孤立した立場にあり、孤立しているという面ではイスラエルと似た境遇にある。
(d) イラン人はアメリカにシンパシーを持っている。最近は革命当時のような激しいアメリカ批判は少なくなり、むしろアメリカとの関係修復を望んでいる、
このほかにもイランのさまざまな側面が記述されています。いずれも、現地で暮らしてみなければわからないイランの素顔であり、とても興味深い本と思います。
さまざまな面をもつイランのこと。本書に書かれていることが100%当たっているかどうかわかりませんが、報道等ではイランに関してマイナス面ばかり伝えられる中で、新たな視点を提供してくれる貴重な本と思います。
2017年4月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イランに旅行に行くにあたって、予備知識を仕入れるために読みました。
堅苦しい本かと思いきや、いろんな情報を仕入れることができてたいへん役立ちました。
日本では米国の影響のためか、イランというと「悪の中枢」みたいな考え方をしている人も多いので、
そういう人たちにも客観的な情報を示せる良書だと思います。
堅苦しい本かと思いきや、いろんな情報を仕入れることができてたいへん役立ちました。
日本では米国の影響のためか、イランというと「悪の中枢」みたいな考え方をしている人も多いので、
そういう人たちにも客観的な情報を示せる良書だと思います。
2011年2月27日に日本でレビュー済み
著者は、2005年にテヘラン特派員を命じられた時、アラブとイランの見分けもつかない程度の認識だったそうである。インドとパキスタンに駐在していたジャーナリストとしてはいかがとは思うが、それが功を奏してか、先入観の無いイラン経験を得ることになり、一般に流通している情報と実際の体験のギャップを軸にアフマディネジャド期4年間の滞在経験から現在のイランの本質に切り込もうとしている。
かくいう私は、これまで結構な量のイラン本を読んでおり、日々在イラン日本人のブログを読み、イランも旅行し、イラン料理店の店主などから情報を得ているので、今ではアマゾンのリコメンデーションにイラン関連本が上がってこなくなっており、本書には「今更何か得るところがあるだろうか」と思ったものの、目次にある「アメリカ悪行博物館」に興味をそそられ読んでしまった。アメリカ悪行博物館は、ソウルにある「西大門刑務所歴史館」や中国の「南京大虐殺博物館」のような感情的誇張溢れる内容か、または、世界各地の政権転覆などに関与してきた米国悪行履歴かと思っていたら、意外に普通に革命前までの大使館とその機密資料(しかしその内容はイランにとっては悪辣な政策企画・指令が記載してあるものなのだが)を保存してあるだけで拍子抜けだった。
本書でも記載されているが、イラン人はアラブ人と一緒にされるのは最大の侮辱とされる程「自分たちは白人」だと考える人は多く、欧米文化に惹かれている。この辺の事情は イラン人は神の国イランをどう考えているか でよく看取できるところだし、映画などはかなりハリウッド的なものも多い(イラン旅行時に見たイラク戦争映画は、最初「ランボー」かと思う様な戦争活劇だった)。「アフマディネジャドは初の非聖職者大統領」という事や、今ではすっかり秘密警察に抑圧されている感のある社会も、同大統領2期になってからの話で、一期は寧ろ風紀開放は進んでいた、など本書をを読んで思い出したことも多々あった。
そんな白人崇拝のイランで革命時聖職者が主導権を取ったのは、地方の町では識字率も低く、知識人といえば聖職者で、民衆の問題を良くわかっていたから、都会の知識人や学生よりも支持を得たわけで、革命後の成果として地方の識字率が上がった反面聖職者が私腹に走り堕落し、民衆と乖離したことから現大統領の支持につながった事情なども簡潔に記載されている。民主主義の捉え方も、白人崇拝知識人と一般大衆とは若干異なり、欧米が理解し易い白人崇拝知識人と聖職者の対決という構図だけ見ていては、今後の動向は測りがたいといえる。本書はこうした国内事情や対米対イスラエル政策事情を的確に記載してゆくが、ひとつ大きく不足していると思われるのはここ数年で大きく強まった中国との関係に一言も触れられていない点。「米国への意識過剰」は、「イランを大国として認めてもらいたい」という意識にもつながり、米国がイランにつけいるポイントだと思うのだが、いつまでも関係修復が進まないと中国がイランの誇りを保証し、「米国へのこだわり」が低まる可能性がある。こうした観点から、近年の中国との関係も記載が欲しかった。
最後に。本書は一方的なイラン寄りの記述なのか?との疑問もよぎるものの、裏を取ることこそがジャーナリストの仕事なのでそこは信頼できるのではないかと思う。本レビューの表題に掲げた著者の言は非常に好ましい。
かくいう私は、これまで結構な量のイラン本を読んでおり、日々在イラン日本人のブログを読み、イランも旅行し、イラン料理店の店主などから情報を得ているので、今ではアマゾンのリコメンデーションにイラン関連本が上がってこなくなっており、本書には「今更何か得るところがあるだろうか」と思ったものの、目次にある「アメリカ悪行博物館」に興味をそそられ読んでしまった。アメリカ悪行博物館は、ソウルにある「西大門刑務所歴史館」や中国の「南京大虐殺博物館」のような感情的誇張溢れる内容か、または、世界各地の政権転覆などに関与してきた米国悪行履歴かと思っていたら、意外に普通に革命前までの大使館とその機密資料(しかしその内容はイランにとっては悪辣な政策企画・指令が記載してあるものなのだが)を保存してあるだけで拍子抜けだった。
本書でも記載されているが、イラン人はアラブ人と一緒にされるのは最大の侮辱とされる程「自分たちは白人」だと考える人は多く、欧米文化に惹かれている。この辺の事情は イラン人は神の国イランをどう考えているか でよく看取できるところだし、映画などはかなりハリウッド的なものも多い(イラン旅行時に見たイラク戦争映画は、最初「ランボー」かと思う様な戦争活劇だった)。「アフマディネジャドは初の非聖職者大統領」という事や、今ではすっかり秘密警察に抑圧されている感のある社会も、同大統領2期になってからの話で、一期は寧ろ風紀開放は進んでいた、など本書をを読んで思い出したことも多々あった。
そんな白人崇拝のイランで革命時聖職者が主導権を取ったのは、地方の町では識字率も低く、知識人といえば聖職者で、民衆の問題を良くわかっていたから、都会の知識人や学生よりも支持を得たわけで、革命後の成果として地方の識字率が上がった反面聖職者が私腹に走り堕落し、民衆と乖離したことから現大統領の支持につながった事情なども簡潔に記載されている。民主主義の捉え方も、白人崇拝知識人と一般大衆とは若干異なり、欧米が理解し易い白人崇拝知識人と聖職者の対決という構図だけ見ていては、今後の動向は測りがたいといえる。本書はこうした国内事情や対米対イスラエル政策事情を的確に記載してゆくが、ひとつ大きく不足していると思われるのはここ数年で大きく強まった中国との関係に一言も触れられていない点。「米国への意識過剰」は、「イランを大国として認めてもらいたい」という意識にもつながり、米国がイランにつけいるポイントだと思うのだが、いつまでも関係修復が進まないと中国がイランの誇りを保証し、「米国へのこだわり」が低まる可能性がある。こうした観点から、近年の中国との関係も記載が欲しかった。
最後に。本書は一方的なイラン寄りの記述なのか?との疑問もよぎるものの、裏を取ることこそがジャーナリストの仕事なのでそこは信頼できるのではないかと思う。本レビューの表題に掲げた著者の言は非常に好ましい。
2019年12月21日に日本でレビュー済み
ニュースで知るイランが極端な一面をクローズアップしただけだと分かる、イランにおける常識や実状を知ることができる本でした。著者が実際にイランで見聞・体験した出来事を中心に主観的な視点で書かれていて面白かったです。
2010年10月10日に日本でレビュー済み
イランという国の「現在」のルポ。一言でいうとそういう本。
今、日本では軍事的脅威といえばテポドンの北朝鮮、あるいは尖閣諸島の中国といったところだろうか。しかし世界、特にアメリカにとっての最大脅威はこのイランだ。公然と核開発を進め、アメリカの「属国」イスラエルを敵視する。さらに大産油国ゆえに経済制裁にもビクともしない。
・・北朝鮮や中国に対するアメリカの態度は、我々日本人にとってはいささか煮え切らないものにうつる。それも当然かもしれない。アメリカにとって北朝鮮や中国は優先順位が低いのだ。
そのアメリカの最大脅威国イランに、特派員として駐在した著者が現在のイランをルポする。
もちろんここで書かれたイラン像は、あくまで著者の視点からにすぎない。しかし本書の中ではあのドバイとイランの関係や、ペルシャ湾をアラビア湾と呼ぶことに関する呼称問題など、これまで知らなかった記事も多い。
一読の価値はある本だ。
今、日本では軍事的脅威といえばテポドンの北朝鮮、あるいは尖閣諸島の中国といったところだろうか。しかし世界、特にアメリカにとっての最大脅威はこのイランだ。公然と核開発を進め、アメリカの「属国」イスラエルを敵視する。さらに大産油国ゆえに経済制裁にもビクともしない。
・・北朝鮮や中国に対するアメリカの態度は、我々日本人にとってはいささか煮え切らないものにうつる。それも当然かもしれない。アメリカにとって北朝鮮や中国は優先順位が低いのだ。
そのアメリカの最大脅威国イランに、特派員として駐在した著者が現在のイランをルポする。
もちろんここで書かれたイラン像は、あくまで著者の視点からにすぎない。しかし本書の中ではあのドバイとイランの関係や、ペルシャ湾をアラビア湾と呼ぶことに関する呼称問題など、これまで知らなかった記事も多い。
一読の価値はある本だ。
2010年10月12日に日本でレビュー済み
反米、反イスラエルが国是のイラン。じゃあ、イスラム連合でほかのアラブ諸国と仲が良いのかというととんでもない。イスラエルほどでないにしろ、イランから中東戦争の火の手が上がってもまったくおかしくない。イランと周辺国との不思議な関係を本書が読み解く。
対岸のドバイには、イラン各地から毎日70便の定期便が飛び、最寄りの解放区リゾートになっているが、それ以上に、欧米の経済制裁を受けるイランへのクリアランス貿易の中継地として繁栄した側面が見逃せない。ドバイの輸入物資の7割がイランに再輸出されているというから驚く。ペルシャ人はアラブ人と「同じムスリム」と同一視して欲しくない。ナチスじゃないが自分たちは「アーリア人、白人だ」という思いが強い。アフガンやバーレーンなど周辺の小国への露骨な大国意識を隠さないし、イラン・イラク戦争の前科もあるので、アラブ諸国はイランへの警戒感は非常に強い。また、「ペルシャ人国家」の外側からは見えづらいアゼリ人やクルド人などの少数民族問題は日本メディアではほとんど取り上げられないので興味深い。アゼリ人はイランで確固たる地位を築いているが、彼ら独自の仲間意識が強くあり、ちょっとしたなまりで同胞と分かると、ペルシャ人には分からないアゼリ語に切り替えてしまうという。もちろん、イラン国内で独立運動にならないよう、マイノリティの自己主張は抑えつつペルシャ人による差別的言辞も厳しく取り締まる。
対米関係などはそれなりだが、ほかにも、昨年死去したかつてのイランナンバー2、モンタゼリ師が革命体制への怒りを語ったインタビューなど読んで得る所は多い。著者がイラン人の発言の大げささや嘘を嘆く場面が多いが、アフマディネジャド大統領の放言も民族性に由来する点があるのかも知れない、と本書を読むと思う。
対岸のドバイには、イラン各地から毎日70便の定期便が飛び、最寄りの解放区リゾートになっているが、それ以上に、欧米の経済制裁を受けるイランへのクリアランス貿易の中継地として繁栄した側面が見逃せない。ドバイの輸入物資の7割がイランに再輸出されているというから驚く。ペルシャ人はアラブ人と「同じムスリム」と同一視して欲しくない。ナチスじゃないが自分たちは「アーリア人、白人だ」という思いが強い。アフガンやバーレーンなど周辺の小国への露骨な大国意識を隠さないし、イラン・イラク戦争の前科もあるので、アラブ諸国はイランへの警戒感は非常に強い。また、「ペルシャ人国家」の外側からは見えづらいアゼリ人やクルド人などの少数民族問題は日本メディアではほとんど取り上げられないので興味深い。アゼリ人はイランで確固たる地位を築いているが、彼ら独自の仲間意識が強くあり、ちょっとしたなまりで同胞と分かると、ペルシャ人には分からないアゼリ語に切り替えてしまうという。もちろん、イラン国内で独立運動にならないよう、マイノリティの自己主張は抑えつつペルシャ人による差別的言辞も厳しく取り締まる。
対米関係などはそれなりだが、ほかにも、昨年死去したかつてのイランナンバー2、モンタゼリ師が革命体制への怒りを語ったインタビューなど読んで得る所は多い。著者がイラン人の発言の大げささや嘘を嘆く場面が多いが、アフマディネジャド大統領の放言も民族性に由来する点があるのかも知れない、と本書を読むと思う。