三部作の「それから」より良かった。女は裏切りが多いことをこの作品からも痛感。注意深く生きよう。
漱石の作品は好きである。次は「道草」かなと思っている。
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三四郎 (新潮文庫) 文庫 – 1948/10/27
夏目 漱石
(著)
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「迷子の英訳を知っていらしって」学問、友情、恋愛への不満や戸惑い。
何度読んでも新鮮な気持ちになれる、みずみずしい永遠の傑作。
『それから』『門』へと続く前期三部作の第一章。
熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性・里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく……。
青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。用語、時代背景などについての詳細な注解、解説を付す。
本文より
改札場の際まで送って来た女は、
「色々御厄介になりまして、……では御機嫌よう」と丁寧に御辞儀をした。三四郎は革鞄(かばん)と傘を片手に持ったまま、空いた手で例の古帽子を取って、只一言、
「さよなら」と云った。女はその顔を凝(じっ)と眺めていた。が、やがて落付いた調子で、
「あなたは余っ程度胸のない方ですね」と云って、にやりと笑った。三四郎はプラット、フォームの上へ弾き出された様な心持がした。車の中へ這入ったら両方の耳が一層熱(ほて)り出した。……(本書14ページ)
夏目漱石(1867-1916)
1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
何度読んでも新鮮な気持ちになれる、みずみずしい永遠の傑作。
『それから』『門』へと続く前期三部作の第一章。
熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性・里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく……。
青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。用語、時代背景などについての詳細な注解、解説を付す。
本文より
改札場の際まで送って来た女は、
「色々御厄介になりまして、……では御機嫌よう」と丁寧に御辞儀をした。三四郎は革鞄(かばん)と傘を片手に持ったまま、空いた手で例の古帽子を取って、只一言、
「さよなら」と云った。女はその顔を凝(じっ)と眺めていた。が、やがて落付いた調子で、
「あなたは余っ程度胸のない方ですね」と云って、にやりと笑った。三四郎はプラット、フォームの上へ弾き出された様な心持がした。車の中へ這入ったら両方の耳が一層熱(ほて)り出した。……(本書14ページ)
夏目漱石(1867-1916)
1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
- ISBN-104101010048
- ISBN-13978-4101010045
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1948/10/27
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ368ページ
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吾輩は猫である | 倫敦塔・幻影の盾 | 坊っちゃん | 三四郎 | それから | 門 | |
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価格 | ¥693¥693 | ¥605¥605 | ¥341¥341 | ¥374¥374 | ¥506¥506 | ¥440¥440 |
【新潮文庫】夏目漱石 作品 | 明治の俗物紳士たちの語る珍談・奇譚、小事件の数かずを、迷いこんで飼われている猫の眼から風刺的に描いた漱石最初の長編小説。 | 謎に満ちた塔の歴史に取材し、妖しい幻想を繰りひろげる「倫敦塔」、英国留学中の紀行文「カーライル博物館」など、初期の7編を収録。 | 四国の中学に数学教師として赴任した直情径行の青年が巻きおこす珍騒動。ユーモアと人情の機微にあふれ、広範な愛読者をもつ傑作。 | 熊本から東京の大学に入学した三四郎は、心を寄せる都会育ちの女性美禰子の態度に翻弄されてしまう。青春の不安や戸惑いを描く。 | 定職も持たず思索の毎日を送る代助と友人の妻との不倫の愛。激変する運命の中で自己を凝視し、愛の真実を貫く知識人の苦悩を描く。 | 親友を裏切り、彼の妻であった御米と結ばれた宗助は、その罪意識に苦しみ宗教の門を叩くが……。「三四郎」「それから」に続く三部作。 |
草枕 | 虞美人草 | 彼岸過迄 | 行人 | こころ | 道草 | |
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智に働けば角が立つ──思索にかられつつ山路を登りつめた青年画家の前に現われる謎の美女。絢爛たる文章で綴る漱石初期の名作。 | 我執と虚栄に心おごる美女が、ついに一切を失って破局に向う悽愴な姿を描き、偽りの生き方が生む人間の堕落と悲劇を追う問題作。 | 自意識が強く内向的な須永と、感情のままに行動して悪びれない従妹との恋愛を中心に、エゴイズムに苦悩する近代知識人の姿を描く。 | 余りに理知的であるが故に周囲と齟齬をきたす主人公の一郎。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない男に救いはあるか? | 親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、みずからも死を選ぶ、孤独な明治の知識人の内面を抉る秀作。 | 健三は、愛に飢えていながら率直に表現できず、妻のお住は、そんな夫を理解できない。近代知識人の矛盾にみちた生活と苦悩を描く。 |
硝子戸の中 | 二百十日・野分 | 坑夫 | 文鳥・夢十夜 | 明暗 | |
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漱石山房から眺めた外界の様子は?終日書斎の硝子戸の中に坐し、頭の動くまま気分の変るままに、静かに人生と社会を語る随想集。 | 俗な世相を痛烈に批判し、非人情の世界から人情の世界への転機を示す「二百十日」、その思想をさらに深く発展させた「野分」を収録。 | 恋愛事件のために出奔し、自棄になって坑夫になる決心をした青年が実際に銅山で見たものは……漱石文学のルポルタージュ的異色作。 | 文鳥の死に、著者の孤独な心象をにじませた名作「文鳥」、夢に現われた無意識の世界を綴り、暗く無気味な雰囲気の漂う、「夢十夜」等。 | 妻と平凡な生活を送る津田は、かつて将来を誓い合った人妻清子を追って、温泉場を訪れた──。近代小説を代表する漱石未完の絶筆。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1948/10/27)
- 発売日 : 1948/10/27
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 368ページ
- ISBN-10 : 4101010048
- ISBN-13 : 978-4101010045
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 47,827位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1867-1916)1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。
帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。
翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年7月9日に日本でレビュー済み
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漱石初期の三部作の一。美禰子が三四郎に投げた…ストレイシープの真意は…
2021年10月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
田舎から大学入学のために上京してきた男の周りで起こる出来事を描いた作品。
とりとめのない学生生活の一風景という感じで、学校周りの馴染みある地名や建造物が懐かしかった。
内容の方は非常に文学的であるというか、主人公の考えていることをはっきりと描写していないため、心情が分かり辛い。
一方でよくしゃべる人物も内容が哲学的で結局何を言いたいのわからない。
解釈の余地が多く、自分にはまだ味が分からない作品だと思った。
ただ、漱石が小説家になった背景を思うと非常にリラックスして書いていると感じられて、
そこは自分までも救われた気がした。
とりとめのない学生生活の一風景という感じで、学校周りの馴染みある地名や建造物が懐かしかった。
内容の方は非常に文学的であるというか、主人公の考えていることをはっきりと描写していないため、心情が分かり辛い。
一方でよくしゃべる人物も内容が哲学的で結局何を言いたいのわからない。
解釈の余地が多く、自分にはまだ味が分からない作品だと思った。
ただ、漱石が小説家になった背景を思うと非常にリラックスして書いていると感じられて、
そこは自分までも救われた気がした。
2024年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
漱石がこんなにコミカルだった事を忘れていた。数十年ぶりに読み返してみて良かった。
2023年7月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
許さない内容は
流石に漱石やな。
前期三部作の続きを読み魔障
流石に漱石やな。
前期三部作の続きを読み魔障
2015年9月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
※本レビューはネタバレを含みます。ご注意ください。
小説全体ににじむみずみずしさが好きです。
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と核心を突かれ、「二十三年の弱点が一度に露見したような心持ち」に「しょげてしま」う三四郎君。かわいい。
熊本から上京し、「そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。はなはだ不安である」と感じる三四郎君。小さな世界から飛び出した若者の初々しい不安感が良く表れています。
広田先生、野々宮、美禰子、よし子と菊人形を見物に出かけながら、「自分の今の生活が熊本当時のそれよりも、ずっと意味の深いものになりつつあると感じた。かつて考えた三個の世界のうちで、第二第三の世界はまさにこの一団の影で代表されている。」と考える三四郎君。
熊本から離れ、学問と美しい女性に出会い、新生活の充実感に満ち溢れたこの描写も、実に初々しい。
そんなうぶな三四郎君、今までに出会ったことのない才女美禰子さんに恋をし、「迷える子(ストレイ・シープ)」という言葉を教えられ、ノートに書き殴っては上の空。
母が結婚を望むお光さんなんかとっくにかすんでしまっている。
与次郎が美禰子を乱暴でイプセンの人物に似ていると評すれば、むきになってどこがだ、誰に似ているんだとくってかかっちゃう。
まさに青年の恋ですね。まぶしく見つめてしまいます。
この小説は、三四郎の実らぬ片思いの物語に見えますが、私には、美禰子さんもこんな三四郎の純朴さが好きだったのではないかと思えます。
美禰子さんは、本当に好きなのは野々宮さんではあるものの、誰か強く自分を愛してくれる男性を求めているような気がしました。様々な局面で、私を愛して、強く愛してと訴えかけているように見えるのです。
菊人形を見に行き、喧騒を二人きりで抜け出して、美禰子さんが二人を迷える子(ストレイ・シープ)と評したとき、美禰子さんは確かに三四郎の中に自分と同じものを見出していたのではないだろうか。全くタイプは違うように見えて、実は二人とも、運命に翻弄されて茫然としている迷子だったのではないだろうか。
もしこのとき、三四郎がそれに気づいて、美禰子さんの抱える不安を拭えるような、何か気の利いたことを言えていたのなら、二人の関係はもっと違ったものになっていたのかも。
三四郎への借金のことも、野々宮さんを試すかのようなことも、みんな愛されたいがための必死の策に見えます。
でも三四郎は美禰子さんの謎かけのような言葉に何と返せばいいかわからず、美禰子さんを他の男から奪い取る気概もない。
そして、それは野々宮さんも同じ。焼きもちを妬いて熱烈に愛を告白したりすることもない。どちらも美禰子さんのことは魅力的に思っているはずなのに、かなり重度の草食男子です。
そんな草食男子たちに業を煮やして、お見合い相手との結婚を決意したように私には思えてならないのです。女が結婚するには、「自分が必要とされた」という事実が必要なのです。たとえお見合いであっても、自分を望む相手のもとに行きたいものです。
三四郎が意を決して「ただ、あなたに会いたいから行ったのです」とようやく言えた頃には、何もかももう遅かったのがただただ切ない。
三四郎は美禰子さんの思わせぶりな態度の被害者のように見えて、実は一番傷つき、情けない思いをしたのは美禰子さんなのではないか…ズレた解釈かもしれませんが、私にはそう思えました。
美禰子さんのそんな儚いいじらしさが魅力的な、余韻の深い作品でした。
小説全体ににじむみずみずしさが好きです。
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と核心を突かれ、「二十三年の弱点が一度に露見したような心持ち」に「しょげてしま」う三四郎君。かわいい。
熊本から上京し、「そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。はなはだ不安である」と感じる三四郎君。小さな世界から飛び出した若者の初々しい不安感が良く表れています。
広田先生、野々宮、美禰子、よし子と菊人形を見物に出かけながら、「自分の今の生活が熊本当時のそれよりも、ずっと意味の深いものになりつつあると感じた。かつて考えた三個の世界のうちで、第二第三の世界はまさにこの一団の影で代表されている。」と考える三四郎君。
熊本から離れ、学問と美しい女性に出会い、新生活の充実感に満ち溢れたこの描写も、実に初々しい。
そんなうぶな三四郎君、今までに出会ったことのない才女美禰子さんに恋をし、「迷える子(ストレイ・シープ)」という言葉を教えられ、ノートに書き殴っては上の空。
母が結婚を望むお光さんなんかとっくにかすんでしまっている。
与次郎が美禰子を乱暴でイプセンの人物に似ていると評すれば、むきになってどこがだ、誰に似ているんだとくってかかっちゃう。
まさに青年の恋ですね。まぶしく見つめてしまいます。
この小説は、三四郎の実らぬ片思いの物語に見えますが、私には、美禰子さんもこんな三四郎の純朴さが好きだったのではないかと思えます。
美禰子さんは、本当に好きなのは野々宮さんではあるものの、誰か強く自分を愛してくれる男性を求めているような気がしました。様々な局面で、私を愛して、強く愛してと訴えかけているように見えるのです。
菊人形を見に行き、喧騒を二人きりで抜け出して、美禰子さんが二人を迷える子(ストレイ・シープ)と評したとき、美禰子さんは確かに三四郎の中に自分と同じものを見出していたのではないだろうか。全くタイプは違うように見えて、実は二人とも、運命に翻弄されて茫然としている迷子だったのではないだろうか。
もしこのとき、三四郎がそれに気づいて、美禰子さんの抱える不安を拭えるような、何か気の利いたことを言えていたのなら、二人の関係はもっと違ったものになっていたのかも。
三四郎への借金のことも、野々宮さんを試すかのようなことも、みんな愛されたいがための必死の策に見えます。
でも三四郎は美禰子さんの謎かけのような言葉に何と返せばいいかわからず、美禰子さんを他の男から奪い取る気概もない。
そして、それは野々宮さんも同じ。焼きもちを妬いて熱烈に愛を告白したりすることもない。どちらも美禰子さんのことは魅力的に思っているはずなのに、かなり重度の草食男子です。
そんな草食男子たちに業を煮やして、お見合い相手との結婚を決意したように私には思えてならないのです。女が結婚するには、「自分が必要とされた」という事実が必要なのです。たとえお見合いであっても、自分を望む相手のもとに行きたいものです。
三四郎が意を決して「ただ、あなたに会いたいから行ったのです」とようやく言えた頃には、何もかももう遅かったのがただただ切ない。
三四郎は美禰子さんの思わせぶりな態度の被害者のように見えて、実は一番傷つき、情けない思いをしたのは美禰子さんなのではないか…ズレた解釈かもしれませんが、私にはそう思えました。
美禰子さんのそんな儚いいじらしさが魅力的な、余韻の深い作品でした。
2022年1月6日に日本でレビュー済み
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内容はとてもよく、無料でうれしかったです。