宇宙の年表をエンパイア・ステートビルに例えて、物理学者ブライアン・グリーンがビッグバンから宇宙の終わりまでをタイムトラベルさせてくれます。
ただしビルの1階は10¹年、2階は10²年、と10のべき乗で時間枠が徐々に増えて行きます。最上階は10¹º²年と気の遠くなるような時間スケールになります。
こうした無限にも近い時間では、宇宙で起こるかも知れない全ては確率的に起こる可能性があります。
と言うか「起こらないこと」は何もないと言えるでしょう。
宇宙の始まりは、低いエントロピー状態つまり秩序の高い状態が奇跡的に起こってその直後の10⁻³º秒の間に、よくわかっていない粒子が爆発的(ビッグバン)な斥力で膨張したインフレーションの結果でした。
その後は密度の濃い領域でガスが引き寄せられて、圧縮された核反応によって恒星が誕生しました。
恒星の誕生プロセスにおいて、中心部は低エントロピー、周辺部は高エントロピーになりますが、全体としてエントロピー増大の法則に従っていました。
最初は水素、ヘリウム、炭素などの質量の軽い元素が主役でしたが、恒星の質量が充分に大きくなると、中心部に落下する物質は爆発的エネルギーの圧力によって鉄より重い元素が合成されて、宇宙空間に吹き飛ばされました。
中性子星同士の衝突によっても重い元素が生まれました。
地球の誕生後、生命が誕生する過程は「偶然」と「選択」という「分子ダーウィニズム」と呼ばれるメカニズムが働きました。繰り返し起こる化学反応の結果ですから「確率的」なプロセスと言えるでしょう。
宇宙の誕生以来、2つの大きなメカニズムが作用しました。「エントロピー」と「偶然と選択」の2つです。
私は以前からこの2つのメカニズムに注目していました。
さて「偶然と選択」を独立した事象が同時に起こる確率として考えれば、「ベイズ・ルール」と言い換えても問題はないと思いますが・・
ブラックホールに関してエントロピーが有効かどうかという議論が展開されています。
ベッケンシュタインの研究によって、ブラックホールでも熱力学第2法則が適用されるようになりました。
晴れてエントロピーは宇宙の普遍的ルールと認識されたわけです。
最近の宇宙観測ではブラックホールに関する新しい知見が次々に報告されています。
私もポータルサイト「sorae」をニュースフィードして注目しています。
著者のブライアン・グリーンは次のように述べています。
>脳はさまざまな物理化学的プロセスによって、粒子配置を変化させる。(粒子配置は化学反応、分子の組み換え、粒子の運動等によって変化する)
私たちが自発的な「思考」と考えていることも、粒子の集団的な活動を自発的に選択していると錯覚しているのかもしれません。
カール・フリストンらの最新の脳神経科学研究「自由エネルギー原理」の成果によって、生き延びるために脳は「自由エネルギー」つまり「不確実性」を最小化するように推論を行っていることを明らかにしました。
さらに微視的な観察によって粒子の集団パターンが関与しているという結果が得られるかもしれません。
「意識」「主観」といったハードプロブレムまで解明されるのはもう少し時間を要するでしょう。
なぜならほとんどの人は「そんな事あるかい!」とアンチになるでしょうから(苦笑)。
私は個人投資家として一つの仮説を持っています。
>宇宙に起こる事象は自己相似(フラクタル)として小さな系においても起こっている
と予測しています。
たとえば「経済事象」の予測に「エントロピー増大の法則」と「ベイズ・ルール」を適用すると、長い時間スケールを取れば取るほど、「生起確率」は上がってくることを実感しています。
強い因果関係を根拠にできれば投資成果は上がるはずです。
数学的に証明するには「繰り込み」等の難解な技術が必要になるでしょう。
ブライアン・グリーンは単純な「入れ子」という表現を使っています。
投資の場面では数学的な証明よりも、直観的に因果関係を探して、時には階層的に考えたり、反実仮想を用いて確認したりしています。
とくに大事なのは、信念レベルにまで至らず常に確率的に考えるスタンスを維持することです。
最後に結語として次の言葉を選びました。
>物理法則はそれまで通り完全なる支配力を握っている。生命には、物理法則に従う展開に待ったをかけたり、物理法則に影響を及ぼしたり、物理法則を反故にしたりする力はないのだ。
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時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙 単行本 – 2021/12/3
ブライアン・グリーン
(著),
青木 薫
(翻訳)
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世界的ベストセラー『エレガントな宇宙』著者の最新作
なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか?
進化する宇宙は私たちをどこへ連れてゆくのか?
ビッグバンから時空の終焉までを壮大なスケールで描き出す!
素粒子から星や銀河まで、生命誕生から意識の謎まで、さまざまな秩序と構造をもたらす物理的な原理を見ていきながら、宇宙の年表に沿って読者を時空の旅へといざなう。人の寿命は限られているが、宇宙における生命と心という現象もまた、限られた時間しか存在しない。そしてはるか先には、物質すら存在できないときが訪れる。この進化する宇宙の中で、ほんの束の間、まったく絶妙な瞬間に存在する私たち人間を基点に、時間の始まりであるビッグバンから、時間の終わりであるこの宇宙の終焉までを、現代物理学の知見をもとに、「存在とは何か」という根源的な問いから描き出す。第一級のポピュラーサイエンス!
〈著者紹介〉
ブライアン・グリーン Brian Greene
理論物理学者。ハーバード大学を卒業後、オックスフォード大学で博士号取得。現在はコロンビア大学物理学・数学教授。超弦理論や宇宙論の分野で数々の業績をあげ研究者として第一線で活躍するかたわら、科学の普及のための活動にも力を注ぐ。超弦理論を解説した一般向けの著作である『エレガントな宇宙』は各国で翻訳され、全世界で累計100万部を超えるベストセラーとなった。続く『宇宙を織りなすもの』『隠れていた宇宙』も全米ベストセラーとなる。
〈訳者紹介〉
青木 薫(あおき・かおる)
1956年山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学大学院修了。理学博士。2007年度日本数学会出版賞受賞。訳書にサイモン・シン『フェルマーの最終定理』(新潮社)、 ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、スティーヴン・ホーキング『ビッグ・クエスチョン』(NHK出版)、ジェームス・D・ワトソン他『DNA』(講談社)など。著書に『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)がある。
〈目次〉
第1章 永遠の魅惑 始まり、終わり、そしてその先にあるもの
第2章 時間を語る言葉 過去、未来、そして変化
第3章 宇宙の始まりとエントロピー 宇宙創造から構造形成へ
第4章 情報と生命力 構造から生命へ
第5章 粒子と意識 生命から心へ
第6章 言語と物語 心から想像力へ
第7章 脳と信念 想像力から聖なるものへ
第8章 本能と創造性 聖なるものから崇高なるものへ
第9章 生命と心の終焉 宇宙の時間スケール
第10章 時間の黄昏 量子、確率、永遠
第11章 存在の尊さ 心、物質、意味
なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか?
進化する宇宙は私たちをどこへ連れてゆくのか?
ビッグバンから時空の終焉までを壮大なスケールで描き出す!
素粒子から星や銀河まで、生命誕生から意識の謎まで、さまざまな秩序と構造をもたらす物理的な原理を見ていきながら、宇宙の年表に沿って読者を時空の旅へといざなう。人の寿命は限られているが、宇宙における生命と心という現象もまた、限られた時間しか存在しない。そしてはるか先には、物質すら存在できないときが訪れる。この進化する宇宙の中で、ほんの束の間、まったく絶妙な瞬間に存在する私たち人間を基点に、時間の始まりであるビッグバンから、時間の終わりであるこの宇宙の終焉までを、現代物理学の知見をもとに、「存在とは何か」という根源的な問いから描き出す。第一級のポピュラーサイエンス!
〈著者紹介〉
ブライアン・グリーン Brian Greene
理論物理学者。ハーバード大学を卒業後、オックスフォード大学で博士号取得。現在はコロンビア大学物理学・数学教授。超弦理論や宇宙論の分野で数々の業績をあげ研究者として第一線で活躍するかたわら、科学の普及のための活動にも力を注ぐ。超弦理論を解説した一般向けの著作である『エレガントな宇宙』は各国で翻訳され、全世界で累計100万部を超えるベストセラーとなった。続く『宇宙を織りなすもの』『隠れていた宇宙』も全米ベストセラーとなる。
〈訳者紹介〉
青木 薫(あおき・かおる)
1956年山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学大学院修了。理学博士。2007年度日本数学会出版賞受賞。訳書にサイモン・シン『フェルマーの最終定理』(新潮社)、 ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、スティーヴン・ホーキング『ビッグ・クエスチョン』(NHK出版)、ジェームス・D・ワトソン他『DNA』(講談社)など。著書に『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)がある。
〈目次〉
第1章 永遠の魅惑 始まり、終わり、そしてその先にあるもの
第2章 時間を語る言葉 過去、未来、そして変化
第3章 宇宙の始まりとエントロピー 宇宙創造から構造形成へ
第4章 情報と生命力 構造から生命へ
第5章 粒子と意識 生命から心へ
第6章 言語と物語 心から想像力へ
第7章 脳と信念 想像力から聖なるものへ
第8章 本能と創造性 聖なるものから崇高なるものへ
第9章 生命と心の終焉 宇宙の時間スケール
第10章 時間の黄昏 量子、確率、永遠
第11章 存在の尊さ 心、物質、意味
- 本の長さ642ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2021/12/3
- 寸法14 x 3.8 x 19.5 cm
- ISBN-104065261066
- ISBN-13978-4065261064
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2021/12/3)
- 発売日 : 2021/12/3
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 642ページ
- ISBN-10 : 4065261066
- ISBN-13 : 978-4065261064
- 寸法 : 14 x 3.8 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 141,967位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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イメージ付きのレビュー
5 星
地球や太陽どころか、宇宙そのものにも終わりが訪れる
これほど恐ろしい本が出現したことがあっただろうか。『時間の終わりまで――物質、生命、心と進化する宇宙』(ブライアン・グリーン著、青木薫訳、講談社)は、地球や太陽どころか、宇宙そのものにも終わりが訪れるというのだ。本書には、宇宙の始まりであるビッグバンから宇宙の終焉までが壮大なスケールで描き出されているが、何と言っても圧巻は、宇宙に終わりが訪れる部分である。宇宙の終焉は、このように描かれている。「エンパイアステートビルの102階から宇宙を見れば、宇宙空間のいたるところを霧のように漂う粒子ぐらいしか、見るべきものはないことがわかるだろう。ときおり、電子とその反粒子である陽電子とのあいだに作用する引力が、両者を螺旋軌道上でじりじりと接近させ、最終的にその電子ー陽電子ペアは、小さな閃光を出して消滅する。針で突いたようなその光は、またたくまに黒闇の中を走り去るだろう。もしも暗黒エネルギーがすでに枯渇して、空間の膨張速度が減速に転じていたなら、粒子が落下するにつれてブラックホールはどんどん大きくなり、放射を出すペースはゆるやかになって、その寿命はさらに延びるかもしれない。しかし、もしも暗黒エネルギーが現在の値を保っていれば、空間の加速膨張のために粒子たちはスピードを上げて互いに遠ざかり、二度と相まみえることはないだろう。興味深いことに、この状況は、ビッグバン直後の時期のそれに似たところがある。宇宙初期でも、孤立した粒子が空間に散在していたのだった。初期と末期の違いは、初期宇宙では、粒子密度がきわめて高かったので、重力は粒子たちに働きかけて、恒星や惑星などの構造を容易に作ることができたのに対し、末期宇宙では、粒子の密度はあまりにも低くなり、空間は仮借なく膨張密度を上げていくため、恒星や惑星のような塊ができる可能性はほとんどないということだ。初期宇宙の塵は、すぐにもエントロピック・ツーステップを踊り出せる状態にあり、重力に駆り立てられて秩序ある天文学的構造をどんどん作っていったのに対し、末期宇宙における塵は、あまりにも希薄に広がってしまい、虚空の中をひっそりと漂うことしかできない」。「物理学者たちは、未来のこの時代を『時間の終わり』と言うことがある、時間の流れが止まるわけではない。しかし、広大な空間の中で、孤立した粒子があちこちに移動する以外には何も起こらなくなったとき、宇宙はついに忘却の彼方に去り、宇宙のことを知る者は誰もいなくなったと結論するのは妥当だろう」。「(これまで行ってきた)探究のすべてにもとづき、次のようにまとめるのが妥当だろう。われわれが暮らしているこの領域、この宇宙において、われわれ人類は、そしてより一般に『思考する者』は、確実に終わりの時を迎える。それはまだ遠い未来のことだが、エンパイアステートビルを上る途中で、あるいは上りきったその先で、ほぼ確実にそのときは来る」。「われわれが長きにわたって『唯一の』宇宙だと思っていた領域では、生命と思考はいずれ終わりを迎えることになりそうだ」。恐るべき一冊である。
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申し訳ありませんが、レビューを読み込めませんでした
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上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2023年8月28日に日本でレビュー済み
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2023年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少し難しいけどそこがいい
2023年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この中でも特に注目したのが、人の「意識」についてである。
ヒトの脳には、1兆の1兆倍の更に1000倍もの粒子(電子、陽子、中性子) が協調して動き回っていて、
実につつがなく機能している。これらは神の意志などではなく、全て厳密な物理法則に従って運動して
いるだけである。
現代の最先端科学でさえ、脳のシナプスが相互に繋がり統合された働きの中から、一体どうやって
「意識」というものが生じてくるのかが全く分かっていない。
しかしそれらが、脳細胞の直接の働きから発生していることは、MRI解析などの数多くの実証データで
示されている。(考えた内容に同期して、脳内の特定活動パターンの励起がみられる)
即ち、未だに「意識」そのものを科学的、客観的に捉える方法が得られていないだけであり、実際に
これを認識している本人自身以外では、如何なる手段をもってしてもその実像を捉えることができない
ままでいる。
それぞれの生物が宿す全ての細胞一つ一つにおいて、エネルギー代謝を行い、複製され、自らの役割を
忠実に果たしている。生物が生きていく上でそれらが絶妙に組み合わされ、全体として統一した動きを
担わなければならない。例えば走っている時、網膜に入射する光の像は激しく揺れ動くが、脳内では
ブレることなく外界が静止していると認識できる様に巧みに再構成されている。
人体では実に精妙に、鼓動循環し、消化吸収により新陳代謝し、不要な侵入に対し免疫機能が働き、
外界の変化に適応するための自動調整(ホメオスタシス)を行っている。
逆に「意識」によってそれらを自在に操ることなど不可能で、大部分は意識とは関係なく勝手に
動作している。意識ではせいぜい随意筋が動かせる程度である。
そうした精緻で自律的な仕組みである人としての体の中に、あたかもそれを眺めているかのように
「意識」はぽっかりと浮かんでいる。「意識」がどのように人体という物理的実体と繋がっているのかは
定かではない。要は、脳内の粒子の物理的活動を母体として「意識」が生み出されていること自体は
間違いないのであるが、その生成・接続過程を理論的に説明できる方法が未だに見つけられないでいる。
こうした中でも確実に言えることは、「意識」はあくまでも人体活動の結果として表象的に現れる
現象であって、元より人を動かす原因や原動力とはなり得ない、ということである。
従って、この状況の中では、独立した「自由意志」などというものが入り込む隙はもはやない。
あくまで、「意識」は従属する立場であることは免れない。
但しこれは、単に「意思」が脳に操られた自動機械であるということではない。
例えばChatGPTでは、あらゆる質問に対し、あたかもその質問の意図が分かっているかのような
自然な回答を行う。しかしこれは、質問入力に対する機械的な情報処理を行って出力しているに過ぎない。
即ち、予め全て用意されたシステム構造に基づいて自動的に動いているだけのことで、システム構造が
如何なるものかには一切関知できない。しかしあたかも、質問の意図を認識した人間であるかのように、
臨機応変に多様な適応動作と言える応答を返すことができる。
人においても、様々な状況に応じて実に多様な予期せぬ反応を示し、それまでにはなかったような
創造力を発揮することもできる。しかしこれも、人としての自律的総体があればこその複雑なプロセスを
経た末の結果で、「意識」単独では決して得られないものである。
そうであれば、今こうして考えている「自分」の実体とは一体何者なのか、と考えさせられてしまう。
ChatGPTがその本体であるコンピュータのことを知る由もないのと同様に、「意識」もその主体のことを
知る術を持たないのではないか。
この話の中で最も重要で意義深いと思われる点は、今ここで自分と考えている存在(自意識)は、
138億年前の宇宙開闢以来あらゆる粒子の動きを始めとする宇宙の成り行きの全ての流れや相互作用の
限りない偶然のたった一筋の辿った結果ということである。その過程のごく一部でも異なった揺らぎが
あったとすれば、今の自分ではなく、他の誰かということになっていたのである。
この「自分」という意識の存在を支えているのが、無数の粒子の組み合わせで生きている人体であり、
それを現実世界の中で生かしてくれているのが地球環境であり、宇宙の仕組みであり、全ての存在である。
正に、今ここにいる自分という存在(自意識)があるのは、奇跡以外の何者でもない。
これまでの宇宙の全歴史は、今ここにこの自分を生み出すために連綿と存在してきたことは、
紛れもない厳然たる事実である。
今目の前で自分の周囲にあるものは、消えてなくなる幻影などではなく、現実に確として存在している
物質であることは否定のしようがないのだから。
以上が強く感じた点であるが、本書は人類の存在意義について、実に多様な面からの考察が含まれており、
様々なことを考えさせられ、読み終えて大変有意義であったと感謝する次第である。
ヒトの脳には、1兆の1兆倍の更に1000倍もの粒子(電子、陽子、中性子) が協調して動き回っていて、
実につつがなく機能している。これらは神の意志などではなく、全て厳密な物理法則に従って運動して
いるだけである。
現代の最先端科学でさえ、脳のシナプスが相互に繋がり統合された働きの中から、一体どうやって
「意識」というものが生じてくるのかが全く分かっていない。
しかしそれらが、脳細胞の直接の働きから発生していることは、MRI解析などの数多くの実証データで
示されている。(考えた内容に同期して、脳内の特定活動パターンの励起がみられる)
即ち、未だに「意識」そのものを科学的、客観的に捉える方法が得られていないだけであり、実際に
これを認識している本人自身以外では、如何なる手段をもってしてもその実像を捉えることができない
ままでいる。
それぞれの生物が宿す全ての細胞一つ一つにおいて、エネルギー代謝を行い、複製され、自らの役割を
忠実に果たしている。生物が生きていく上でそれらが絶妙に組み合わされ、全体として統一した動きを
担わなければならない。例えば走っている時、網膜に入射する光の像は激しく揺れ動くが、脳内では
ブレることなく外界が静止していると認識できる様に巧みに再構成されている。
人体では実に精妙に、鼓動循環し、消化吸収により新陳代謝し、不要な侵入に対し免疫機能が働き、
外界の変化に適応するための自動調整(ホメオスタシス)を行っている。
逆に「意識」によってそれらを自在に操ることなど不可能で、大部分は意識とは関係なく勝手に
動作している。意識ではせいぜい随意筋が動かせる程度である。
そうした精緻で自律的な仕組みである人としての体の中に、あたかもそれを眺めているかのように
「意識」はぽっかりと浮かんでいる。「意識」がどのように人体という物理的実体と繋がっているのかは
定かではない。要は、脳内の粒子の物理的活動を母体として「意識」が生み出されていること自体は
間違いないのであるが、その生成・接続過程を理論的に説明できる方法が未だに見つけられないでいる。
こうした中でも確実に言えることは、「意識」はあくまでも人体活動の結果として表象的に現れる
現象であって、元より人を動かす原因や原動力とはなり得ない、ということである。
従って、この状況の中では、独立した「自由意志」などというものが入り込む隙はもはやない。
あくまで、「意識」は従属する立場であることは免れない。
但しこれは、単に「意思」が脳に操られた自動機械であるということではない。
例えばChatGPTでは、あらゆる質問に対し、あたかもその質問の意図が分かっているかのような
自然な回答を行う。しかしこれは、質問入力に対する機械的な情報処理を行って出力しているに過ぎない。
即ち、予め全て用意されたシステム構造に基づいて自動的に動いているだけのことで、システム構造が
如何なるものかには一切関知できない。しかしあたかも、質問の意図を認識した人間であるかのように、
臨機応変に多様な適応動作と言える応答を返すことができる。
人においても、様々な状況に応じて実に多様な予期せぬ反応を示し、それまでにはなかったような
創造力を発揮することもできる。しかしこれも、人としての自律的総体があればこその複雑なプロセスを
経た末の結果で、「意識」単独では決して得られないものである。
そうであれば、今こうして考えている「自分」の実体とは一体何者なのか、と考えさせられてしまう。
ChatGPTがその本体であるコンピュータのことを知る由もないのと同様に、「意識」もその主体のことを
知る術を持たないのではないか。
この話の中で最も重要で意義深いと思われる点は、今ここで自分と考えている存在(自意識)は、
138億年前の宇宙開闢以来あらゆる粒子の動きを始めとする宇宙の成り行きの全ての流れや相互作用の
限りない偶然のたった一筋の辿った結果ということである。その過程のごく一部でも異なった揺らぎが
あったとすれば、今の自分ではなく、他の誰かということになっていたのである。
この「自分」という意識の存在を支えているのが、無数の粒子の組み合わせで生きている人体であり、
それを現実世界の中で生かしてくれているのが地球環境であり、宇宙の仕組みであり、全ての存在である。
正に、今ここにいる自分という存在(自意識)があるのは、奇跡以外の何者でもない。
これまでの宇宙の全歴史は、今ここにこの自分を生み出すために連綿と存在してきたことは、
紛れもない厳然たる事実である。
今目の前で自分の周囲にあるものは、消えてなくなる幻影などではなく、現実に確として存在している
物質であることは否定のしようがないのだから。
以上が強く感じた点であるが、本書は人類の存在意義について、実に多様な面からの考察が含まれており、
様々なことを考えさせられ、読み終えて大変有意義であったと感謝する次第である。
2023年6月30日に日本でレビュー済み
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私の脳の営みも、脳神経細胞、ホルモン、電子・・・などの「振る舞い」の『おかげ』。私という「意識」も、物理的振る舞いの『おかげ』。
物理的な「振る舞いに『すぎない』」・・・などと「還元主義的な表現」をする必要はないということに気づかせてもらいました。
物理的な「振る舞いに『すぎない』」・・・などと「還元主義的な表現」をする必要はないということに気づかせてもらいました。
2023年6月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
宇宙の生成から生命の誕生、人間の意識など、能弁な語り口で、もう少し厳密に書いて欲しいと思うカ所もあるが、我々の住む世界の全体像の把握には、是非読んだ方が良いと思いました。最近の訳本には酷いものが多いですが、訳もしっかりしていると思います。訳者の学識のせいでしょう。
2022年8月5日に日本でレビュー済み
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生命のオリジンに関する長年の疑問が解消できました。