筆者が電通写真部のロゴマークの刻まれた大判のアルバムを古書店で入手されたことから本書が生まれました。
筆者の石黒敬章さんは、古写真の有名なコレクターで、当方ももっと古い時代の石黒さんのコレクションに以前感心したことがありました。それと比較して本書は時代も昭和ですから、あまり希少性はないと思ったのですが、敗戦時の焼却処分を免れたアルバムというコメントを読むとその貴重さが伝わってきたという内容でした。
確かに昭和8年当時の人物やトピックス、ニュースの写真などが掲載されています。写真資料としては貴重なのでしょうが、昭和８年にさほど思い入れがないせいか、既視感が強く、少し当てが外れた感を受けました。
それよりも「１９３３（昭和８）年のヨーロッパ」での、十数ページにわたるヒトラーの写真や当時のドイツ、そしてフランスや、イタリアのムッソリーニ首相に関する記事や写真は物珍しく、興味を覚えました。
続く「１９３３（昭和８）年のアメリカ」でのルーズベルト大統領、そして喜劇王チャップリンとロイドなど、アメリカから発信された写真情報を、臨場感をもって受け止めました。この時代の写真は普通に見ることができるのでしょうが、ショットとしては初見ですし、当時のアメリカのヘリコプターの写真も含めて珍しい写真資料が多く掲載してありました。
なお、当然ながら、掲載写真には筆者の詳細な解説が付されています。ただ、読者にとって写真のダイレクトに伝える力と比較して、丁寧な解説を読むのは少しまどろこしい感もありました。それだけ写真の持つ力と魅力が優っているのでしょう。
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