スポーツに関わるノンフィクション5編。
そのスポーツにとびきり詳しい方ではないだろうなあと思っていたら、解説に「ずぶの素人としての作者が、未知の分野の人間たちのところへ出かけ」とあり、時間をかけて丹念に取材を重ねていったのだろうという印象をもった。
ノンフィクションやルポルタージュというのはそういうものでしょうと言われるとそうなのだけど、長いもので文庫本70ページ、そのそぎ落とし方が、なんというか、一本の木から仏像を彫っていくような魂の入れ方を感じる。
驚いたのはこれも解説に書いてあったのだが、「別にメモを取るでもなく、(中略)思い出し思い出し書きつけていった」というスタイル。
何気ない会話だから相手もボソッと自分のことを素直に話したのだろうし、聞く側もその時自分に刺さった言葉や目に焼き付いた表情を印象深く記憶させたのだろう。
それは取材のテクニックではなく、自分は何を書きたいのかを常に考える姿勢から生まれてきたのではないかと思う。
本書を読んで、人はみな何のために生きるのか、何故そこまで一生懸命になるのか、ある目的・目標に達したらそこから先はどうするのか、などということを考える。
スポーツに関するノンフィクションではあるけれど、それは書籍の分類であり上梓した結果であって、著者の意図は人をあることに向かって突き動かすものは何なのかということを考えることだろうな、と思った。
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咬ませ犬 (岩波現代文庫 社会 123) 文庫 – 2005/11/16
後藤 正治
(著)
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/11/16
- ISBN-104006031238
- ISBN-13978-4006031237
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2005/11/16)
- 発売日 : 2005/11/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 280ページ
- ISBN-10 : 4006031238
- ISBN-13 : 978-4006031237
- Amazon 売れ筋ランキング: - 879,972位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
それほど日の当たらないスポーツ選手(過去には輝いた人もいる)にスポットライトをあて、思いもやらない視点からのノンフィクション。一発で、後藤正治のファンになりました。
2006年4月3日に日本でレビュー済み
‘91から93年かけて雑誌に発表され、後に単行本されたものを文庫化した作品である。
咬ませ犬と呼ばれたボクサー、公式戦記録もなくブルペン捕手として野球生活から引退しながら中日ドラゴンズの2軍監督になった男、競馬の世界では騎手や調教師などとは違い目立たない存在の厩務員、選手を引退した後も大学の監督として夢を追い続けるラガーマン、尖鋭登山に挑み続ける中年クライマー。
5編の短篇が収められたこの作品の主人公はいずれも一般には全く無名な人物ばかりである。ラグビー選手として有名であった坂田好弘にしても描かれたのは現役時のことではなく、引退後しばらく経ってからであり一般的にはその存在が忘れ去られた頃である。
しかし、彼らは一般的には無名でも、その世界に住む目の肥えた人物にはプロ中のプロと眼に映る人達である。
著者はそんな彼らの姿を、時間を惜しまない丹念な取材で描き出す。著者のどの作品を読んでみても判るのは、彼が「取材のための取材」は行わないということである。主人公となる人物達の日常にそっと近づき雑談を繰り返す。そして、その中からキーとなる言葉を自然に引き出していく。その人物と行動を共にしたりもするのだが、その人物のペースを乱すことなく一歩引いたところから見詰めている。著者には、主人公は取材をして作品を書く自分であるという気負ったところは全く感じられない。その人物のありのままを写し取っていく。
人物を描いたノンフィクション作品には年数が経つと色褪せたように感じるものも少なくないのだが、著者の作品はその対極にある。年月を経ても古さを感じさせなく色褪せることもない。それは著者がその人の“功績”ではなく“人物”を描いているからなのだろう。傑作!!
咬ませ犬と呼ばれたボクサー、公式戦記録もなくブルペン捕手として野球生活から引退しながら中日ドラゴンズの2軍監督になった男、競馬の世界では騎手や調教師などとは違い目立たない存在の厩務員、選手を引退した後も大学の監督として夢を追い続けるラガーマン、尖鋭登山に挑み続ける中年クライマー。
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しかし、彼らは一般的には無名でも、その世界に住む目の肥えた人物にはプロ中のプロと眼に映る人達である。
著者はそんな彼らの姿を、時間を惜しまない丹念な取材で描き出す。著者のどの作品を読んでみても判るのは、彼が「取材のための取材」は行わないということである。主人公となる人物達の日常にそっと近づき雑談を繰り返す。そして、その中からキーとなる言葉を自然に引き出していく。その人物と行動を共にしたりもするのだが、その人物のペースを乱すことなく一歩引いたところから見詰めている。著者には、主人公は取材をして作品を書く自分であるという気負ったところは全く感じられない。その人物のありのままを写し取っていく。
人物を描いたノンフィクション作品には年数が経つと色褪せたように感じるものも少なくないのだが、著者の作品はその対極にある。年月を経ても古さを感じさせなく色褪せることもない。それは著者がその人の“功績”ではなく“人物”を描いているからなのだろう。傑作!!