こういう「小粋な」本の舞台裏を書くのは興ざめになることが多いので、あま
り詳しくは書かぬがいいだろう。
「岩波文庫版あとがき」では、山本進(敬称略 以下同じ)が圓生(これまた
敬称略)のことを、「カチッとした噺をキッチリ聞かせてくれる」とある。
粋で真面目、ややもすれば真面目は「芸」には関してはマイナスになることも
あるだろうが、本書ではその語り口の切れ味、少しもくどくない後味の元になっ
ている。
圓生の方から「小説のようなものを書きませんか」と話を山本に振ったとある。
二人の阿吽の呼吸だろうか、
「師匠、ご自分で喋って下さいよ。僕がまとめて一代記にしますから。」
「ああそうですか。じゃあ私がテープに入れておきますから、それを料理して
下さい」。こんな遣り取りから始まったらしい。
そして、「こちらの方(山本)では初めに、喋ってほしいことを箇条書きにま
とめて渡しておく。そうすると師匠の方では、話の起承転結やつながりを考えて
まとめやすいように吹きこんでくれる。やはりしゃべることに関してはプロだと
思った」。
この「寄席育ち」はこうして始まり、
「『寄席育ち』が世に出た価値を一言で言えば、明治から大正、戦前戦後と一
人の落語家が、その目で見た演芸界を語っていること」なのだという。
また、「この本は…圓生師匠のしゃべったものをまとめたので、師匠の口調が
そのまま残っている」。なるほど。
まあ、こんな本の内容を細かに語ると,それこそ無粋の極み。
延広真治は本書の素晴らしさを、圓生が自分の芸への精進を自ら語るところに
あると言う。
「芸の中で育って生涯を終わる」つもりの圓生は、「永い間売れなかった」。し
かし、満州から戻って「噺がうまくなった」と自信がつき、やがては「本当に芸
が沸騰ってきたのは昭和三十年すぎてから(つまり圓生、55歳を過ぎてから)」
という。面白いのが噺の練習をしすぎると、「噺が箱に入る」ことがあるらしい。
型にはまってしまった芸の面白みのなさなのだろう。
生い立ちのちょっとした謎めいたことも、軽くさらりと語るのは素晴らしい。
決して韜晦するようなこともなく、気負わずに語っている。
「芸」には全く縁のない私だが、本書には「語り」という実に個人的な技量を、
十分に味わせてくれる。かしこまって読まずに、気の向いたときに噺を聞く要領
で気儘ページを繰るのがいい。
圓生という噺家は多くの書を上梓していますね。
落語は全くの門外漢で不明を恥じねばなるまい。
1965年に最初の版が発表され、2021年に岩波現代文庫版で再発行。
読み継がれているには訳がある。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥1,738¥1,738 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥1,738¥1,738 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥675¥675 税込
ポイント: 7pt
(1%)
配送料 ¥257 6月3日-5日にお届け
発送元: お宝サンタ 販売者: お宝サンタ
¥675¥675 税込
ポイント: 7pt
(1%)
配送料 ¥257 6月3日-5日にお届け
発送元: お宝サンタ
販売者: お宝サンタ
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
六代目圓生コレクション 寄席育ち (岩波現代文庫 文芸 333) ペーパーバック – 2021/6/17
三遊亭 圓生
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,738","priceAmount":1738.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,738","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GqsweX%2BFdPfaYm8HNybdomYu%2B5gvIPeXks8e2WFxkSY5kAnPoXOOeLLgSH%2FcVM02y3Q9IMaGhj3DJMTF8RKdf3S%2BpbypF%2BVr%2FA3jT1c942%2F6KT5cbzhB11IfylD6hz9YTmtmz5KZnto%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥675","priceAmount":675.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"675","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GqsweX%2BFdPfaYm8HNybdomYu%2B5gvIPeX%2BCpfXmfWu6M9GxYQE%2FngPNynWTwenB%2Bbil9E8Tj%2BYRY1zcgOfzsmkbW59cxCQmU3zfq420ci4%2BcuJPYqAIdLrfhcR%2B8Df5QCqwafEFwG0wIQ2zX1G0pb1m4kd0WLtT2Gk%2BL9hkisAzYHmckvcIxGzw%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
明治・大正・昭和の芸界を生き抜いてきた名人・六代目圓生。本書はその代表作である。生い立ち、修業時代、芸談、噺家列伝など、芸一筋の人生をつぶさに語る。聞き手・山本進によって、圓生の口跡そのままに綴られ、語りの妙を堪能できる。さらに綿密な考証が施され、落語史・芸能史の資料としても貴重である。解説=延広真治
- 本の長さ526ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2021/6/17
- 寸法10.5 x 2.3 x 14.8 cm
- ISBN-104006023332
- ISBN-13978-4006023331
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 六代目圓生コレクション 寄席育ち (岩波現代文庫 文芸 333)
¥1,738¥1,738
最短で6月3日 月曜日のお届け予定です
残り2点(入荷予定あり)
¥1,549¥1,549
最短で6月3日 月曜日のお届け予定です
残り2点 ご注文はお早めに
¥1,606¥1,606
最短で6月3日 月曜日のお届け予定です
残り1点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
三遊亭圓生(Ensho Sanyutei)
1900-1979年.落語家.子ども義太夫を経て落語家に転向,橘家圓童で初高座.20年橘家圓好で真打.41年六代目三遊亭圓生を襲名.45年春,志ん生らと共に満州に渡り慰問公演を行い,大連で終戦を迎える.戦後は完成度の高い高座を披露.押しも押されもせぬ大看板として活躍.65-72年落語協会会長.68年芸術選奨文部大臣賞,72年芸術祭大賞,73年勲四等瑞宝章を受ける.主な著書に『寄席育ち』『明治の寄席芸人』『寄席楽屋帳』『寄席切絵図』(いずれも青蛙房,のち岩波現代文庫),『圓生全集』(青蛙房),『圓生江戸散歩』(集英社)など多数.
1900-1979年.落語家.子ども義太夫を経て落語家に転向,橘家圓童で初高座.20年橘家圓好で真打.41年六代目三遊亭圓生を襲名.45年春,志ん生らと共に満州に渡り慰問公演を行い,大連で終戦を迎える.戦後は完成度の高い高座を披露.押しも押されもせぬ大看板として活躍.65-72年落語協会会長.68年芸術選奨文部大臣賞,72年芸術祭大賞,73年勲四等瑞宝章を受ける.主な著書に『寄席育ち』『明治の寄席芸人』『寄席楽屋帳』『寄席切絵図』(いずれも青蛙房,のち岩波現代文庫),『圓生全集』(青蛙房),『圓生江戸散歩』(集英社)など多数.
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2021/6/17)
- 発売日 : 2021/6/17
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 526ページ
- ISBN-10 : 4006023332
- ISBN-13 : 978-4006023331
- 寸法 : 10.5 x 2.3 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 391,458位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 569位岩波現代文庫
- - 2,504位ステージ・ダンス (本)
- - 57,208位趣味・実用
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昭和50年代の落語三遊協会分裂のころ圓生師のライヴを追いかけてよく聞きました。その高座でよく明治大正期の名人や楽屋の逸話を話されていましたがこの本で再度それらのエピソードを振り返りそうした環境で育って芸を磨いてきたのだと再認識しました。談志など大きな噺などできないくせに圓生は「写実芸」だとか「滑稽さがない」とか屁理屈を述べるへたくそが多いがやはり三遊派の伝統を伝える人情話や芝居噺を語る噺家の流れは六代目を以て途絶えたのかと無念さを痛感したところです。
2021年7月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この一冊で圓生の全てがわかる。
落語家の自伝として最高。面白かった。
落語家の自伝として最高。面白かった。
2023年2月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小さい頃、TVでよく師匠のお顔を拝見しました。一番印象に残っているお話は、笑点でのお話で、目の不自由な高齢のあんまさんが、吉原の古参のお女郎に有金全部を騙し盗られる話でした。
夏の怪談よりももっと怖かったです。
そんな事を思い出しながら、楽しく読ませていただきました。
夏の怪談よりももっと怖かったです。
そんな事を思い出しながら、楽しく読ませていただきました。
2021年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昭和の名人三遊亭圓生の一代記。
実は学生時代から欲しかったが大学生の趣味の本で3000円は高かった…
池袋の書店で物欲しそうに背表紙を見ていた記憶がある。
あれから20年以上。何事も1流好みの圓生師匠に相応しく『岩波現代文庫』で復刊。落語家で岩波書店とは大圓朝にならぶ快挙である。
内容は圓生師匠の幼少時代からの記憶力に驚く。6歳頃の寄席の出演者、噺の内容、出し物を詳細に覚えており資料的価値は極めて高い。また落語家らしくクスぐりを交え疲れさせない、飽きさせない工夫がある。ただし落語家の一代記としては空前絶後の大著であるため読むにはそれなりの覚悟は必要。
一通り通読して気づいたが、明治、大正、昭和編において芸に悩み、お金に困った記述が長い。
しかし満州から帰還し三遊亭圓生の芸が開眼。昭和25年以降の「名人三遊亭圓生」については実にサラッと終えてしまっているのである。
自分の活躍を語るのが照れくさく野暮だと感じたのか?
そこが六代目三遊亭圓生のカッコ良さかもしれない。
実は学生時代から欲しかったが大学生の趣味の本で3000円は高かった…
池袋の書店で物欲しそうに背表紙を見ていた記憶がある。
あれから20年以上。何事も1流好みの圓生師匠に相応しく『岩波現代文庫』で復刊。落語家で岩波書店とは大圓朝にならぶ快挙である。
内容は圓生師匠の幼少時代からの記憶力に驚く。6歳頃の寄席の出演者、噺の内容、出し物を詳細に覚えており資料的価値は極めて高い。また落語家らしくクスぐりを交え疲れさせない、飽きさせない工夫がある。ただし落語家の一代記としては空前絶後の大著であるため読むにはそれなりの覚悟は必要。
一通り通読して気づいたが、明治、大正、昭和編において芸に悩み、お金に困った記述が長い。
しかし満州から帰還し三遊亭圓生の芸が開眼。昭和25年以降の「名人三遊亭圓生」については実にサラッと終えてしまっているのである。
自分の活躍を語るのが照れくさく野暮だと感じたのか?
そこが六代目三遊亭圓生のカッコ良さかもしれない。