本書では労働法の概要が非常に分かりやすく説明されてあり、頭の中で要点を整理することができました。大変お薦めです。
なお、本書読了後に、関連して米国政府による「年次改革要望書」の96年版を参照されることを併せてお薦め致します。
米国政府による「年次改革要望書」とは、日本政府に対し1994〜2008年の各年に提出されていた要望書のことです。現在でも米国大使館のウェブサイトには、英文の他、和訳も掲載されてあります。
ここでは、かつて第2次橋本龍太郎内閣に提出された96年版の内、「雇用政策」の部分(和訳 20〜21頁)を、ご参考までに全文そのまま書き写します。
ずいぶん昔の文書ですが、本書を読まれた後にこちらを参照されると、様々感慨深く感じられるのではと思います。
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3.雇用政策
外国企業は能力のある日本人従業員を採用・確保する上で、また外国人幹部を日本の高コストのビジネス環境に配置する上で多大な困難に直面している。日本の労働市場は、全般的に労働力コストを高くし、労働者の移動を妨げるある種の特徴を持っている。日本の年金/退職システムは従業員を現在の職業に縛りつける様に働く。雇用保障法の下で、複雑な規制システムによって、日本政府は、民間の職業紹介業を厳しく制限している。規制緩和の実施は、経済全般において、人々に適職に付く機会を与え、競争的な経済の中で将来の職の確保を助け、経済のリストラを促進し、特に困難な状況にある外国企業を含むすべての企業に対して労働力状況を緩和する上で役立つ。
a. 日本の年金システムと退職金制度は、従業員が退職金などを持ったまま他の企業に転職し得るような制度に変えるべきである
b. 民間職業紹介業の許可は5年に延長すべきである
c. 民間職業紹介業の認可は企業別に与えられるべきであり、同じ企業の複数の営業所が個別に認可を所得しなければならないという規制をなくすべきである
d. 職業斡旋業者の認可に関する全ての情報は、要請に応じて労働省が提供すべきである
e. 民間職業紹介業の紹介料に、日本政府が一定の最高限度を設けるのではなくて、民間企業が基本的な、市場の実体に応じた料金体系を提供し、政府は詐取的なあるいは過重な料金を課す個々のケースに対してだけその権限を発動すべきである
f. 民間職業紹介業者(臨時労働者派遣サービスを含む)が営業できる雇用種別と職業分類に関する制限は撤廃すべきである。もし残す場合は、禁止される「ネガティブ・リスト」とすべきである
g. 民間職業紹介業者によって雇われている専門家がリクルートしたり、相談に乗ることができる職種の制限(例えば彼らが直接経験を持っている職種に限る)は撤廃。もし制限を残す場合は、「ネガティブ・リスト」とすべきである
h. 民間職業紹介業の広告に関する規制は廃止し、詐術的な広告に対する一般的な規制の下に包括されるべきである
i. 労働者派遣業(臨時雇用紹介業)の責任ある従業員数と派遣された従業員数との比率に関する規制並びに派遣業の従業員を直接経験を持つ職業種別だけに制限する規制は撤廃されるべきである
j. 職業紹介及び派遣の両サービス業に対する最低床面積に関する規制を撤廃し、両種類のサービスを提供しようとする企業に対しても合理化されるべきである
k. 職業紹介と従業員派遣サービスの両方を提供しようとする企業に対して、各々の目的別に事務所と従業員を持つことを義務づける規定は撤廃されるべきである
l. 民間職業紹介業が合法的な求人者・求職者の氏名を明らかにすることを求める政府の要求又は慣習は撤廃されるべきである
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例えば、上記 f 項では労働者派遣における規制撤廃が要望されていますが、この要望から3年後の99年には労働者派遣業法が改正された様です。このことについては、もしも96年当時、米国政府が労働者派遣における規制撤廃などではなく、もう一歩進んで正社員の解雇規制緩和を強く「要望」していたとしたら、その後の法改正も違った方向に進んでいたのではと感じてしまいます。そして、そうであったとしたら、ほぼ20年後である現在、日本は比較的安定した余分な正社員と不安定な派遣労働者が併存する様な社会にはなっていなかったものと思います。もっとも、その場合、今頃は日本企業の競争力が回復し始めていて、米国の国益を損ねてしまっていたかもしれないですが。
いずれにしても、本書では労働法全般が非常に分かりやすく説明されており、大変お薦めです。
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労働法入門 (岩波新書) 新書 – 2011/9/22
水町 勇一郎
(著)
日本の労働法は、どのような理念と特徴をもつものなのか。深刻な問題に直面している労働者たちに、どう役立つのか。採用・人事・解雇・賃金・労働時間・休暇・雇用差別・労働組合・労働紛争などの基礎知識をはじめ、欧米との比較や近年の新しい動きも満載。労働法の全体像をやさしく説き明かす、社会人のための入門書。
- ISBN-104004313295
- ISBN-13978-4004313298
- 出版社岩波書店
- 発売日2011/9/22
- 言語日本語
- 寸法11 x 1.1 x 17 cm
- 本の長さ256ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2011/9/22)
- 発売日 : 2011/9/22
- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 4004313295
- ISBN-13 : 978-4004313298
- 寸法 : 11 x 1.1 x 17 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 585,120位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,458位岩波新書
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2014年5月9日に日本でレビュー済み
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2013年9月9日に日本でレビュー済み
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国家試験対策にはならないテキストですが、労働法の初歩的な部分の復習には充分でした。
2017年5月18日に日本でレビュー済み
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自分なりの整理として読んだ。
水町先生の労働者に対する思いやりが感じられた。
今後労働相談を受ける際の参考としたい。
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今後労働相談を受ける際の参考としたい。
2019年10月20日に日本でレビュー済み
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この本もすごくいいですが、水町先生の詳解労働法も白眉です。時間のある方は是非読んでください。とても詳しいです。
2016年10月24日に日本でレビュー済み
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社内行事の企画運営をボランティアと称して無賃でやらせる会社の言いなりにならないために労働法を学び始めた。分かりやすく説明されていると思う。
2015年6月8日に日本でレビュー済み
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労働法の背景、歴史、考え方、課題が要領よく書かれています。
また、外国との比較が興味深いです。日本の労働環境や労働法の特徴がすっきり理解できます。
好著ですよ。
また、外国との比較が興味深いです。日本の労働環境や労働法の特徴がすっきり理解できます。
好著ですよ。
2015年2月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
労働法の入門ということですが、文化の違いなどを取り上げて、国ごとに価値観が異なる、相対的な法規であることをかなりしっかり書かれていると感じます。
法律絶対信者には、つまらない内容でしょうね。しかし、労働法の、面白さ、難しさとしては、一通りのことは学べます。
法律絶対信者には、つまらない内容でしょうね。しかし、労働法の、面白さ、難しさとしては、一通りのことは学べます。
2015年4月11日に日本でレビュー済み
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法律は苦手なのですが、本当にわかりやすいです。
労働法に規定されていることはもちろん、海外との比較など「労働法」について、ちょっと語れるようになります。
水町さんも言っていたのですが、日本の労働の問題の多くは、労働者が労働法を知らずに起きることらしいです。この本を読んで勉強しましょう。労働者がこんなにも守られていたんだ、ということに驚くと思います。
この本や知識こそ社会に出て武器になるものだと思います。
労働法に規定されていることはもちろん、海外との比較など「労働法」について、ちょっと語れるようになります。
水町さんも言っていたのですが、日本の労働の問題の多くは、労働者が労働法を知らずに起きることらしいです。この本を読んで勉強しましょう。労働者がこんなにも守られていたんだ、ということに驚くと思います。
この本や知識こそ社会に出て武器になるものだと思います。