「人間は神を創造した。その逆はまだ証明されていない。」
という箴言を遺したのは、セルジュ・ゲンズブールというフランスの歌手、作曲家ですが、
老境に達した2人の精神科医が、学生時代に交わした「神は存在するか否か」の議論を再開するという、企画が抜群に素晴らしいです。
世界中の医者の少なくとも過半数が、神や死後の世界の存在を信じているというニュースをネット上でチラッと見かけたことがあるのですが、
こういった闊達な議論は、私としては大いに歓迎です。
ただ、極めてセンシティブな話題のため、お蔵入りの本になってしまったのでしょうか。
それと一点、気になった箇所としては、「当時、『神は死んだ』というニーチェの言葉に強い影響を受けていたぼくは、
すぐに、神は存在するかの議論を、かれに吹っかけた。」の一文は、「ん??」となりました。
「神は死んだ」のであれば、少なくとも以前は生きていたということであり、存在していたということになる。
故に、神は存在するか否かの議論を吹っかけることは、無意味である。
ニーチェは無神論者ではなく、なだ先生はニーチェのニヒリズムの理解に誤謬があるのでは??と思いましたが、
本自体の全般的な出来栄えが良いですし、重箱の隅をつつくような真似は大人気ないでしょう。
素直に★5評価を進呈させていただきます。
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神、この人間的なもの: 宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書 新赤版 806) 新書 – 2002/9/20
なだ いなだ
(著)
大学時代の友人で精神科医となった2人が「人生を生きてきた末」に,かつて交わした議論を再開する.神は本当にいるのか? そして,現代を新しい形の宗教に呪縛された時代と見ながら,教義や信仰のあり方からではなく,「信じる」ことを求めてしまう人間の方から,宗教に光を当てる.信仰,精神医療から社会,歴史まで示唆に富む対話篇.
- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2002/9/20
- ISBN-104004308062
- ISBN-13978-4004308065
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2002/9/20)
- 発売日 : 2002/9/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 218ページ
- ISBN-10 : 4004308062
- ISBN-13 : 978-4004308065
- Amazon 売れ筋ランキング: - 355,570位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2023年7月25日に日本でレビュー済み
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2022年11月23日に日本でレビュー済み
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まさに私が考えたかったテーマ。なだいなだ氏が70才を越え、何年もあたためて書いた本。死が近づいていることをも意識して書いたのだろう。
さりげない書き方をしているが、「宗教」の大もと(3大宗教の始祖である人間たち)から考え、宗教とは何かを論じている。大胆な考察をこんなにも分かりやすく書いているのは、本物の頭の良さ。
元々、始祖たちが平和を求め説いたものを、弟子たちが宗教に仕立て上げ、3大宗教がどのようにして歪められ、小さな部族社会から大きな国にするのに利用されてきたかなど論じられている。多くの人に読んでいただきたい。廃刊になってしまっているのがつくづく惜しい。
さりげない書き方をしているが、「宗教」の大もと(3大宗教の始祖である人間たち)から考え、宗教とは何かを論じている。大胆な考察をこんなにも分かりやすく書いているのは、本物の頭の良さ。
元々、始祖たちが平和を求め説いたものを、弟子たちが宗教に仕立て上げ、3大宗教がどのようにして歪められ、小さな部族社会から大きな国にするのに利用されてきたかなど論じられている。多くの人に読んでいただきたい。廃刊になってしまっているのがつくづく惜しい。
2011年5月28日に日本でレビュー済み
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著者である”なだ・いなだ”氏が学生時代からの旧友のT氏との会話が軸となって、神について宗教について精神科医ならではの視点で語られている。
両氏が繰り出す宗教史の豊富な知識や長年精神科医として経験して培われた思想や哲学に、読者は読みすすにしたがい引き込まれてゆく。
三大宗教の始祖である、ブッダ、イエス、ムハンマド、を対比させながら始祖である3人の思想の違いや共通するもなどについてT氏の語ることなどが面白い。
最終章「精神科医は分別を超えねばならぬ」で、両氏が始めた患者を外に連れ出す療法は、診察室では病気の話ばかりだったが、診察室ではできなかった人間かんけいが生まれ人間として話し合った時に、なだ・いなだ氏が感激したとことに触れている。
両氏がチェコの医師がやっていたことを真似しただけだと語っていたが、当時精神科の患者は、鍵のかかった部屋に閉じ込められてたのが当たり前だった時代だったから画期的なことだったのだと思う。
そのあとT氏は、「精神科医は診察室を飛び出さなければならないと思ったのさ。新しい宗教は心理学を取り入れていく。ファシズムはその先駆けだった。敗戦で、誇りを失い、劣等感の塊になり、そうして賠償の重荷を負わされて絶望していたドイツ人たちに、かれらは、人工的な狂気で集団治療を試みた。民族という妄想でね。」
B氏(なださん)は、「アーリアン人種という妄想だな」と応えた。
T氏、「ワーグナーまで使われた。劣等感にとらわれ、なんの目標ももてない人間達を、神話につなげる。おれたちは神々の子孫だ。だれだって神の子孫なんだけど。そしてゲルマン民族という名の集団を作った。ナチはその上に、さらにアーリアン人種優位という妄想を作り上げたのさ。」
B氏、「おれたちは、おれたちで、天孫民族の子孫という優越人種の神話をつくった。ナチと同心円を描けるな。」
このあとこのようなインテリだった二人も、日本国家という集団のなかで妄想のうずに巻き込まれたことを吐露している。
本書では、両氏がイデオロギーも宗教も同根であり、集団になると狂気に変貌してゆくことなどと危惧していることを読み取ることができた。
戦前、戦中でも洗脳という狂気に犯されながら日本でも少数の人達が反戦を唱えたばかりに、投獄されたり、獄死した人達もいた事実や、戦地から復員してきた兵士のなかで心を病んで精神病院に少なからず入院していた事実などにも触れてほしかった。
両氏が繰り出す宗教史の豊富な知識や長年精神科医として経験して培われた思想や哲学に、読者は読みすすにしたがい引き込まれてゆく。
三大宗教の始祖である、ブッダ、イエス、ムハンマド、を対比させながら始祖である3人の思想の違いや共通するもなどについてT氏の語ることなどが面白い。
最終章「精神科医は分別を超えねばならぬ」で、両氏が始めた患者を外に連れ出す療法は、診察室では病気の話ばかりだったが、診察室ではできなかった人間かんけいが生まれ人間として話し合った時に、なだ・いなだ氏が感激したとことに触れている。
両氏がチェコの医師がやっていたことを真似しただけだと語っていたが、当時精神科の患者は、鍵のかかった部屋に閉じ込められてたのが当たり前だった時代だったから画期的なことだったのだと思う。
そのあとT氏は、「精神科医は診察室を飛び出さなければならないと思ったのさ。新しい宗教は心理学を取り入れていく。ファシズムはその先駆けだった。敗戦で、誇りを失い、劣等感の塊になり、そうして賠償の重荷を負わされて絶望していたドイツ人たちに、かれらは、人工的な狂気で集団治療を試みた。民族という妄想でね。」
B氏(なださん)は、「アーリアン人種という妄想だな」と応えた。
T氏、「ワーグナーまで使われた。劣等感にとらわれ、なんの目標ももてない人間達を、神話につなげる。おれたちは神々の子孫だ。だれだって神の子孫なんだけど。そしてゲルマン民族という名の集団を作った。ナチはその上に、さらにアーリアン人種優位という妄想を作り上げたのさ。」
B氏、「おれたちは、おれたちで、天孫民族の子孫という優越人種の神話をつくった。ナチと同心円を描けるな。」
このあとこのようなインテリだった二人も、日本国家という集団のなかで妄想のうずに巻き込まれたことを吐露している。
本書では、両氏がイデオロギーも宗教も同根であり、集団になると狂気に変貌してゆくことなどと危惧していることを読み取ることができた。
戦前、戦中でも洗脳という狂気に犯されながら日本でも少数の人達が反戦を唱えたばかりに、投獄されたり、獄死した人達もいた事実や、戦地から復員してきた兵士のなかで心を病んで精神病院に少なからず入院していた事実などにも触れてほしかった。
2015年3月20日に日本でレビュー済み
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一度読んだ本ですが、失ってしまって再度購入しました。昨今のあやしい宗教の問題が世界中に起こっていますが、この本でも読んで宗教についてもう一遍考えなおすことが必要ではと思います。
2019年10月19日に日本でレビュー済み
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氏が他界してから6年が経過し,改めて読み直してみた.神への傾斜には,上りと下りの双方があると思う.氏の論説は高い識見を背景にして分析は鋭い.努力に裏打ちされた上りの傾斜を感じさせる.しかし背を突かれ,転げ落ちてゆくような神への傾斜をこの著作から読み取ることは難しい.他界された後にレビューすることを申し訳なく思うが,信仰者にとって,何か最も大切なものを忘れないためと容赦を願いたい.
2014年8月14日に日本でレビュー済み
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評価が遅くなり申し訳ございません。
対応も良く、本の状態も大変良かったです。
また、機会がございましたら宜しくお願い致します。
対応も良く、本の状態も大変良かったです。
また、機会がございましたら宜しくお願い致します。
2006年2月23日に日本でレビュー済み
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この本を読み終えて、まず最初に思ったことは自分の歴史認識の
甘さだった。本文を読みながら、ハッと気付かされることが非常に
多かった。「宗教」に対する自分の中の誤解をハッキリと確認する
ことができた。誤解というよりも、漠然としか宗教というものを捉
えていなかった。
多くの日本人と同様、特別に「〜教」「〜宗」に帰依しているわ
けではないが、知人・親戚のお葬式でなぜかお坊さんの「仏様は〜」
という話を何気なく聞き、皆と一緒に手を合わせていることに、以
前から「何か妙だな」という感覚を持っていた。そういう長年の疑
問に対する一つの解答を教えてもらったように思う。
ふたりの精神科医が、対話の中でどういった結論に達し今後の課
題を挙げているのか、ぜひ本書を読んで確認してみてほしい。大変
オススメできる書籍である。。。オワリ
甘さだった。本文を読みながら、ハッと気付かされることが非常に
多かった。「宗教」に対する自分の中の誤解をハッキリと確認する
ことができた。誤解というよりも、漠然としか宗教というものを捉
えていなかった。
多くの日本人と同様、特別に「〜教」「〜宗」に帰依しているわ
けではないが、知人・親戚のお葬式でなぜかお坊さんの「仏様は〜」
という話を何気なく聞き、皆と一緒に手を合わせていることに、以
前から「何か妙だな」という感覚を持っていた。そういう長年の疑
問に対する一つの解答を教えてもらったように思う。
ふたりの精神科医が、対話の中でどういった結論に達し今後の課
題を挙げているのか、ぜひ本書を読んで確認してみてほしい。大変
オススメできる書籍である。。。オワリ
2006年10月26日に日本でレビュー済み
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ある日、B(著者)のところへ大学時代の友人で同じ精神科医のTが訪問してくる。Tはカトリック。Bは無神論者。
長年、カトリックを信仰していたTに対してBは《お前はまだ、神様なんてものを信じているのか?》と聞こうとするやいなやTは「じつは、神様がいるかどうかは分からない。むしろ、いないんじゃないか、と思う気持ちの方が強いな」と答え、Bを驚かせる。そして、その入信の動機から現在の宗教観までを語りだす。
この本は宗教をめぐる二人の精神科医の対話という形式で書かれた一つの宗教観である。主にB(著者)が聞き手となりTが話し手となっているが、おそらくTの発言も全体を通して著者の宗教観を著したものであろう。
非常に読みやすく、内容もわかりやすい。信仰のある人は特に、著者の宗教観にそのまま受け入れがたいものを感じる面も多々あるが、概して、信仰、宗教というものについて考えるよいきっかけになる本だと思う。
長年、カトリックを信仰していたTに対してBは《お前はまだ、神様なんてものを信じているのか?》と聞こうとするやいなやTは「じつは、神様がいるかどうかは分からない。むしろ、いないんじゃないか、と思う気持ちの方が強いな」と答え、Bを驚かせる。そして、その入信の動機から現在の宗教観までを語りだす。
この本は宗教をめぐる二人の精神科医の対話という形式で書かれた一つの宗教観である。主にB(著者)が聞き手となりTが話し手となっているが、おそらくTの発言も全体を通して著者の宗教観を著したものであろう。
非常に読みやすく、内容もわかりやすい。信仰のある人は特に、著者の宗教観にそのまま受け入れがたいものを感じる面も多々あるが、概して、信仰、宗教というものについて考えるよいきっかけになる本だと思う。