およそ30年前、著者である呉先生の弟子に当たる高名な教授から本書をいただきました。ギリシャ・トルコ・イタリアでのロケではいつも本書を持参し、その後、アテネで紛失しました。
久しぶりにサッフォーを読んでみましたが、訳文が駄目ですね。天文の知識が欠如しています。
「(略)月は沈み、昴も沈み、丑三つ時の夜がさろうとしている中、私だけが眠っている」と歌い上げた詩を南国の窓越しの光景として解説していますが、丑三つ時前に昴が沈むのはBC600年ならば冬(12,1月)であり、月の状態は夜中前に沈むのですから、上弦前の月の位相となります。更にすばる食も起こるのですから、月と昴の位置関係も気になります。つまり、昴の位置と月(白道)との赤経赤緯差が気になるのです。
いずれにしても、南国というイメージと冬は合致しません。冬のレズボス島は非常に寒いです。悪天候が多いです。古代なら尚更でしょう。
また、「(略)星は明らかな 月の周りに輝いた、、、」
では、満月の月明かりで星は見えにくいのに、明らかなというのは、明らかにオカシイです。
曹操も、月(曹操)が明るくて星(他の英雄たち)が暗くなっていき、カササギ(劉備)は南へ飛んでいく。と詠んでいますし、漱石も同様に書いていたかと思います。この段は「イリアス」8巻555行に勢い盛んなトロイア軍が城外に陣を敷き、その松明の明るさが半端ない状態で、トロイア勢の勢いを松明に例え、星の輝きとして説いた表現が影響しています。加えて月をアカイア軍、星々をトロイア側に例えつつ、本来は月明かりで弱くなるのに、トロイア軍が活発すぎて、本来は暗くなるはずの星あかりを明るく感じてしまった状態をホメロスは歌い上げているのです。ですから、この特殊な状態を、サッフォーの月明かりの歌で「星は明らかな」は使用できないと思います。ローブの英訳が明らかに正しいです。
総じて文系学者たちは天文音痴ですし、一般の方たちもまた然りですね。
後の「花冠」でローマ詩を追加するよりも、唯1作、「ダナエー」を欠いたのでは、花冠も解けよう。。。
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増補 ギリシア抒情詩選 (岩波文庫 赤101-1) 文庫 – 1952/6/25
呉 茂一
(翻訳)
- 本の長さ283ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1952/6/25
- 寸法10.6 x 1.2 x 15 cm
- ISBN-104003210115
- ISBN-13978-4003210116
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店; 増補版 (1952/6/25)
- 発売日 : 1952/6/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 283ページ
- ISBN-10 : 4003210115
- ISBN-13 : 978-4003210116
- 寸法 : 10.6 x 1.2 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 743,119位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年4月23日に日本でレビュー済み
古語や雅語を見事に駆使した、翻訳史上に残る傑作です。紀伊国屋書店から出版された「花冠」を復刊した岩波文庫版もありますが、この旧版には遠く及びません。簡にして要を得た、採録された詩人たちの解説も素晴らしい。呉先生の翻訳は、余りにもその価値を世間から認められていません。残念でたまりません。是非一度ご一読して、稀代の名訳詩集を賞玩して下さい。
2016年5月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古代ギリシャの人々の生活感情や価値観などが垣間見えてとても興味深かったです。また、私はアポローンが大好きなのですが、アポローンのエピソードにまつわる歌(ピューティア祝勝歌)も入っており日本語訳で読めるとは思っていなかったのでとても嬉しかったです。