薬は、受容体と結合することで、天然の化学物質と似た働きをしたり、逆に遮断したりする(ものが多い)という基本に沿って、高血圧と心臓病、潰瘍、自己免疫疾患、うつ病、統合失調症といった現代でも重要な病気への薬や、細菌、真菌、ウイルスへの薬と耐性などが、薬理学の知識のない人向けに滑らかに解説される。訳も読みやすい。
そして本書の最大の特長は、この流れから極めて自然に、快感をもたらす薬についても解説されていることであり、とりわけ大麻の記述は興味深い。大麻の有害性の最たる部分は、喫煙行為そのものにある可能性があり、そこまで危険視する必要はないかもしれない。英国の警察は、大麻取り締まりに時間と資源を大量に使うなら、それより明らかに有害なハードドラッグ(ヘロイン、コカイン)に資源を投入すべきという指摘もまっとう(詳しくは同著者の『マリファナの科学』参照)。カリフォルニアでの医療麻薬の投票は記憶に新しいし、日本での議論にも有用だろう。
最後は、裕福な人にしか手の届かないぜいたく品としてのサービスを提供する方向になりつつあるヘルスケア産業に対して警鐘を鳴らして締めくくられるが、この点については議論が尻切れトンボの感がある。
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薬 ― DRUGS (〈1冊でわかる〉シリーズ ― Very Short Introductions日本版) 単行本 – 2003/6/6
レスリー・アイヴァーセン
(著),
廣中 直行
(翻訳)
薬物と人間のかかわりは深く,今や生活から切り離せない.さまざまな薬が心臓病やガンとの闘いに用いられて人々を救う一方で,タバコのニコチンや麻薬といった,快楽を与えて依存症をおこす薬物が問題ともなっている.薬はどうやってはたらくのか? 薬の歴史から説き起こし,作用のメカニズムから新薬の開発方法まで,幅広く解説する.
- 本の長さ181ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2003/6/6
- ISBN-104000268635
- ISBN-13978-4000268639
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
人々を病気から救う薬がある一方で、快楽を与えて依存症を起こす薬物が問題ともなっている。薬は心身にどうやってはたらきかけるのか? 薬の歴史から説き起こし、作用のメカニズムから新薬の開発方法まで幅広く解説する。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2003/6/6)
- 発売日 : 2003/6/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 181ページ
- ISBN-10 : 4000268635
- ISBN-13 : 978-4000268639
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,026,506位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 37,873位医学・薬学・看護学・歯科学
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