本書は,フタバを取材したドキュメンタリーです.フタバを俯瞰し,興味本位で見る目線でなく,著者自らも今のフタバに関わっていると考える,つまり自分もフタバの当事者だとする点でこの本はユニークです.著者は東京人です.その東京人は福島第一原発の電力を消費する人間でした.福島第一の恩恵に浴しながらフクシマを客観視できないという前提です.だからこそ避難者と一つになれます.先行レビューの一人は双葉のご出身で,双葉の人間は知人には話しかけるが,よそ者には話しかけないとあります.著者,船橋淳さんが根気よく取材しているうちに,双葉町町長,川井戸克隆さん以下,多くの方々は胸襟を開いて自らの苦悩を赤裸々に語り始めました.フタバの避難所は,フタバから250kmも離れたところの埼玉県加須市にある一つの廃校,県立騎西高校,ここです.ここに町役所もろとも避難してきた人たちの一人は次のように語りました.
みんなニコニコしてるけどよお.やっぱり他人だべ.メシを食うときも,寝るときもいっしょだからな.ストレスは貯まるわよお.
51もある教室のそれぞれに畳を敷き,フタバの人たちは分室して生活を始めました.町役場は元職員室,町長室は元校長室を当てます.町民は着の身,着のまま,命からがら逃げてきた.ここでは食事は一日三度配られるが,着替えもない.当座の金もない --- .そんな状態で長期生活を強いられたのです.双葉町は原発関連の金で潤ってきました.被害に遭っても自業自得だと冷血にいう人もいる.しかし,双葉の町民は故郷を喪った.何もかもなくした.双葉がフタバとなると知れば,誰も選択しない愚の骨頂の選択だったのです.日本全体が愚に被われていた.原発の情報開示がなされなかったからです.国政に不都合な諸々は国民に伝えない.それがこの国のやり方.今も昔もそうでした.長川井戸克隆さんは双葉から何が奪われたかと問われて次のように答えました.
町のすべてです.自然,空気,歴史,空間,風土,匂い,風,海,川,鳥,動物,植物,四季,人々,成長,音,動き,等々.人間として生活する必須条件,お金に換えられない多くの物が奪われました.東電・国が言ってきた「絶対に事故は起こらない」という信頼関係が一番失われたものです.
2011.3.11以来,既に2年3ヶ月以上経過しています.しかし避難民の苦境に改善の気配は見られません.補償,賠償も進捗せず,帰郷は何時になるのか,もしかして故郷を棄てなければならないのか,国は沈黙しています.町民は宙ぶらりんこの状態のまま ---- .国は避難民をほとんど無視している,私はそのように感じます.吾らはヒロシマとナガサキを学びませんでした.今回フクシマも学ばないとしたら,倫理的退廃は極まったと後世の人たちは断じるでしょう.三瓶恵子著「人を見捨てない国,スウエーデン」という本が岩波から出ています.この書名は今の日本と真逆を示す.長川井戸町長さんは「いずれ双葉町独自の事故調査委員会を作って当時与えられた情報とその結果の動きを克明に記録したい」と言われました.今は「双葉の将来」というタイトルで草稿を執筆中だそうです.是非,双葉町独自の事故調を上梓して下さい.執筆中の原稿も発刊される日を待ちます.本書と同名の映画が既に公開されているそうですが,私は見る機会を失しています.この映画のDVD化は未だでしょうか.
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フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会 単行本(ソフトカバー) – 2012/10/17
舩橋 淳
(著)
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3月11日以降、町全体が警戒区域となり、町ごと埼玉県に避難した福島県双葉町。その後一年のあいだ、埼玉県加須市・旧騎西高校の避難所に密着した映画作家が見たものは。原発立地自治体である町の歴史、住民の苦しみ、国への思いと行動が織りなす現在とは。井戸川克隆町長へのインタビューも収録。同名映画の公開に合わせ緊急出版。
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2012/10/17
- 寸法13.5 x 1.7 x 19.5 cm
- ISBN-104000246755
- ISBN-13978-4000246750
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2012/10/17)
- 発売日 : 2012/10/17
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 176ページ
- ISBN-10 : 4000246755
- ISBN-13 : 978-4000246750
- 寸法 : 13.5 x 1.7 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 940,223位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2013年8月1日に日本でレビュー済み
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2013年9月6日に日本でレビュー済み
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原発で避難を余儀なくされた双葉町の住民。最後の避難所となった旧騎西高校での生活。国に対する怒り、憤りを映像化を通して監督自身の声で静かに訴えている。今、原発事故の収束がまったく見えない中、是非多くに人に読んで貰いたい作品。
2015年2月19日に日本でレビュー済み
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テレビや新聞などでは報道されない被災者の状況を知ることができました。福島第一原発から電力を供給してもらっていた首都圏の人たちには、もっと、このような状況を知ってもらいたいと思います。
2013年3月25日に日本でレビュー済み
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映画もみんなに薦めているが、この本もお薦め。
映画は短く編集せざるを得ない背景が良くわかります。
映画は短く編集せざるを得ない背景が良くわかります。
2013年2月8日に日本でレビュー済み
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原発難民の事がよくわかります。うわさと現実はかなり違ってました。うわさでは賠償金で儲かってるなどと噂されていますが、実際はまともな賠償がされず、不幸になった人ばかり。知り合いに家と土地田んぼ畑山林全部の賠償額が2400万円の人が居ましたが、それじゃ土地と家なんか買えません。農業しかやったこと無い年配の方が他の仕事なんて出来ないと思います。政府も東電も嘘の噂流して被災者を苦しめています。
2012年11月13日に日本でレビュー済み
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私は、この本を読む前から、映画を見に行こうとしていましたが、都合が折り合わないで見に行けませんでした。この本を読んで、双葉が、壊滅的と分かりました。舩橋さんの努力には感心しました。私の血道(親戚)は本家は双葉です。双葉の人間は、知人には話しかけますが、よそ者には話をしません。しかし舩橋さんの、熱意に双葉の町長以下他の人間も心を本を読んでいる限り打ち明けてきたと思います。まだ、読んでいる途中ですが。いい本だと思います。早く双葉に行きたいです。父は原発以後痴呆症の症状が出てきています。