内容
怪異をめぐる言葉、怪異とよばれる事象、怪異をもたらすもの―それらは何であるのか、怪異学研究の最先端を明らかにする。
東アジア恠異学会の二〇一五年度からの三年間の研究の蓄積をまとめたもの。
この間のテーマは、「〈他〉の認識と怪異学」。
人々が何を「他」と認識してきたのかを考える。
本書は、怪異学の初発からの問題意識である「怪異」という語に関する「1〈怪異〉をめぐる言葉の定着」、〈他〉の認識に係る「2〈異〉〈他〉の広がりと認識」「3〈神仏〉と〈化物〉の間」の三つで構成し、十四編の論考を収録した。いずれの論考も怪異学のこれまでの研究の蓄積をふまえ、新たな可能性を模索する内容となっている。
【目次】
序文(西山克)
1.〈怪異〉をめぐる言葉の定着
日本古代の「怪」と「怪異」―「怪異」認識の定着―(大江 篤)
異と常―漢魏六朝における祥瑞災異と博物学―(佐々木聡)
日本古代の「祟」の成立とその周辺―西大寺の建設をめぐって―(久禮旦雄)
室町時代石清水八幡宮の怪異(山田雄司)
近世怪異が示す射程―ひろたまさきの「妖怪」論を手がかりにして―(木場貴俊)
2.〈異〉〈他〉の広がりと認識
妖怪・怪異・異界―中世説話集を事例に―(久留島元)
「キリシタン」の幻術―『切支丹宗門来朝実記』系実録類と地域社会の「キリシタン」―(南郷晃子)
六朝志怪における西方仏教説話の選択受容(佐野誠子)
海の驚異―異界・異類についての博物誌と物語をめぐって―(近藤久美子)
3.〈神仏〉と〈化物〉の間
「妖怪」を選ぶ(化野燐)
「件(くだん)」の成立―近世の古代的言説「近世的神話」の中で―(榎村寛之)
護符信仰と人魚の効能(笹方政紀)
蜘蛛塚考(村上紀夫 )
睡虎地秦簡『日書』詰篇にみる神・鬼・人―『日書』の担い手を探る―(大野裕司)
特別寄稿:地平の彼方と椽の下(京極夏彦)
あとがき(大江篤)