内容説明
朴正熙独裁政権のもと、韓国は1960年代半ばベトナム戦争に参戦する。韓国側の被害者だけでも死亡5千人、負傷1万人、枯葉剤後遺症被害者2万人以上を生む一方で、ベトナム特需による経済発展をもたらしもした戦争―それは記憶の風化とともに現代の韓国社会では、徹底して忘れられた戦争でもあった。そして1999年になりようやく、韓国軍による民間人虐殺という衝撃的な事実が明らかになる。本書は、ベトナム現地調査から始め、真実を記憶することをとおして、真の和解をもとめる韓国の市民団体の足跡をたどったものである。
目次
1章 想像の領土ベトナム
2章 もうひとつの記憶
3章 前線のない戦争、反共主義、イメージの恐怖
4章 戦争の記憶、記憶の戦争
5章 パズルあわせ
6章 新しい出会い
7章 生き残った者の悲しみ
8章 参戦軍人、混沌と絶望
9章 和解への遠い道のり
10章 抵抗と再解釈
11章 結び
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sasha
7
ヴェトナム戦争時、アメリカ軍が非武装の民間人を虐殺した事件は本国で反戦の象徴となり世界的な批判も浴びた。だが、同じようにヴェトナム戦争に参戦した韓国軍の虐殺事件は戦後長らく韓国内で報じられることはなかった。勇猛果敢な兵士たちが実は民間人を手にかけた殺戮者であったとの事実を突き付けられた時の衝撃は大きかっただろうな。生き残ったヴェトナム人、参戦した韓国軍の元兵士等に取材してまとめられているのだが、聞き書き以外の文章が抒情詩のようで核心を巧妙にずらしているような気がする。ライダイハンの記述が少ないのも残念。2014/05/28
がんぞ
4
1998年、「ピースボート」活動の中で「韓国軍によるベトナム民間人大量虐殺」が問題提起され、NGO「ナワウリ」が結成され三年間にわたって聞き取り調査した。ほとんどの村で「出てこい」と言われて集まった疑われないよう武器を持たない老人、女、子供が皆殺しにされた。致命傷でなく、かろうじて生き延びた人々に話を聞いた/強いられた派兵に反発する老兵は「一度だけでも民間人を殺してはならない…強姦してはならない、と聞いていたらこんなにまでしなかっただろう。ベトコンの恐怖ばかりを聞かされた、どうしても生き残らねばと考えた」2019/08/07
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