目次
第1部 通奏低音としてのシラー『美的書簡』―転回期の思想(転回期―瀬戸際に立つシュタイナー;シラー美的教育論をめぐる諸論;シュタイナーの基本構図;シュタイナーの『美的書簡』解釈;補論1 シュタイナーによる『美的書簡』解釈の妥当性について―『崇高論』によるシラー美的教育論再考;補論2 「遊戯衝動」の具象化―ゲーテ『ヘルマンとドローテア』における「遊戯衝動」の顕現)
第2部 「ゲーテ自然科学」あるいは『ツァラトゥストラ』との対峙―思想研究者時代の思想(思想研究者シュタイナーのゲーテ自然科学研究;思想研究者シュタイナーのニーチェ研究;「自由の哲学」の舞台裏―ニーチェ論に潜在するゲーテ的自然観)
第3部 人智学的世界観の縮図としての『メールヒェン』もしくは『ファウスト』―霊的指導者時代の思想(一九〇二年の『ファウスト』論;一九一八年の『ファウスト』論;霊的指導者時代の『メールヒェン』論;補論3 「自由」の射程)
著者等紹介
井藤元[イトウゲン]
1980年愛知県生まれ。2011年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。2009‐2011年日本学術振興会特別研究員DC。現在、大阪成蹊短期大学児童教育学科専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gotoran
35
シュタイナーの思想的出自にまで遡り、その源泉から人智学の根本的構図を浮き彫りにさせる方法、即ちゲーテ、シラー、ニーチェの三思想家との関係についてフォーカスし、シュタイナーの思想が読み解かれていく。思想家としてのシュタイナーの遍歴:ゲーテ自然科学研究に従事した思想研究者時代、ゲーテ・シラー研究の転回期、ゲーテ文学研究の霊的指導者時代、人智学的人間形成時代。ゲーテ自然科学研究に始まり、シラー、ニーチェ研究を経てゲーテ文学を読み解く過程が、まさにシュタイナー自身の「自由」の獲得の軌跡であったと云う。興味深々。2020/01/26
iwri
3
ゲーテ・シラー・ニーチェの思想を媒介として、シュタイナー思想を読み解こうと言う、著者自身が述べているように、シュタイナーをめぐる議論としては稀な試み。とりわけ、シラーが強調されている点は独特である。あとがきでも述べられているように、バランスを取らんとする著者の努力は端々に伺える。とはいえ、例えば高次の自己や超感覚的世界という言葉はしばしば使われているが少々疑問を感じるし、シュタイナー的自由の内実がそれほど明らかにされていないように感じた。2012/08/22