- ホーム
- > 和書
- > 人文
- > 文化・民俗
- > 文化・民俗事情(日本)
内容説明
自然葬・樹木葬など葬送のあり方が多様化する現在。では、従来の仏教式の葬送文化はどのように成立したのか。それを支えていた“死生観”とは。墓、先祖、幽霊―その常識を覆す。死後についてのパースペクティヴ。
目次
プロローグ 死者を訪ねる人々
第1章 墓石の立つ風景
第2章 骨を運ぶ縁者
第3章 死を希う人々
第4章 墓に憩う死者
第5章 幽霊の発生
第6章 霊は山に棲むか
第7章 目に見えぬものたちと生きる
エピローグ 記憶される死者 忘却される死者
著者等紹介
佐藤弘夫[サトウヒロオ]
1953年宮城県生まれ。東北大学文学研究科博士前期課程修了。盛岡大学助教授などを経て、東北大学大学院文学研究科教授。神仏習合、霊場、日蓮、国家と宗教、死生観等をキーワードに、中世を中心とする日本の思想史を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
49
題名からはムサカリ絵馬等の死霊結婚を扱ったものかと思いつつ読んだが、霊魂観や葬送の変遷を扱った一冊であった。以前同著者の『死者のゆくえ』を読んだが、内容に重複する部分が多かった。その為内容に目新しいものは無かったが、こちらの方は東日本大震災についても触れられており著者の肉声が一層表に出てきているように思う。近世以降の彼岸観を死者との契約と捉えたり、それに関連しての幽霊については先の本に触れられていなかったせいか面白く読めたかな。あと現代の葬制の変化については個人主義が関係していると個人的には思うのですが。2016/01/06
きいち
32
靖国神社の遊就館の一階は御柱、つまり戦死者を記念する場所。その圧倒的な品々は、ひめゆりの資料館同様、実は強い反戦のメッセージを発している。その力の一端を担うのが、一角に並べられたガラスケースたち。中には一つ一つ、戦死者の写真と共に花嫁人形が収められ、祀る子孫を持つ機会もなく亡くなるということを実感させる。そうか、東北の民俗が基層だったのか、強い説得力も道理だ。◇今の死生観は決して古代と同じものではない。今の自分たちを無邪気に古代以来の連続ととらえる安易さ。目ん玉にはりついてる鱗をぺりぺりとはがされる快感。2016/02/10
犬養三千代
6
2015年9月5日 佐藤広夫 2400円 縄文〜古墳時代〜平安時代〜近世。墓の在り方の変化をその当時の世界観の変化として論じている。21世紀の今も新たな世界観の変化の時だと思う。直葬の増加、供養する人のいない独身者の増加。 「カミを他者として社会から締め出し終えたとき人間のエゴは抑制するダガが外れて」ヘイトスピーチ、尖閣への国民感情の高まりを生んだ。 個、孤、独になっていくのだと思う。2019/01/03
Fumitaka
3
本を通じて「日本人の死生観」という、「柳田國男以前」の世界を探索する。「死者の花嫁」からは所謂「冥婚」のようなものを連想したが、それは序章で軽く触れられるだけで、その話題に戻ってくるのは大分後になってからだが、「死者と日本人」という、本全体のテーマを考えると、決して間違ってはいない。『日本の戦死塚』でも部分的に触れられていたとおり、おそらく中世の日本人はあまり遺骨や死者それ自体に関心を持たなかったのではないか、という点から、日本人と死者との関係の変化を論じていく。2022/06/05
KakeruA
2
民俗学的な見地から葬送儀礼の変容、墓の立ち現れについて考察をする一冊。生から死、あるいは死から生の間に、概念的に存在する人間らしさとは何かを考える。本書で触れられている近世以降に現れた顕名な死者が加速し、現代のように明確な生と死の線引きを引き起こしているという指摘が興味深い。冠婚葬祭における人への段階、あるいは人ならざるものへの段階が稀薄な社会において、格差が広がり社会的包摂が崩壊される恐怖にかられる。広い意味でのコミュニティとはなにか考える一冊だった。2015/11/16