目次
第1章 血の粛清(秘密軍事法廷;被告たちの表情;弾圧の全貌;裁判前夜;拡大軍事評議会)
第2章 迫りくる影(ソチ電報;軍幹部への圧力;中央委員会総会;相次ぐ逮捕)
第3章 トゥハチェーフスキーの「罪状」(供述書の怪;ゲシュタポ偽造説;「反逆者」像の生成;資源配分をめぐって;体外的危機の認識)
第4章 政治的忠誠と専門的技能(コミッサール制;上からの革命;ヴォロシーロフ排斥の動き;国家保安本部特務部;ヤゴータの失脚とエジョーフの台頭)
第5章 裁判のあとで(輪廻の裁き;家族への迫害;空洞化する軍隊)
著者等紹介
平井友義[ヒライトモヨシ]
ソ連・ロシア軍事外交史研究者。大阪市立大学、広島市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoneyama
14
その後の独ソ線の苦戦を知るだけに、何故1937年にそんな大粛正をしたのかがずっと疑問だった。逮捕、処刑されたトゥハチェフスキーたちはもちろん、捕まえて罵倒した側も、スターリン自身も、極端な人間不信の戦国時代というか、鎌倉殿の13人というか。ストレス高い時代だと思う。ファシズム対ボリシェビキの緊張って話せばわかるの世界じゃなかったのね、ということはよくわかった。殺しで始まったロシア革命って結局、殺し合いの軌道から抜けられないのか。暗澹たる時代。プーチンがゼレンスキをファシスト呼ばわりしているのは聞き逃せない2022/12/28
Fumitaka
3
主にトゥハチェフスキーを中心に、軍内部で猖獗したテロについて記述。ЧСИР、知らなかったな。ガマルニクの奥さんもそんなことになってたのか。まあコトキンもあの化け物みたいな本の二巻で「ランダム」って言ってましたが、もうこの辺は運ですね。「非一貫性」(p. 59)という奴です。近くでテロに伴う昇進についても触れられてますが、「目をつけた新人が期待を裏切ることもあり、必ずしもスターリンの意図通りにはならなかった」というのは、逆説的ながら、ソ連が間違いなく「独裁国家」だったことを表しているのではないだろうか。2019/12/16
晴天
1
トゥハチェフスキー元帥の粛清を軸に、スターリン期ソ連において吹き荒れた赤軍首脳部の粛清について描く。粛清のプロセスの不条理さ、家族の運命などは戦慄するしかない。また、頭を切り落として代わりを調達しようとしてもうまくいくわけがないのは当然として、指揮官が明日「人民の敵」となるかもしれない状況では規律は崩壊し、この状態からどうやって大祖国戦争を戦えるまでに至ったかは疑問は深まる。2021/07/21
秋津
1
スターリン体制下ソ連の赤軍幹部の弾圧について考察した一冊。常に良好とは限らない共産党と軍の関係、「反対派」「異論分子」への警戒など、様々な要因の組合せから論じられています。独ソ戦における緒戦での敗退が示すように、経験豊富な専門家を排除すれば国防は弱体化する、という当時においても考慮されたであろうリスクを内包する手段を採用してまで政治(党)と軍との関係を調整しなければならなかった理由・背景、そしてそれをどう評価すべきか、歴史的な事柄は後知恵で語りがちですが、少し立ち止まって考えてみないといけませんねと。2015/08/29