内容説明
バイロンの詩、ヴィスコンティの映画、オッフェンバックの歌劇、ホイッスラーの風景画など、ヴェネツィアという窓から見えてくるヨーロッパ文化の風景。
目次
カナレットと逃げ出す芸術家たち
バイロンと「ためいきの橋」の出現
『マリーノ・フェリエーロ』と『ヴェネツィアの一夜』の貴族政批判
『夏の嵐』と『ヴェニスに死す』のなかの魔界
『ホフマン物語』―悪魔と鏡
レニエ『顔合わせ』と鏡の照応
L.P.ハートレー―異文化と罰
『旅情』のなかの異文化
ホイッスラーと裏町の詩情
“死の町”ヴェネツィア―「死の潟」と“ゴンドラ=棺”
ヴェネツィア表象史とディエーゴ・ヴァレーリ
著者等紹介
鳥越輝昭[トリゴエテルアキ]
1950年岡山県生まれ。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒業。上智大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻:比較文学、比較文化史。現在:神奈川大学外国語学部教授・大学院外国語学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Fumitaka
5
ヴェネツィアという町が西欧の文学でいかに描かれて来たか論じる。『トリニティ・ブラッド』で俺が愛する偏屈男ケンプファーが引用したモーリス・バレスの名も言及されている。冒頭では現地出身の画家カナレットの作品を参照しつつ、バイロンの詩が有名になるまでは「ため息橋」は大して有名ではなかったのではないかという重要な指摘が論証され、どうやらヴェネツィアの表象は、現地の人々のみならず外来の文人たちの「共犯」によって蓄積されていったことが明らかになる。まあ「聖地巡礼」というのを人間は数百年レベルで行ってきたらしい。2022/06/18
千瑞
1
共和国の滅亡前夜、そして滅亡後の都市ヴェネツィアがどのように表されてきたのか、という本。また、そのようなイメージの形成と変化を見る中で、ヴェネツィア共和国の滅亡と都市の退廃が、都市を訪れるあらゆる人々の精神に及ぼした影響と、そうした人々のイメージによって作り出された、様々なヴェネツィア像が描かれています。とても面白い本でした。2014/03/25
みかん
0
死の街、堕落の街、汚れが美に転化する街、官能を刺激する街としてのヴェネツィア。ただしこれらを描き出したのは西欧の芸術家たちだ。果たして東欧の人々はヴェネツィアをどう見たのだろう……?2017/05/13