内容説明
滅びゆく浮世絵の歴史の掉尾に位置し、今なお鮮烈な印象を与え続ける月岡芳年(一八三九‐一八九二)。三十歳で明治維新に立ち会った絵師は、激動の時代を直視し、変転する「浮世」をリアルに描ききった―。報道、伝記・回顧録などの資料を博捜し、作品主題と構図に緻密な分析を加えることで、血肉を備えた一人の浮世絵師の人物像を浮かび上がらせる。
目次
序 月岡芳年の肖像
第1部 月岡芳年の人物像(語られてきた月岡芳年;月岡芳年の人生―伝記資料を基に)
第2部 月岡芳年と「幕末」(幕末の芳年―習作期の様相;「血みどろ絵」の時代)
第3部 月岡芳年と「明治」(芳年と明治の「媒体」;「西南戦争錦絵」という媒体 ほか)
第4部 月岡芳年と「江戸」(「月百姿」とその時代―「江戸への回帰」とその文化的背景;戻れない「江戸」への回帰―大判二枚続作品と掛物絵判を中心に ほか)
著者等紹介
菅原真弓[スガワラマユミ]
学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(哲学)(学習院大学)。現在、大阪市立大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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umeko
14
なんといってもこの表紙がかっこいいっ!この表紙のような強烈な血みどろ絵が芳年のイメージだったが、幕末から明治という時代の転換期に、世間が求める物を捉え、応えていく懐の深さを感じた。ドラマチックで、力強く作品世界へ引きずり込む魅力に、当時の人気ぶりに納得。2020/02/05
果てなき冒険たまこ
1
月岡芳年を人物だけではなく画業の側面からも分析する。いきなり芳年の死亡記事から始まったりしてこりゃ失敗したかな最後まで読むの辛いかなと思ったけど全然そんなことなく読み通すことができた。幕末から明治にかけて浮世絵の最後期を生きた人だから考えることは多々あったんだろうな。それでも晩年の作品は江戸への郷愁を伺わせるものが多かったというのはわかる気もするなぁ。文明開化は一部の人以外は楽しくなかったんじゃないのかね、わからんけど。2022/07/31
樒
1
表紙に惹かれて購入。中身は文字に残された芳年を徹底的に拾い上げていて興味深い。イメージと事象が研ぎ合って人物が浮かぶ様に思えた。作品についても構成等、詳しく絵に疎い人間には助かる内容。資料部分だけでも充分な価値。2020/06/05