内容説明
キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す「私」。たび重なる回り道と彷徨、そして思索の果てに彼は、スペインの歴史・風土・宗教・物語の坩堝、茫漠たる時空間の襞へと絡めとられていく…。現代オランダ文学の最高峰による、思索的/幻想的旅行記。
目次
アラゴンを通りソリアへ
名前と時代を通る旅
死と歴史の世界
隠された宝
いまだサンティアゴではない
女王は笑わない
金色と褐色と鉛色のささやき
ドン・キホーテの跡を追って―ラマンチャの道の旅
セゴビア
王と小人
金色の洞窟の中の黒いマドンナ
神の記憶の中の瞬間
ナバーラの冬の日々
ウォルター・ミュアー・ホワイトヒル
鳩がそれを知っているかもしれない
なぜ人々は東海岸より遠くへ行かないのか
過去は常に現在的であるが、一方で現在的ではない
クレオーンのための謎
レオン
私はとにかくスペインに身を捧げた
マチャドの風景
ロルカからウベダへ、ある午後の夢
グラナダからの別れ―盲人と文学
時の終わりへの途上に
到着
著者等紹介
ノーテボーム,セース[ノーテボーム,セース] [Nooteboom,Cees]
1933年、デンハーグ(オランダ)に生まれる。小説家、詩人、エッセイスト
吉用宣二[ヨシモチセンジ]
1952年、滋賀県に生まれる。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、東北学院大学教授(ドイツ文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiroizm
14
ノーベル文学賞候補にして紀行作家としても有名な著者の紀行書と聞いて読書。世界文化遺産になったスペイン北部の「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」旅行記だが単なる物見遊山的なものではなく、建築、絵画、文化的遺物や記録を元に、ローマー帝国滅亡後、イスラム王朝の支配から新大陸からアジアに及ぶ大国への隆興と衰退、悲惨な内戦からフランコ軍事独裁政権の支配などスペインの複雑多様な歴史と当時の人々の心情にまで向きあうスケール壮大な随想文学集。久しぶりに高リテラシーを要する手応えある本読んだ。もうフラフラ。2021/01/22