内容説明
著者自身のフィールドワーク経験を反芻しながら、「脱+再イメージ化」と「社会身体」という二つの独自の概念を提起し、それを土台に、20世紀人類学の成果を清新な形で蘇らせるとともに、近年発展してきた自然の人類学や科学技術人類学と創造的に対話する。映画・哲学・科学の営みとも通じ合う、新しい人類学的思考のプログラム。
目次
はじめに―人類学の変貌
第1章 イメージの人類学に向かって
第2章 民族誌的フィールドワーク―原点としてのマリノフスキ
第3章 民族誌的フィールドワーク(続)―転換期の一事例
第4章 イメージ経験の多層性
第5章 社会身体を生きること
第6章 自然のなかの人間
第7章 アナロジーと自然の政治
第8章 近代性をめぐる人類学
第9章 自然と身体の現在へ
著者等紹介
箭内匡[ヤナイタダシ]
1962年生まれ。文化人類学を東京大学(1982~1993年)で、哲学をバルセロナ大学(1995~1997年)で学ぶ。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
5
本書は文化人類学の既存の研究を通して、イメージ化/脱イメージ化/再イメージ化と言った概念を提示して、人間や文化や社会や自然の生成・変化・獲得などの過程のモデルを構築しようとしている。P.デスコーラの『自然と文化を越えて』が引用されて、一つの文化や社会の型によらない、様々な型があるとされると共に、既存の文化人類学のフィールドワークやエスノグラフィーといった言語的で一元的な記録に対して新たにイメージを用いることで暗黙知的で多元的な記録を行うことができる。イメージ化はまさに様々な文化や社会の型によって異なる。2019/01/25
takao
3
ふむ2023/06/20
環世界
2
これはすごい本。いわゆる存在論的転回の議論を咀嚼してここまで体系的に提示したものって、英語圏を含めても珍しい気がする。存在論の議論に乗るにしても距離を置くにしても、「イメージ平面」って考え方はすごく良い思考の補助線に思えます。2021/01/27
西東京のハリソンフォード
1
イメージ平面や脱+再イメージ化という斬新な理論(分析概念?)を用いながら、広範な人類学のレビューをしてしまうというスゴ技。ただ、「イメージ」概念と少しズレるように見える「遠心力」という概念が急に浮かび上がってきたり、「イメージ」と直接関係ない名著紹介やレビューに見える部分もあった。しかし、映画の事例やマニアックな研究のチョイスは秀逸で唸らされた。もう少し勉強をした後でもう一回読めば別の発見があるかも。2023/01/31
nido
1
▼人類学で議論されていること(主に記述すること)について、イメージという切り口から考える一冊。「文化」「社会」とは異なる捉え方について論じる。▼理論は複雑に見えるけど、フィールドワークの事例を読んでいくことでじんわり伝わってくる感じ。▼イメージ平面という概念を用いることで、アクチュアリティなど他のテーマも捉えやすくなりそう。読んでるときは頭がこんがらがるけど、読み終えるとすごくストンと落ちる内容。2021/03/31