内容説明
人類が取るべき共存の形式とは何か。あらゆる暴力の源泉にある「人間的なもの」。他者性排斥と善悪二元論に打ち克つための、万人に求められる思考実践。
目次
序 恐怖と怨念のあいだで
第1章 野蛮と文明(野蛮であること;文明化されているということ ほか)
第2章 集団的アイデンティティ(文化の複数性;構築されたものとしての文化 ほか)
第3章 諸世界間の戦争(戦争する、それとも愛し合う?;宗教戦争と政治的紛争 ほか)
第4章 暗礁のはざまをすり抜ける(アムステルダムにおける殺人;反イスラム闘争 ほか)
第5章 ヨーロッパのアイデンティティ(アイデンティティを求めて;一体性の基礎としての複数性 ほか)
結 善悪二元論を超えて
著者等紹介
トドロフ,ツヴェタン[トドロフ,ツヴェタン] [Todorov,Tzvetan]
1939年ブルガリア、ソフィア生まれ、2017年パリで死去。当初構造主義的文学理論家として出発したが、1980年代から他者、全体主義体制における人間の精神生活、善悪二元論といった問題に関心を寄せるようになり、作家論、美術論、現代社会論といった幅広い領域で活発な執筆活動をおこなった
大谷尚文[オオタニナオフミ]
1947年生まれ。石巻専修大学名誉教授。19世紀フランス詩専攻
小野潮[オノウシオ]
1955年生まれ。中央大学文学部教授。19世紀フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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古本虫がさまよう
3
人類が取るべき共存の形式とは何か。あらゆる暴力の源泉にある「人間的なもの」。他者性排斥と善悪二元論に打ち克つための、万人に求められる思考実践--を問い質した本。フランスを中心に、2008年前にとりわけ顕著になっていたイスラム世界と欧州世界との対立について主に論じている。その対立構図が、それ以前の自由世界(自由民主主義国家)対共産世界(全体主義国家)の時代とは大きく様変わりしている点をとらえ、詳述している。いつものご高説に比べて、有り難みを感じられないなと‥‥という読後感が残った一冊。 2020/10/14