内容説明
なぜお腹が空くのか。なにが美味しいのか。路上で、ときには戦場で、空腹な人たちはなにを食べているのか。飢えたら殺して食べていいのか。人食いはどうしてタブーなのか。食糧は人口より多いのに飢餓はなぜあるのか。…空腹を抱えた身体から始めて、他の人びと、そして世界の関わりを編みなおす、みずみずしい思考の軌跡。
目次
序 空腹と痒み
1 空腹の謎
2 空腹のきわみ
3 空腹を満たすために
4 グローバルな空腹
空腹の孤独と分け前
著者等紹介
雑賀恵子[サイガケイコ]
大阪産業大学ほか非常勤講師。農学原論、社会思想史。京都薬科大学薬学部、京都大学文学部卒業。京都大学大学院農学研究科農林経済学専攻博士課程満期修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
B.J.
18
<本能>食べることで生きる、という人間の根源の話。空腹になると脳へ信号が行き・・という単純な話もあるが、「アンデスの聖餐」に代表される”食人”にまで話しが及ぶ。タイトルからは、重さは感じられないが、深い!!!2014/09/02
小島輝彦
2
飢えることが身近でない環境に生きている。 時代としても、国としても 改めて恵まれていることを感じた。 一方で、空腹というのは、 身体性ともつながっていること。 色々と視野を広げてくれた気がする本。2019/01/17
まつゆう
2
本の一節から思う雑感。痒みなどの感覚とは異なり、空腹は身体のどこかに空隙を感じるが、それを埋める、外部に向かう行為までに時間差があり(痒みは掻けば快感をその身に覚えるのと対照的)、そのため、食す行為は決断して食べているという「責任ー主体」の行為として見られる。が、そうなのか。飢える者、生存の危機に陥っている者のあの喉に詰まるかのような喰らい方、ガソリンをビールと錯覚して飲む行為、そこに決断はあるのか。飢えから来る未来への企図不可能性、これを実践感覚の違い、ハビトゥスとして論じることはできないだろうか。2014/09/13
something or nothing
1
なぜ食べるのか?なぜ食べたいのか?食べるとはいったいどういうことなのか?わたしという存在と“わたしの”空腹というものとの距離感、食べることによる“外側”との関わり。生と死。カネとモノ。食とか空腹に関係せずとも、私もこの方と同じようにいつも思考する。こんなふうに思考する方が他にもいると知れたことが本当にうれしかった。しかも本当に上手に言語化してくれている。この人を抱きたいと思った。とことんセックスしてベッドの中で語り合い、けれどそれでも決して埋められない孤独をお互いに感じていることを分け合いたいと思った。2018/03/17
ねま子
1
エッセイ。長々とつづられた具体例の後にぱっと短文が組み込まれる、メリハリのある文体。悪く言えば極端。空腹・食欲を通して自己と他者との境界を探るという考え方が新鮮だった。「共菌によって胸襟を開く」というシャレが痛快。2013/07/27