内容説明
あの文学作品の魅力に「薬」という意外な側面から迫る!感受性に様々な影を落とす「薬」の問題を取り上げて分析する。
目次
有吉佐和子『華岡青洲の妻』―先駆的な麻酔薬を試した女たち
泉鏡花『外科室』―麻酔剤を拒否した伯爵夫人
ブルガーコフ『モルヒネ』(町田清朗訳)―渇仰と至福の万華鏡 医師のモルヒネ体験告白
太宰治『HUMAN LOST』―パビナール中毒作家の苦悩
川口松太郎『媚薬』―黒い丸薬の誘惑 宮内庁侍従の場合
松本清張『点と線』―青酸カリは汚職・心中とよく似合う
川端康成『眠れる美女』―老いのエロスと睡眠薬
村上龍『超伝導ナイトクラブ』―テクノロジーの果ての代謝物質
中島たい子『漢方小説』―都会の孤独と揺らぐ心
リリー・フランキー『東京タワー』―そのとき、オカンは抗がん剤治療を拒んだ
奥田英朗『オーナー』―パニック障害への処方箋
林宏司脚本『感染爆発』(NHKドラマ)―パンデミックをもたらすウイルスの恐怖
著者等紹介
千葉正昭[チバマサアキ]
昭和27(1952)年、宮城県生まれ。東洋大学文学部卒業。武蔵大学大学院人文科学研究科修了。宮城県涌谷高等学校ほか教諭を18年。仙台高等専門学校(旧宮城工業高等専門学校)助教授・教授を12年。現在、仙台高等専門学校名誉教授。仙台白百合女子大学ほか非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
19
文学作品上出てくる医薬品を科学的に追求した書籍。有吉佐和子「華岡青洲の妻」では開発中の麻酔薬の副作用で妻が失明する。Phase1とは言えない人体実験そのものである。☆☆川端康成「眠れる美女」では睡眠薬で眠る全裸の美女と添い寝して快楽を得るシーンがある。川端康成自身、睡眠薬中毒であり依存性のある非バルビツール酸系を常用していた。☆☆太宰治「ヒューマンロスト」は精神病院での薬物中毒治療の小説である。彼自身、睡眠薬カルモチンで何度も自殺を試みている。一度は心中で相手のみ亡くなっている。2015/03/09
ちいくま
2
薬も文学も詳しくないので、数日かけてゆっくりじっくり、ゆきつ戻りつ、なんとか読み通しました。物語を読んでいて薬に関してふと思う、えーそれって科学的に化学的にホントなの?といった疑問を正しく詳細に(詳細すぎる…)解説してくれてます。自分にとって難しいながらも、なんか激烈に印象に残る読後です。2015/10/03
nitti
0
面白い切り口の本だと思った。特に、文学者の側からアプローチしたという点が珍しい。私に医学か薬学の素養があればもっと楽しめただろう。もしかするとおかしいと思う点も見つかるのかも知れない。フルガーコフのモルヒネの章では、モルヒネの多幸感の描写について詳しく分析しており、麻薬をするなんて愚の骨頂と思う私ですら興味をそそられるものだった。危険や!笑 p91ソレックス抽出はソックスレーの誤りだろうか???2016/06/27
りんご飴
0
太宰治の薬物中毒の章が気になって買いました。 人間失格で薬物中毒のくだりは出てきても、詳細が書いてある本は中々無いので読み応えがありました。 どういった過程でそうなってしまったのか、非常に分かりやすく記載されています。参考文献を駆使していろんな局面から分析してらっしゃるようだったので、太宰好きにはおすすめです。他の章にも豪華な作家さんや有名人と薬物の繋がりが書いてあります。著者の方も執筆に苦労なさったそうで、☆5評価していいくらいの出来の本です。