内容説明
「法」と「制度」のせめぎあいのなかで、「少しでも良い都市」を目指し展開してきた日本の都市計画。スプロールからシュリンクに向かっていった平成期、想定外の災害に何度も直面しつつ、私たちはどのように都市をつくってきたのか?規制緩和、コミュニティ、地方分権、復興などのキーワードを手掛かりに、“もっとも近い過去”の軌跡をたどり、現在と未来の行方を探る。
目次
序章 地の歴史を描く
第1章 都市にかけられた呪い
第2章 バブルの終わり
第3章 民主化の4つの仕掛け
第4章 都市計画の地方分権
第5章 コミュニティの発達と解体
第6章 図の規制緩和と地の規制緩和
第7章 市場とセーフティネット―住宅の都市計画
第8章 美しい都市はつくれるか―景観の都市計画
第9章 災害とストック社会―災害の都市計画
第10章 せめぎ合いの調停―土地利用の都市計画
終章 都市計画の民主化
著者等紹介
饗庭伸[アイバシン]
1971年兵庫県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(工学)。同大学助手等を経て、現在は東京都立大学都市環境学部都市政策科学科教授。専門は都市計画・まちづくり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
41
ここ30年の都市計画に関する政府、自治体、住民などの様々な動きを土地利用、景観、災害復興などの分野ごとにまとめている。「平成」は近々30年という意味合いで使われている。内容は著者の実体験に裏打ちされているので抽象的な話ではない。都市の土地にかけられた規制を「呪い」と呼ぶセンスは素晴らしく、文学的と思えるくらい。欲を言えば呪いを解く「魔法」の秘密について詳細を知りたいと思う。全般に2次元グラフを活用しわかりやすいが、「法」と「制度」の違いについては都市計画に従事していない人にはイメージしにくいかもしれない。2021/05/12
kenitirokikuti
5
図書館にて。都市計画法と全総(全国総合開発計画法)は別なんだなぁ。1968年の新しい都市計画法と、2006年の大改正。都市計画が、県から市町村に(大阪維新の根はこれかあ)。最近は当初の目的では機能しなくなっている「公民館、コミュニティセンター」ってなんなのかを知ることができた。コミュニティとは、アソシエーションの対概念で、コミュニティはつくることができる、という考えのもと導入されたが、現在は鈍いコミュニティと、尖ったNGO(アソシエーション)のネットワークが住民と行政を繋ぐプロトコルになっている。2021/05/16
そうき
5
都市計画の通史といえばあとがきでも言及される石田頼房の『日本近現代都市計画の展開』が有名だが、その終盤とその後にあたる平成の都市計画を論じる。法と制度、規制と設計という軸の設定は効果的で、目まぐるしく情勢が変化し、種々の法や制度が運用された30年の流れが整理できた。情報量が多いながらも読みやすく、また縮小時代に向けた希望も感じる本だった。帯の「都市計画の新たな基礎文献 誕生」の期待に応えてくれる良書で、今後この分野の定番書になりそう。 2021/02/11
すずゆー
1
都市計画の権力を「法」と「制度」の2つとして捉えているのが印象的だった。あとがきでも言及があったけど、この著者2軸4象限で考えるのが好きだよね。2022/08/19
takahiroyama3
1
平成世代(平成に学び、働いき始めた世代)の都市計画研究者である著者による、平成を体系的に紐解く一冊。とても読みやすく、専門家でもかなりの学びがあります。例えば「コミュニティ」について、実はアソシエーション(非均等平等主義)を育ててきたこと、「景観」の章における美しい都市とは何か?という問いに対する空間/組織についての式の整理が特に印象に残りました。一方、冒頭にあるように、「緑地」や「環境」の章がたてられていないようです。何か貢献できないものかと思いました。2022/01/29