出版社内容情報
教育が荒廃すれば未来の国民は荒廃する。教育の荒廃の原因は教育政策と教育行政にある。文部科学省と教育委員会、校長と教師、学校と親と子どもの関係から教育現場の実態を明らかにする。民主主義と教育のあり方を根本的な視点から見直し、再生について考える。
まえがき
序章1 破綻した教育勅語下の教育――侵略戦争と敗戦下日本で見えたもの
1 軍国主義日本の内と外
2 敗戦直後の混乱で見えたもの
序章2 平和憲法と日米軍事同盟の狭間で
1 戦後改革を国民は支持し推進した
2 文部省はなぜ廃止されなかったのか
3 冷戦の激化とGHQの裏切り
4 早くも国家権力による教育支配が復活した
5 平和憲法と戦後民主教育を守り育てた力
第1部[A]文部行政の破綻を見すえる
第1章 六〇年代高度経済成長期以後、教育政策のごまかしと失敗
1 「多様化」政策という名の画一主義
2 選択を狭める「選択の自由」
3 「文部省好みの能力」をテストで測る「能力主義」
4 子どもの社会性を破壊する競争的能力観
5 「多様化」政策のなかの遺伝信仰――日本社会は動脈硬化?
第2章 九〇年代以後、「多様化」政策の混迷1――「新学力観」、「生きる力」の破綻
1 態度主義に転落した「新学力観」
2 正体不明の「生きる力」概念
3 なぜ「ゆとり」重視で基礎学力が低下したのか
第3章 九〇年代以後、「多様化」政策の混迷2――中高一貫公立校と大学飛び入学制度
1 中高一貫公立校は子どもの早期選別法制だ
2 大学飛び入学制度をつくって天才待望の幻想に酔う
第4章 財界の教育改革論の矛盾と限界
1 財界の危機感と反省に注目したい
2 財界の期待はもっともであるが
3 「地域運営学校」の原型
4 財界の教育改革論の矛盾
第1部[B]国家権力による精神支配の手は伸びる
第5章 国家権力による教育委員会・学校・地域・家庭教育支配の構図
1 臨教審に叱責された教育委員会
2 地方分権推進委員会答申と文部省の巻き返し
3 「校長のリーダーシップ」によって校長も教師も堕落する
4 「地域に開かれた学校」は学校を密室にする
5 行政はPTA・地域・家庭にまで手を伸ばす
6 偽りの住民参加――「地域運営学校」
第6章 文部省の露払い――東京都教育委員会
1 文部省・中教審・都教育庁の隠密連携プレイ
2 都立高校の自由を根こそぎにして……
3 高校生に教師評価をさせて教師管理の資料に?
第7章 国家権力は大学・文化支配に手を伸ばす
1 国立大学法人化で何をねらったのか
2 都立大学を破壊した石原都政の野蛮
3 学生による教師評価は学生を堕落させる
第8章 国家主義の台頭と憲法・教育基本法の危機
1 戦後最低、教育改革国民会議報告書
2 迷走中教審の教育基本法改正論
3 日の丸・君が代強制のこの異常さ
第2部 現代を生きる人間について考える
第9章 個人の尊厳と自由の拡大
1 第二次世界大戦の反省
2 「自由」の発展形態を考える
3 自由な人間の関係、物化した人間の関係
4 自由な人間がまことの国民となる
第10章 個人の普遍性と差異――個人の偉大さ
1 個 性
2 能 力
第11章 二一世紀の人間像を求めて
1 現代世界における人間疎外
2 高度情報社会の光と闇
3 子どもたちの危機
4 日本人の歴史形成力の問題
5 地球市民の課題
6 世界は教育に何を求めているか
第3部 日本の教育再生のために――学校自治共同体の実現と教育行政の抜本改革
第12章 子どもの教育人権
1 子どもの発達権・学習権
2 子ども集団のなかの道徳・知性の発達
3 生徒自治は生徒の権利
4 生徒の社会的活動と社会的権利
第13章 教師の教育の自由、教育専門性を問う
1 教師に教育の自由はなぜ必要か
2 教師の教育の自由に対する疑問に答える
3 教師の教育専門性とは何か
4 教師の専門性を高めるために
5 教師の教育専門性を評価しようとする迷妄
6 教師集団の自治はなぜ必要なのか
第14章 親の教育権と学校参加
1 親の教育権の根拠
2 家庭教育の本質と家庭の社会的基盤
3 家庭教育と学校教育
4 学校に対する親の権利
5 親の学校参加とPTA
第15章 学校自治共同体の必然性
1 子ども・教師・親は互いに相手の自由・自治を必要とする
2 生徒自治に教師の指導が必要である
3 生徒自治が教師集団の自治を支える
4 親は自由な教師を求め、学校参加によって教師の同志となる
5 学校における三者交流の意義
6 学校・教師と子ども・親の紛争処理機関
7 学校自治共同体とプライバシー権
8 学校自治共同体の連合化と教育行政参加
第16章 教育行政改革の視座
1 政・官・財癒着による教育支配の腐敗構造
2 文部科学省の抜本的改革
3 地方教育行政の抜本的改革
4 教育行政改革と学校自治共同体
結章 教育の再生のために
1 国民の精神・教育を支配しようとする国家権力の本質はいまも変わらない
2 戦後六〇年、国民は変わったか
3 教育行政の現実を見すえる
4 民主的連帯と学校自治共同体
5 教育から自由を抹殺することはできない
あとがき
目次
破綻した教育勅語下の教育―侵略戦争と敗戦下日本で見えたもの
平和憲法と日米軍事同盟の狭間で
第1部A 文部行政の破綻を見すえる
第1部B 国家権力による精神支配の手は伸びる
第2部 現代を生きる人間について考える
第3部 日本の教育再生のために―学校自治共同体の実現と教育行政の抜本改革
教育の再生のために
著者等紹介
坂本秀夫[サカモトヒデオ]
1924年生まれる。中央大学法学部卒業。東京都立桜水商業高校教諭、全国高等学校教育法研究会長、日本教育法学会理事、東京都立大学非常勤講師、中央大学非常勤講師を経て、現在、日本教育法学会名誉理事。著書『生徒懲戒の研究』(1982年学陽書房(第4回教育科学研究会賞))など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。