内容説明
ソマリア、東ティモール、アフガニスタンなどガバナンスが弱く不安定な「脆弱国家」。なぜこれらの国で紛争が起こり、人々の生活が向上しないのか。その全体像と国際社会の支援のあり方を描く。その関与の仕方はいかなるものか。そもそも国の脆弱性とは何か。どのような支援が効果的なのか。「脆弱国家」の多面的な課題について、紛争・開発・平和構築に具体的に関わっている第一線の研究者・専門家によって書かれた、学際的・包括的な初のテキスト。コラムや基本用語についての解説も充実している。
目次
「脆弱国家」という課題
第1部 「脆弱国家」をみる視角(紛争と国家;国際社会における「崩壊国家」の課題;破綻・脆弱国家の国際統治におけるジレンマ;経済学による「脆弱国家」分析)
第2部 国の「脆弱性」のとらえ方(開発援助機関の視点でとらえた「脆弱国家」;国の「脆弱性」をどう把握するか―カンボジアと東ティモールの事例;紛争予防の視点からのアセスメント)
第3部 効果的な支援アプローチ(「脆弱国家」に対する効果的な支援;分権的制度の意義と形成;「脆弱国家」の再建と治安部門改革(SSR))
第4部 国際社会の支援(「脆弱国家」における国際援助調整;「脆弱国家」に対する日本の支援アプローチ)
著者等紹介
稲田十一[イナダジュウイチ]
東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程修了。現在、専修大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keepfine
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学部の時指導教官に勧められた。土佐弘之が理論的に整理した3章によれば開発援助とはアナーキカルガバナンス(国家なき統治)的状況のあらわれ。市民社会を効率化に取り込み、NGOなど新たなアクターの出現、帰結としてインフォーマルセクターが拡大。5〜9章では国家/ミクロレベルの支援の事例紹介が有益。日本の援助がインフラ整備など「経済」に傾倒し「社会」を軽視しがちであることはまさに日本国内の裏写し。その他紛争要因の整理や、「貧困、教育、紛争防止、民主化」という四つの位相での貢献/弊害や相乗・相殺効果の分析など。2017/09/19