内容説明
イラン革命を指導したホメイニーは、近代西欧化を是とする世界の趨勢のなか、西欧から「逆行」との批判を浴びつつイスラームの法規と道徳を具現する社会構築をめざした。その思想の背後には法学者としてのみならずイスラーム神秘哲学やプラトンの哲人王の思想が流れている。イスラーム覚醒の声として、被抑圧者救済の主張とともに世界に向けて発せられた彼と革命のメッセージは、その後のイスラーム世界各地でのあまたな出来事の後景をなしているといえよう。
目次
ホメイニー師の葬儀
1 イラン革命への道のり
2 激動下の新体制づくり
3 緊張と弛緩の狭間で
4 ホメイニー師の思想の諸側面
著者等紹介
富田健次[トミタケンジ]
1947年生まれ。立命館大学文学部卒業。同大学文学研究科修士課程修了。現在、同志社大学神学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ののまる
11
へええ〜 意外に知らなかったんだよねぇ。そういえば、日本では月に兎がいるけど、イランではホメイニがいるというそうです。2019/01/18
ジュンジュン
8
1979年イランイスラーム革命~イスラーム法学者(ウラマー)が宗教面だけではなく、政治をも担う政教一致体制を確立。拠って立つイデオロギーこそ違えど、歴史的な意味ではキューバ革命に近いのかなというのが印象。ただ一言でいうなら、「ホメイニー師の多面的実像を、宗教・歴史・思想を異にする人が理解することは至難の業である」(92p)に尽きる。2020/07/18
MUNEKAZ
7
ホメイニー師のコンパクトな評伝。亡命中は反王朝派を結集するために自身の思想を前面に出さなかったり、革命後も国内では聖と俗を分ける伝統的な考え方のウラマー達との政治闘争があったりと政治家としての部分が興味深い。長期に及んだアメリカ大使館占領やイラン・イラク戦争も国内の反対派への牽制が含まれていたというのは面白い部分であった。もちろん思想の部分にも短いながら触れており、プラトンの哲人王を祖にし、神秘主義に傾倒する決して「伝統的」でないイスラーム主義者としての姿が描かれている。2018/03/12
水
6
サファヴィー朝からガージャール朝に至る過程で確立された十二イマーム派ウラマーの権勢を背景に、東西の緩衝国家として社会矛盾を極めた世俗主義的な帝政の混乱の中、ホメイニー師がどのように「法学者の統治」思想を形成し、どのように聖俗指導者として民衆を率い、どのように現代イランの礎となる政体を構築していったかについてわかりやすくまとめられています。特に思想形成過程には大きく紙幅が割かれており、頑迷な原理主義者という一面的な印象から、哲人政治を志向した思慮深い革命家という人物像を引き出せたことは大きな収穫でした。2015/11/30
紫光日
5
ホメイニー師の生涯が分かるし、何よりもイランの歴史が解ります。 そして、この本の良いところはその出来事の意味を説明している部分がある処ですので、内容を読みながらそれらも読むと良いでしょう。 そしてアメリカやシオニスト政権(イスラエル)の世俗主義の危険性も述べているのでイランの反米の理由もわかります。 イランの事を知る上で貴重な1冊です。2015/02/18