出版社内容情報
農・林・漁業の経済学専門の研究者三人が福島のなりわいの再生という難問にとり組んだ。復興への道筋を、科学的知見に基づき提示する
現在、福島の米や野菜から放射能はほとんど検出されず、海水の放射能含有量は事故前に戻っている。農・林・漁業の経済学を専門とする研究者三人が福島なりわいの再生という難問に取り組んだ。放射性物質は循環するため、農・林・漁業をつなぐ視点は欠かせない。県産米全袋のセシウム検査。原発汚染水問題と漁業再開の行方。集落の維持と雇用創出。自然となりわいの復興への道筋を、科学的知見に基づき提示する。
はじめに
序章 なりわいの再生への視座 1 文明社会の落とし穴 2放射能と向き合わなかった日本社会 3空間分断 4見えていないリスク 5風化との闘い 6食のリスク管理とそれを妨げるもの 7 森に大地に海に放出された放射性物質 8安全のための厳しい基準値の設定 9 それでも復興するしかない
第一章 原発と福島 1風化する原発事故の記憶 2福島県の近代──産業構造の変化 3震災以前──日本農業の縮図 4農業と農村の被害 5原発事故と損害の構造
第二章 地域主体で食と農の再生を1 原子力災害からの復興過程 2放射能汚染と農作物 3「風評」問題4 検査体制の体系化5原子力災害に立ち向かう地域の協同6 伊達市霊山町小国地区──農協発祥の地の住民活動7 新しい農村をどのようにつくっていくか
第三章 森林汚染からの林業復興 1「林」の再生と公共 2原発事故と「森林文化」の破壊 3原発とともにあった「林業」 4原発事故後の林業・木材産業界 5避難指示区域の森林組合 6森林汚染にどう立ち向かうか 7森林再生が人を呼び戻す
第四章 海洋汚染からの漁業復興 1福島県漁業の概観 2福島県漁業の略史 3電源開発と原発立地 4原発事故と放射能による海洋汚染 5原発周辺地区の状況 6復興への道筋としての試験操業 7汚染水漏洩問題──災害の再生産 8汚染水漏洩事故をめぐる社会災害の構図 9経済発展を無意識に受け入れてきた国民感覚
終章 復興の当事者は国民 1農山漁村と都市の関係を変える 2科学的知見を生産現場に 3復興の当事者は国民
補論 農林漁業の再生と放射能の基礎知識
あとがき
内容説明
世界史に刻印される原子力災害に襲われた土地で、人間の生活をどのように復興させるのか。漁業・農業・林業経済学の研究者が現実とかかわり、見出した道筋。
目次
序章 なりわいの再生への視座(文明社会の落とし穴;放射能と向き合わなかった日本社会;空間分断 ほか)
第1章 原発事故と福島(風化する原発事故の記憶;福島県の近代―産業構造の変化;震災以前―日本農業の縮図 ほか)
第2章 地域主体で食と農の再生を(原子力災害からの復興過程;放射能汚染と農作物;「風評」問題 ほか)
第3章 森林汚染からの林業復興(「林」の再生と公共;原発事故と「森林文化」の破壊;原発とともにあった「林業」 ほか)
第4章 海洋汚染からの漁業復興(福島県漁業の概観;福島県漁業の略史;電源開発と原発立地 ほか)
終章 とり戻すとは(農山漁村と阻止の関係を変える;科学的知見を生産現場に;すべての人が復興の当事者)
著者等紹介
濱田武士[ハマダタケシ]
1969年大阪府吹田市生まれ。東京海洋大学海洋科学部准教授。北海道大学水産学部卒。北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程修了。博士(水産学)。専門は漁業経済学、地域経済論、協同組合論。漁業・漁村で培った視点を経済と人間の問題に拡げ、なりわいの復興を考究する。福島県地域漁業復興協議会委員、水産政策審議会特別委員、釜石市復興まちづくり委員会アドバイザー、読売新聞読書委員などを務める。著書に『伝統的和船の経済―地域漁業を支えた「技」と「商」の歴史的考察』(2010年、農林統計出版、漁業経済学会奨励賞受賞)『漁業と震災』(2013年、みすず書房、漁業経済学会賞・日本協同組合学会学術賞受賞)など
小山良太[コヤマリョウタ]
1974年東京都板橋区生まれ。福島大学経済経営学類教授。同大学うつくしまふくしま未来支援センター副センター長。北海道大学大学院農学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。専門は農業経済学、協同組合学、地域政策論。地産地消、六次産業化の研究を通して協同組合間協同(地産地消ふくしまネット)や地域づくり(街なかマルシェ)の実践をすすめる。東日本大震災後は農地の汚染マップ、水稲試験栽培など復興事業に尽力。日本学術会議連携会員、福島県地域漁業復興協議会委員など
早尻正宏[ハヤジリマサヒロ]
1979年広島県呉市生まれ。山形大学農学部准教授。北海道大学教育学部卒、北海道大学大学院農学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。専門は林業経済学、地域経済学、協同組合学。東日本大震災後の福島で森林・林業・山村問題を調査するほとんど唯一の研究者。全国各地でフィールドワークを重ね、環境政策と雇用政策を統合した地域開発のあり方を構想する。福島大学非常勤講師、ふくしま中央森林組合「21世紀の森プロジェクト委員会」委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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